第51話 救世主を育て上げろ
『蛇』が神界で暴れていた時。『蛇』と戦い『蛇』を下界に追いやったエルがいた。
それが、神界の頂点に立つ創造神の下僕であったエルだ。
そのエルは神界の神々に匹敵する力を持ち、人の言葉を理解して話すほどの高い知能を持っていたらしい。
現在はその身を卵にまで退化させて、神界で長い眠りについているという。
「創造神様に頼んでエルを借りて、『蛇』と戦って再び『蛇』を封印してもらう。こうなったらそれしか方法はねぇだろ」
それしか……って、随分と力押しな考えだね。アラキエル。
そのエルの力を借りるのはいいけど……そのエルは創造神様の下僕なんでしょ? 貸してほしいって言ってあっさり借りられるようなものなの?
それに、今は卵の状態だっていうし……力を借りる以前の問題だと思うんだけど。
僕がそう尋ねると、大丈夫だとアラキエルは言った。
「創造神様も、『蛇』のことには頭を悩ませてたんだ。『蛇』の問題を解決するためって言えば協力して下さるはずさ」
彼女は僕の肩に手を置いて、目をまっすぐに見つめた。
「卵は俺が何とかして借りてくる。お前はそれをメネと協力して孵してくれ。『蛇』が復活する前に、エルを一人前の状態に育て上げるんだ」
僕たちが……育てる。この世界と神界を救う力を持ったエルを。
責任重大だ。
喉を鳴らす僕に、アラキエルは笑いかけた。
「これだけの牧場を作り上げて多くのエルを育てたお前なら必ずできる。頼んだぜ」
アラキエルが神界に帰った後、何処かに行っていたメネが戻ってきた。
「ラファニエルが神界にいないの。何処に行っちゃったんだろう?」
「メネ」
僕はメネを呼んで、アラキエルと話したことを伝えた。
邪神に対抗できるたったひとつの手段、創造神のエルを僕たちの手で育て上げなければならないこと。
メネは真面目な面持ちで頷いて、右手をこちらに向けて差し出してきた。
僕はそれに、指先で触れた。
「メネとキラなら必ずできるよ。頑張ろう、この世界を救うために!」
「うん」
僕たちならきっとエルを立派に育て上げられる。今までも、多くのエルたちを立派な大人に育ててきたんだから。
アラキエルは期待してくれている。その思いに応えるためにも、できることを全力でやらなくちゃ。
「そうと決まったら、畑に行こう。神果が実ってるはずだから、収穫しなくちゃ」
「そうだね」
僕はメネと共に畑に向かった。
必ず、託されたエルを立派な大人に育て上げてみせる。
そう心に誓って、彼女と肩を並べて仕事に向き合ったのだった。




