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第49話 世界を破滅させる蛇

 昔、神界に『蛇』と呼ばれる神がいた。

 『蛇』はとても粗暴で、残忍で、悪行の限りを尽くす邪神と言われる存在だった。

 神界の神たちは、『蛇』の素行には常に頭を悩ませていた。

 そして、遂にひとつの決断を下す。

 下界に堕天させることで、『蛇』が持つ破壊の力を封じ込めようと画策したのだ。

 神たちは『蛇』を言葉巧みに誘導し、下界に追いやって、遂に『蛇』を地上深くに封印することに成功した。

 その時に、あることが下界に起きた。

 下界にいた精霊たちが次々と謎の死を遂げ、世界は瞬く間に滅んでしまったのだ。

 最初、神たちは戸惑った。下界に封印された『蛇』の怨念が精霊を殺したのではないかと言う者もいた。

 それでも──『蛇』の暴挙を止めるにはこれしかないのだという結論に達し、遂に神たちは、精霊の死の原因を究明することを諦めた。

 今も、『蛇』はこの世界の何処かで眠りについている。

 『蛇』を起こしてはならない。『蛇』が目覚めてしまったら、この世界は、そして神界は、再び『蛇』によって破壊されてしまうであろうからだ──


「……この世界が蘇ったら、『蛇』も目覚める。それは絶対に許してはならないことなのよ。私たちには、『蛇』を封じ続けなければならないという使命があるの」

 カエラは真剣な表情をしていた。

 僕は喉を鳴らして、彼女の話に聞き入っていた。

「下界と『蛇』の関係に気付いたヴォドエルは、私に下界が絶対に復活しないように監視する役目を言いつけたわ。……そこに貴方が現れて、下界を蘇生させるというラファニエルの計画が動き出してしまった」

 彼女は小さくかぶりを振った。

「……何としても、ラファニエルの計画を頓挫させる必要があった。この世界に眠る『蛇』を復活させないために。……でも、それは失敗に終わった。この通り、この世界は蘇ってしまったわ」

 ふう、と溜め息をついて、再度空を見上げる彼女。

「『蛇』はまだ復活してはいないけれど……もう、いつ蘇ってもおかしくはない。なのに神界の神たちは、暢気に下界が蘇ったことを喜んでいる」

 きっ、と厳しい顔をして、彼女は声を荒げた。

「皆は、下界が蘇ったら『蛇』も蘇ることを知らないのよ! 『蛇』が蘇ったら神界も終わりだということを忘れているんだわ!」

 世界が蘇ったら、地上に封じられていた邪神が復活する。

 ラファニエルは、そのことを知っているのだろうか?

「……ラファニエルは、そのことを知ってるのかな」

「さあ。知らないんじゃない? 知ってたら下界を蘇らせようなんて言い出さないはずよ。『蛇』の脅威はラファニエルもよく知ってるはずだもの」

 僕の質問に、カエラは投げやりに答えた。

 彼女は肩を竦めて、言った。

「もう、私たちが此処であれこれ言ったところで意味はないわ。下界はこの通り蘇ってしまったんだから。後は『蛇』が復活するのを黙って見ているしかできないのよ」

 彼女は僕の傍から離れると、宙高く舞い上がった。

 随分離れたところで一度止まり、僕の方に振り返って、疲れきった表情を見せてきた。

「……私の下界ここでの役目は終わったわ。貴方は下界が蘇ったことをせいぜい喜びなさい。これがつかの間の平穏であることを忘れないことね」

 そして僕に背を向けて、遠くの空へと飛び去っていった。

 僕は言葉を失ったまま、その場に立ち尽くしていた。

 僕とメネがやってきたことは、世界だけではなく神界までもを破壊する邪神を蘇らせる行為だった──

 このまま邪神が蘇るまで、僕たちは何もできないのだろうか?

 ……いや。そうと決まったわけではない。

 絶対、何かしらの手はあるはずだ。

 それを見つけるまで、僕は諦めない。神たちにもこのことを話して、可能な限りの対策を考えよう。

 僕は自分の頬をぱしっと叩いて気合を入れ直して、荷車を押して光の牧場を出た。

 とりあえず、今はエルたちに御飯をあげるのが先だ。他の牧場にも行かなくちゃ。

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