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第5話 お料理はメネがするの

 キッチンは僕が触れたことがないような設備がずらりと並んでいた。

 竈とか、テレビの時代劇で見たことがあるだけだよ。実際に触ることになるなんて夢にも思ってなかった。

 冷蔵庫はなく、床に大きなアイテムボックスが置かれているだけ。

 まあ、此処は異世界だもんね。コンロや電化製品がある方がおかしいか。

 興味津々とキッチンを見つめていると、腕まくりの動作をしながらメネがアイテムボックスに近付いた。

「美味しい御飯作るからね。マスターは期待して待ってて!」

「え、メネが料理作ってくれるの?」

 此処の設備、どう見ても人間サイズだ。妖精のメネが扱えるような大きさじゃないんだけど。

 任せて、とメネは自分の胸を叩いた。

「マスターがエルのお世話に集中できるように助けるのがメネの役割なの。料理くらい普通に作るよ? こう見えて、ラファニエルに色々教わってるから、大丈夫!」

 そうなんだ。

 ラファニエルって結構家庭的な一面もあるんだな。神様ってそういうことするイメージがなかったから意外だ。

「マスターはエルの卵の様子を見てあげて? まだ大丈夫だとは思うけど、気が早いエルは結構早く孵っちゃったりするから」

「う、うん」

 メネに追い立てられるように、僕はリビングに戻った。

 生命の揺り籠のところに足を運んで、揺り籠に安置されている卵の様子を見た。

 卵は……特に変化している様子はない。生まれてくるまでは、まだ時間がかかりそうだ。

 今孵られてもあげられる神果がないから、その方が助かるけどね。

 料理しようと思ってたから、することがなくなっちゃったな。指南書でも読んで時間を潰してるか。

 テーブルに戻り、椅子に腰掛けて指南書を開いた。

 開いたのは、エルの種類が載っている図鑑のようなページだ。

 エルの外見は動物と似たような姿をしているものから、竜のようなこれぞ異世界の生き物、って感じの姿をしているものまで実にバラエティに富んでいた。

 最初はできるだけ複雑な生態をしている種類じゃないといいな。僕は初心者だから、最初の一匹で基本的な世話の流れに慣れておきたいし。

 そうだなぁ……この猫みたいな姿をしているやつとかだといいな。

 などと色々思いを巡らせながら指南書を読むことしばし。

 キッチンから、皿を担いだメネが飛んできた。

「御飯できたよー。メネの自信作!」

 僕の目の前に、皿がことりと置かれる。

 見た目は、ハンバーガーに似ていた。丸いパンを半分に切って、間に野菜やハムなんかをボリュームたっぷりに載せた料理である。茹でた卵が入っているのも嬉しい。

 これは食べ応えがありそうだが、メネの身体のサイズでこれだけの大きさのものを作るのに一体どれだけの労力を使ったのだろう。

「卵とか、どうやって切ったの? 包丁は大きくて使えないでしょ?」

 僕が尋ねると、メネは胸を張って答えた。

「メネには魔法があるから、お野菜とかは風魔法を使って切ったんだよ」

 成程、魔法か。魔法ってそういう便利な使い方もあるんだな。

 やっぱり、魔法が使えるって羨ましい。

 どうして僕には魔法の力がないんだろうって思う。ちょっとひがんじゃうな。

「メネは何を食べるの?」

「メネはねー……これ!」

 メネが取り出したのは、人形の食器のように可愛らしい小さなカップと透明なティーポット。

 ティーポットの中には、琥珀色の液体がたっぷりと入っている。

 これは特別な魔力を秘めた花の蜜を煮詰めたもので、妖精はこれを主食にしているのだそうだ。

 メネはテーブルの空いている場所にカップとティーポットを置いて、そこに座った。

「さあ、マスターも本置いて。食べよう?」

「うん」

 指南書をテーブルの脇の方に置いて、僕は姿勢を正した。

「いただきまーす」

「いただきます」

 僕はハンバーガーを手に取って、大きな口でかぶりついた。

 この、トマトの酸味と間に挟んであるソースが混ざり合った味が美味しい。今までに食べたサンドイッチやハンバーガーとは違う、新鮮な味だ。

「マスター、美味しい?」

「うん、美味しいよ。御飯作ってくれてありがとう、メネ」

「どういたしまして!」

 そんな感じで、のんびりとした食事の時間は過ぎていったのだった。

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