第38話 海獣リヴァイアサン
家に帰った僕を、メネはお茶を淹れながら迎えてくれた。
「お帰りなさい。火山はどうだった?」
「それがね」
僕はこの世界の人々に会ったことをメネに話した。
話に耳を傾けていたメネは、ふうんと言って魔法で操っていたティーポットをテーブルに置いた。
「毎日を必死に生きてる人間たち……か。その人たちは、生きることを諦めてはいないんだよね?」
席に着く僕の前にティーカップを置いて、腰に手を当てる。
「この牧場をエルで一杯にして精霊を増やしたら、環境は良くなるよ。すぐには無理だけど……少しずつ頑張っていこうね」
「うん」
お茶を飲みながら、ふと、彼らが飲み水は泥水しかないと言っていたことを思い出した。
僕って、神様の力で恵まれた生活をしてたんだな、と実感する。
この世界にどれくらいの人間が住んでいるのかは分からないけど、彼らが同じように綺麗な水を飲めるようになるように、頑張って牧場作りをしていこう。
牧場作りといえば……卵。
そろそろ生命の揺り籠に卵を置いて一日経つけど、様子はどうなっただろう。
僕は席を立って、生命の揺り籠の元に向かった。
卵は、小さくかたかたと揺れててっぺんに小さな罅が入っていた。
丁度生まれるところだった。
「メネ、卵が孵るよ!」
僕は大声でメネを呼んだ。
青い卵から生まれたエルは、大きな魚のひれが付いた蛇のような姿をしていた。
透けるように綺麗な青色をしており、瞳はつぶらで何となく愛嬌のある顔をしている。
指南書で調べると、これはリヴァイアサンという種類の水のエルだということが分かった。
リヴァイアサンって……あれでしょ。海に住んでて船とかを襲う海獣の名前だ。
ファンタジー小説にもよく名前が出てくるから馴染みがある。
その名前が示す通り、これは大人になったら体長十メートルを超える巨大な姿になるらしい。
今はこんなにちっちゃいのに……何か想像付かないな。
リヴァイアサンは生命の揺り籠から下りると、湧き水の中にちゃぽんと入った。
水のエルというだけあって、水の中が好きらしい。
これは、早めに水の牧場を作って引越しさせてあげた方がいいだろうな。
早速準備に取りかかろう。
僕はアイテムボックスの中から水の属性石を取り出した。
「メネ、水の牧場を作ろう」
「キラ」
メネがリヴァイアサンを見ながら提案してきた。
「どうせなら、残りの属性の牧場も一気に作っちゃう?」
「残りの?」
まだ作っていない牧場といえば、氷、雷、水、光の属性の牧場だ。
メネが言うには、エルが生まれてからいちいち作るよりも、先に作っておいた方がエルの世話も円滑にできるだろうとのことだった。
確かに……いずれは作らなくちゃいけないものではあるし、それなら先手を打って作っておいた方が後々楽なのかもしれない。
けど、一気に牧場を作るって大変じゃないのかな。
尋ねると、牧場作りの魔法は確かに大変なものではあるが、一気にやっても少しずつやっても労力はそんなに変わらないとのこと。
それなら、お願いして一気に作ってもらっちゃおうかな。
問題は、カエラの妨害だ。
カエラは牧場作りの魔法を上書きするという形で妨害してくる。工事の場所が一気に広がると、何処に現れるのか予測が付けづらくなる。
牧場が完成するまでは気が抜けないな。
「それじゃ、外に行こう」
「うん」
僕はアイテムボックスから残りの属性石を取り出して、先に外に出ていくメネの後を追った。




