第33話 不安
じゅーっ、とフライパンの上で色鮮やかな野菜が音を立てている。
「そろそろ、いいかな……」
僕は用意しておいた皿に、炒めていた野菜を盛りつけた。
うん、いいんじゃないかな。十分美味しそうだ。
完成した料理を持ってリビングに移動する。
がらんとしたリビングは、何だか普段よりも広く感じられた。
メネがいないってだけで、こんなにも雰囲気が変わるものなんだね。この部屋は。
とりあえず、食べよう。
「いただきます」
僕は両手を合わせて挨拶をして、野菜炒めを一口頬張った。
……固い。
野菜は火がちゃんと通っておらず、生っぽかった。
生まれて初めて自分で作った料理は、どうやら失敗に終わったらしい。
キャベツもピーマンも生で食べられる野菜だから助かったようなものの、そうでなかったら腹を壊していただろう。
ばりばりと生の野菜を齧りながら、僕は自分がろくに料理のひとつもできないという事実を情けなく思った。
僕は、メネに牧場作りのことだけじゃなくて生活面でも随分助けられてたんだな。
メネ……何処で何してるんだろう。
生の野菜炒めを完食して、僕は室内をぐるりと見回した。
そろそろ夜だというのに。このまま帰って来ないつもりなのだろうか。
「……はぁ」
溜め息が漏れた。
考えていても仕方がない。料理の後片付けをして、風呂に入ろう。
そのうち、何食わぬ顔でひょっこり帰ってくるさ。
自分に言い聞かせ、僕は空の皿を持って席を立った。
風呂から上がって、ベッドに入る。
メネはまだ戻ってこない。
明日になったら卵が孵る。そうしたら新しい牧場作りをしなければならないというのに。
一人でいることが、こんなにも不安だなんて。
毛布の中で身体を丸くして、僕は深く息を吐いた。
何で喧嘩なんてしちゃったんだろう。
何ですぐに謝らなかったんだろう。
後悔先に立たずとはまさにこのことだ。
神様……っていうとラファニエルになるのか? まあこの際誰でもいい。
もう喧嘩なんてしないから、もう一度メネに会わせて下さい。
心の中でそう願いながら、僕は眠りについた。
窓の外で、赤い空が無表情に僕のことを見下ろしていた。




