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第26話 ラファニエル、憤る

 先に仕掛けたのはカエラだった。

 鎌の刃を、斜めに振り下ろす。

 メネはそれを身を引いてかわすと、カエラの後方に回りながら棒を縦に突き出した。

 がつ、と棒の先端が鎌の柄に当たる。

 衝撃でぶれた鎌を握り直し、カエラはぺろりと自分の唇を舐めた。

「……私は優しいの。すぐに実力の違いを分からせてあげる」

 自らの身体の周囲に円を描くように、鎌を一閃。

 メネから距離を置いて、刃を高々と頭上に振り上げた。

「沈みなさい」

「!」

 メネが棒を身体の前で構える。

 カエラは力一杯鎌を振り下ろし──

 ばちっ!

 メネの前に現れた大きな鏡のようなものに斬撃を阻まれて、彼女は大きく体勢を崩した。

「なん──」

「おやめなさい。妖精同士で争うなど、私が許しません」

 静かな声が、妖精たちを諌めた。

 声のした方──僕の背後に振り向くと。

 口を真一文字に引き締めたラファニエルが、そこに立っていた。

「ラファニエル!」

「あら……誰かと思えば世界の救世主を謳っている神様じゃない。わざわざ下界ここに降りてくるなんて、そんなに此処の様子が気になるのかしら?」

 カエラの挑発じみた言葉に、ラファニエルは静かに溜め息をついた。

「帰りなさい。此処は貴女が来ていい場所ではありません」

「そうはいかないわ。私の使命はこの世界に永遠の滅びを与えること。そのために、貴女たちの邪魔をしなければならないのよ」

 カエラはあくまで此処に留まり僕たちの牧場作りを邪魔するつもりらしい。

 しかし、ラファニエルは動揺ひとつしない。静かに右手をカエラに向けて翳すと、言った。

「我々神は、下界のものに干渉することは許されていません。しかし、神界から来た貴女に手を下すことはできます。これ以上貴女がこの地に混乱を齎すつもりなら、私も相応の対処をしなければなりません」

 それは、ラファニエルがカエラに向けた通告であった。

 これ以上僕やメネに危害を加えるつもりなら、神罰を与えるという──

「…………」

 カエラは口内で小さく舌打ちをすると、鎌を手中から消した。

「……私は諦めない。どんなにかかっても、必ずこの牧場作りを諦めさせてみせるわ」

 闇の牧場を睨んで、彼女は飛び去っていった。

 ラファニエルは手を下ろし、メネに顔を向けた。

「メネも、簡単に相手の挑発に乗ってはいけません。いくら妖精が破壊の魔法を持っていないからといっても、相手を傷付ける手段がないとは限らないのですよ」

「……はぁい」

 メネも棒を消して、しゅんとしたようにラファニエルの言葉に対して返事をした。

 僕は尋ねた。

「破壊の魔法を持ってないって、どういう意味?」

「メネたち妖精は、命を育てたり物を作ったりする魔法はできるんだけど、物を破壊する魔法は覚えちゃいけないって決まりがあるんだよ」

 成程、そういう掟があるんだ。

 だからカエラも、牧場作りの妨害はしてくるけど、完成した牧場を壊そうとはしないんだな。

 今まで不思議に思ってたから、これで謎がひとつ解けたよ。

「少し見ない間に、随分牧場が広くなりましたね。順調にエルの数が増えているのですね」

 闇の牧場を見て、ラファニエルは嬉しそうに微笑んだ。

 闇の牧場は、メネたちが争っている間に完成したらしい。夜の草原のような紫の草が茂る草地が、遠くにまで広がっていた。

 早速、クロを放そう。

 僕は草原にクロを下ろした。

 クロはすぐに草原の中を駆け出して、あっという間に僕たちの視界内から姿を消した。

 元気いいな、クロは。この様子ならすぐに牧場の環境に慣れるだろう。

「僅かにですが、この世界に生命の力を感じます。エルたちから生まれた精霊がこの世界を蘇らせている証です。この様子なら、そう遠くないうちに、世界は姿を変えるでしょう」

 ラファニエルは何処からか卵を取り出すと、僕にそれを渡した。

「何としても、この世界を蘇らせなければなりません。貴方たちの働きに全てがかかっています。どうか宜しくお願い致します」

 新しく貰ったエルの卵は、赤い色をしていた。これは火のエルの卵だ。

 レッドドラゴンの卵かな? まあ、孵してみないと分からないか。

 早速生命の揺り籠に置きに行かないと。

 卵を撫でて、僕は火の牧場がある方に目を向けた。

 レッド、同じ火のエルの仲間が増えるよ。楽しみに待っててね。

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