第36話 大空を舞う
エルたちに御飯をあげ終えて家に戻ろうとした時。
地面がぐらりと揺れたので、僕は思わず立ち止まった。
「……地震だ」
「あ」
メネが遠くのある一点を指差して、言う。
「山が噴火してるね。それで揺れたんだよ」
「噴火?」
メネが指差す方を見ると、連なっている山々のひとつが赤く光っている様子が見えた。
あの山、火山だったんだ。何もない山だなぁとは思ってたけど。
「火の精霊が増えたから、地面の底に眠ってた火の力が蘇り始めたんだよ」
火山の噴火って聞くと大事件みたいに思えるけど、今のこの世界にとっては大事なことなんだね。
順調に世界が蘇っていることを知ることができて嬉しい。
せっかくだから、火山が噴火してるところを間近で見てみたいな。
そう申し出ると、メネは少し考えた後にそれならとひとつの提案をした。
「火の牧場に行こう、キラ」
火の牧場に到着すると、メネは牧場の中を飛んでいった。
それを小首を傾げて見送る僕。
やがてメネは、レッドを引き連れて戻ってきた。
「この子に乗せてもらいなよ」
「レッドに?」
レッドは急に呼ばれて何だろうと思っているのだろう。僕のことをじっと見つめている。
確かにレッドには翼があるし、身体も大きくなったから空を飛ぶのは容易いだろうが……
乗っても大丈夫なのだろうか。僕は決して太ってるわけじゃないけど、それなりに体重があるんだぞ。
僕はレッドに近付いた。
横に立って、頭をぽんぽんと叩く。
「今から、お前に乗るよ。いい?」
声を掛けると、レッドは僕の言葉を理解しているのか身体を伏せて僕が乗りやすい体勢を取ってくれた。
それじゃあ……乗るよ。
僕はレッドの首の付け根のところに跨った。
レッドが伏せていた身体を持ち上げる。
ぐっ、と股間から持ち上げられる感覚。
馬なんかとはまるで違う乗り心地だ。
ばさり、と翼が力強くはためく。
僕を乗せたレッドは、ゆっくりと宙に舞い上がった。
まだ大人の竜じゃないのに力持ちだな、レッドは。
「いってらっしゃーい」
足下でメネが手を振っている。
僕はレッドの角に掴まって身体のバランスを取りながら、レッドに声を掛けた。
「レッド、あそこの光ってる山まで行ってほしいんだ。行ける?」
火山のある方を指差すと、レッドはゆっくりとそちらの方向を目指して飛び始めた。
牧場が後ろに流れるようにして僕の視界から消えていく。
エルに乗って空を飛べるなんて思ってなかった。僕は今、凄い経験をしてるんだな。
赤い世界を風を切って横断しながら、僕は心の底から湧き出てきたわくわくに笑みを零した。




