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第54話 過労

「過労だよ、キラ」

 僕の枕元で器に入ったスプーンを魔法で掻き混ぜながら、メネは溜め息混じりに言った。

「だから言ったでしょ、倒れられたら困るから大変ならちゃんと言ってって。どうして我慢するの?」

 僕は反論できなかった。

 反論できるほど気力がないというのももちろんあるのだが、メネの言う通り疲れたのを我慢して仕事をしていた自覚が嫌というほどにあるから何も言うことができなかったのだ。

 創造神のエルの卵を預かってから、僕はこの世界を救うためと思って頑張って仕事をしてきた。

 毎日畑に通って大量の神果を収穫し、八つの牧場を回ってエルたちに御飯をあげて、それで一日が終わって。

 嫌だと思ったことは一度もなかった。可愛い子供のような存在のエルたちは、僕の心を癒してくれていた。

 だから、頑張ることができた。頑張りすぎて、しまったのだ。

 高校生の男子でこの有様は、正直言って情けないとは思う。友達が今の僕を見たら絶対に笑いながら貧弱な奴だと言うだろう。

 はい、とメネが僕にスプーンを差し出してきた。

「卵のスープを作ったよ。これなら食べられるでしょ?」

「……うん」

 僕は静かに上体を起こした。

 ちょっとふらついたので、そのせいでメネに心配された。

「大丈夫? 起きられる?」

「大丈夫」

 メネからスプーンとスープの入った器を受け取る。

 メネが作ってくれた卵スープは、野菜がたくさん入った賑やかな見た目の料理だった。野菜が普段よりも細かくしてあったりと、ささやかな気遣いも感じられる。

 僕はスプーンでスープを掻き混ぜて、よく冷ましてから一口頬張った。

 卵のまろやかさとスープの温かさが胃に沁みた。普段はちょっと物足りなく感じる量の料理も、今の僕にとっては丁度いい。

「美味しい?」

「うん……美味しい。ありがとう」

 僕が微笑みを見せると、メネは嬉しそうにはにかんだ。

「畑とエルのお世話はメネがするから、キラはゆっくり休んでね」

「……なるべく、早く起きられるようにするよ」

「うん。でも無理はしないでね」

 スープは十五分かけて完食した。

 空の器を持って部屋から出ていくメネを見送って、僕は再び布団の中に潜り込んだ。

 窓から差し込む太陽の光が眩しい。外は、今日も綺麗に晴れているようだ。

 こんなに晴れているなら、牧場にいるエルたちも気持ち良く過ごせているだろうな。

 メネばかりに負担をかけていられない。今はゆっくりと休んで、早く仕事に復帰できるようにしよう。

 僕は静かに目を閉じた。

 窓の外から、歌うような鳥の鳴き声が聞こえてきた。

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