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北の王子と南の姫  作者: 桃巴


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草原の塔と紅い薔薇

「こ、この塔に?」


 翌日、アイラはマークを連れて草原の塔に向かった。塔に入ろうとすると、マークが動揺を示した。


「マーク? この塔に何かあるのですね」


 今まで一度もアイラ達に動揺など見せてこなかったマーク。その彼が動揺しているのである。


「この塔は!」


 マークの言葉は続かない。アイラは、マークの様子から判断する。


「マーク、わかりました。もうこの塔には入りません。今日で最後に致します。だから、最後に一度だけこの塔にお礼がしたいの。いいかしら?」


 マークは無言のまま、頷いた。


「クレア、セリアここで待っていて」

 

 アイラは塔に入った。マークはその後ろに続いた。アイラはゆっくり歩く。時折、外を眺めながら。


 塔は三階まであるが、三階に上がる階段には後付けであろう門があり、施錠されている。三階には行けないのだ。一階、二階ともほとんどの部屋には鍵がかかっていた。唯一、二階の侍女部屋だけが使用できる状態であった。掃除のため、この塔に来る侍女達のためであろう。


 アイラは侍女部屋に入り、椅子に腰かけた。


「マークも座ったら?」


 部屋の扉の前で立つマークにアイラは促した。


「いえ、私は」


「そう、わかりました。出ましょう」


「いえ! アイラ様、どうぞごゆっくり。すみません」


「いいのよ、マーク。涼の国の事情ですものね」


 スッとアイラは立つ。


「えっ?!」


 アイラは声を上げて窓に近寄る。マークはその様子を不思議そうに見ている。


「アイラ様?」


 アイラの返事はない。ただ、窓の外の草原を微動だにせずに見つめていた。


「アイラ様?」


 マークは、もう一度呼び掛ける。


 ーーガタンーー


 振り返ったアイラは、椅子にぶつかりながら移動し、別の窓から庭園を見下ろした。


「こちらに来るのね」


 小声で呟いたアイラの声を、なんとかマークは聞き逃さなかった。


「マーク行きましょう」


 二人は二階の廊下を進む。マークは、アイラの行動と呟きの内容が理解できずにいた。問うことは、アイラの雰囲気から出来ないと考え無言でその背を追った。


 ーーダッダッダッダッーー


 階段をかけ上がってくる緊迫した音に気づき、マークはアイラの前に移動する。アイラの足を止め剣を構えた。


「マーク、剣を収めて」


 背後のアイラの声と同時に、視界にはレオンが現れた。レオンの憤怒した顔。マークはこの局面をどう乗り切ろうかと、考えを巡らせる。の時間もなく、レオンは怒鳴り声を上げた。


「ここから出ていけ! ここは、お前などが軽々しく入っていい場所じゃない! ここはエミリアの塔だ! この塔を汚すな!!」


 レオンは、怒鳴り声を上げながら詰めより、アイラの腕を掴んで引っ張った。アイラは体勢を崩す。レオンはお構いなしにアイラを引きずる。


「レオン様!」


 マークが叫んだ。アイラは足を絡ませ、引きずられながら階段を下る。マークの声も聞こえてはいないのであろう。レオンは、アイラの靴が脱げているのも、足が傷だらけになっているのも、手や腕が煉瓦の壁に擦られ血を流しているのにも、気づかず、いや、アイラに顔を向けていないのでわからない。そのくらい興奮しアイラを引きずった。


 階段を下り終り入口に着く頃には、ドレスもボロボロで全身傷だらけのアイラになっていた。


「「アイラ様!!」」


 クレアとセリアが悲鳴のような声を上げた。レオンは力任せにアイラを投げた。


「この塔に入るな!! っ!?」 


 レオンはようやく、アイラの姿を目にする。その姿に驚き喉を詰まらせた。クレアとセリアに抱えられながら、辛うじて立とうとしているアイラを。


「アイラ様、靴をどうぞ」


 靴を持ってマークがやっと追い付いた。マークの手には、靴だけでなくアイラのドレスの装飾品もあった。


「マーク、ありがとう」


 アイラは、傷だらけの足を靴に差し込む。アイラの顔が歪んだ。足の裏も当然傷ついている。


「アイラ様、失礼ですが抱き上げてもよろしいでしょうか?」


 マークは、あまりにも痛々しい状態のアイラに進言した。


「いえ、結構です。ありがとう、マーク。私のことよりもレオン様の方が傷ついております。ですから、レオン様のお側に」


 茫然としているレオンに、聞かれないようにアイラはマークに伝えた。マークが驚く。こんな状況でレオンを気遣っていることに。


「レオン様」


 背後に見知った声を確認した。マークは振り向きその声の主を見る。


「ルーク、レオン様を頼む」


 マークは簡潔に言った後、再度アイラに向き直った。


「ルークが来ましたので、レオン様は大丈夫でございます。アイラ様、このまま少々お待ちください。マントを取ってきます」


 マークが去る。ルークは未だ情況が掴めていない。


 茫然とするレオン。傷だらけのアイラ。


 ルークは、草原の塔の入口が開いているのに気づく。ここでようやくルークは状況を理解した。ルークはアイラに目を向ける。そのボロボロの姿に顔を歪めた。


「レオン様、アイラ様を支えてはいかがでしょうか?」


 二人の侍女に支えられてはいるが、今にも崩れ落ちそうだった。


「レオン様、どうかアイラ様を支えてください」


「……、クッ」


 レオンからは、喉を詰まらせる音しか出てこない。


「私が行ってよろしいでしょうか?」


「頼む」


 ルークはアイラの元に動いた。


「アイラ様、私が支えます。レオン様の許可は取りました」


「結構です。ありがとう、ルーク。レオン様のお側に行ってあげてください。私は大丈夫です。と、レオン様に伝えて。それから、お仕事に戻ってください」


 ちょうど、マークがマントを持って戻ってきた。


「まだ居たのか、ルーク。レオン様を連れて、ここから早く離れなさい」


「はい、では。アイラ様、レオン様にはお伝え致します」


 ルークがレオンの元の戻り、そのままレオンを促し歩き出した。それを確認したマークは、アイラにマントをかけた。


「海の塔のお部屋まで、頑張ってください」


「ええ、マーク。マントをありがとう。クレアもセリアも支えてくれてありがとう。クレア、髪がヒドイでしょ? フフッ、下ろしてしまいましょうか」


 アイラは、そう言って結い上げていた髪を解いた。風が流れた。アイラの髪が舞った。


 ーーカーンコン カーンコン カーンコンーー


 昼刻の鐘が鳴った。





 食間の前で待機していた涼の国の侍女二人は、そのあまりの姿に声を失った。


「ジーナ、エレーナ、すぐに傷薬を準備して! あと、お湯の用意も!」


 クレアが叫ぶ。


「白布もお願い!」


 セリアがつけ足した。


「皆、そんなに急がないでいいわよ。あ! マークはもう戻って。王様のお側がお仕事でしょ?」


「このような状況で、この場を離れることはありません! 私の今の仕事は、アイラ様のお側を守ることでございます。王様からもそう命じられております!」


 マークは声を張り上げた。アイラがあまりに自身をないがしろにしていることに、周りに気を使うことに、無性に苛立ったのだ。マークの声の大きさにアイラは驚く。


「フフッ、涼の国の男の人って、声がすごく伸びやかなのね」


 アイラの穏やかな声にマークは驚いた。あのようなヒドイことの後の表情には思えない。その異様さに思わずマークは問うた。「アイラ様、お辛いのではないのですか?」と。


 背後のクレアとセリアの顔が歪む。マークはそれに気づき、失言を発してしまったと悔やんだ。がしかし、アイラの口からは思いもよらない言葉が放たれた。


「私、はじめてレオン様のお声を聞いたんです。伸びやかで素敵でした。少し嬉しいかも」


 マークはその内容にも、その感情にも驚きを隠せずにいた。


「ア、イラ様」


 何かを答えようと頭では思っていても、マークにはその言葉が出てこない。声を聞いたのがはじめて……その衝撃の内容に、マークはこの一ヶ月を思い起こす。確かに婚礼の時には、声を出す場面はなかった。その後の祝いの席でも、レオンはアイラに話しかけはしていない。そして、その夜から一ヶ月、レオンはこの塔を訪れてはいない。アイラは、今日はじめてレオンの声を聞いたのだ。


「私、おかしいでしょ?」


 アイラの言葉に、マークはさらに困惑した。


「あ、の、どうして……」


「どうして辛くないのか。ですね?」


 アイラはまっすぐにマークを見ている。マークは全身を覆うような違和感と、得たいの知れない引っ掛かりに、それを表す言葉を探し出せずにいた。


「史官様、着替えと治療を行いますので」


 セリアがマークを部屋から出るよう促す。ジーナとエレーナが傷薬とお湯、白布を運んできた。


「アイラ様、では後ほど」


 マークは退室した。マークは部屋の外の廊下に出る。窓の外の海原を眺めながら、気を落ち着かせた。


 何かがおかしい。一体この違和感はなんなのだとマークは考える。浮かんできたのは草原の塔でのこと。"こちらに来るのね"と、あの言葉は何を意味するのか。草原や庭園を見た行動。そして、レオンが訪れた。マークは目を閉じ思い出している。次第に鮮明になっていく意識下で、突如浮かび上がる言葉。


「『私、おかしいでしょ?』と言ったな。おかしいとは何を意味する? 『嬉しいかも』あの状況で嬉しい? 会話の先読みに、感情の突飛さ。そして、『こちらに来るのね』とはレオン様のこと……となると」


 マークは、確信した。アイラには何かの"秘密"がある。何かの"力"があると。それは、"豊の力"の一種なのかと。マークはさらに考えを詰めていく。がしかし、近づく足音に気づき意識をそちらに向けた。


「マーク様、アイラ様のお加減は?」


 ルークが現れた。手には一輪の薔薇を持って。


「今、処置をしている。まだ面会は無理だろう。でそれは?」


「レオン様から、お見舞いの薔薇です」


 と、そこで部屋の扉が開かれた。セリアが血で汚れたお湯と白布を持って、部屋から出てきた。


「処置は終わったのか?」


 マークはセリアに問うた。


「いえ、あまりの傷の多さに新しいお湯が必要になりまして」


 セリアの冷たい声が、マークとルークに突き刺さる。冷気とともに怒気も含んでいた。


「あの! これをアイラ様に」


 ルークは空気を変えようとしたのだろう、薔薇を差し出した。セリアの顔は驚愕した。そして、射ぬかんばかりにその薔薇を睨み付けていた。いつもは冷静なセリアのその態度に、マークとルークはたじろぐ。


「"豊の姫"に"ソレ!"を贈るのですね?」


 セリアの声が廊下に響いた。セリアの背後の扉が再度開いた。


「どうしたの? セリア、早くお湯と白布を!」


 クレアが顔を出した。


「クレア、レオン様から"ソレ"が……」


 セリアはチラリと一輪の薔薇を見て、苦々しげに言葉を濁しながら呟いた。クレアも"ソレ"を見た。


 一輪の薔薇を。


 クレアの顔も、セリアと同様に驚愕する。そして、鬼のような形相で一輪の薔薇を睨み付けた。クレアは、廊下に出て扉を閉めた。クレアとセリア、マークとルークで対峙した。


「"豊の姫"に贈るのですね?」


 クレアが声を低く落として問うた。マークとルークは動揺する。見舞いの花に対して、侍女達の対応があまりに刺々しいのだから。


「良いのですね?」


 セリアも今度は抑えた声で訊いた。


「……」

「……」


 マークもルークも押し黙る。クレアとセリアの凄みに怯んだ。


「あ、あの、アイラ様にお見舞いを。レオン様のお気持ちですので」


 ルークがなんとか声を出した。だが、マークは二人の態度で、この見舞いの花に何かあるのだとわかる。ルークが差し出そうとした薔薇を持つ腕を押さえた。


「アイラ様は薔薇がお嫌いなのですか?」


 マークが二人に問う。


「アイラ様は、"豊の姫"です。植物が嫌いなわけはありません!」


 クレアが落とした声のまま、はっきり断言する。


「では何故お二人はそのような……なんと言いますか、"豊の国"では見舞いはないのですか?」


 二人の顔はさらに、ひどく歪んだ。


「何も知らないのですね? そう、何も知る必要がない? 大国の礼儀とは!」


 ーーバタンーー


 クレアの声が荒くなり大きくなる。叫ぶ寸前でまたも扉が開いた。アイラが顔を出した。


「どうしたの?」


 処置中のアイラの傷だらけの腕が痛々しい。ルークは申し訳なさそうに、アイラに薔薇を差し出した。


「レオン様から、お見舞いの薔薇です」


 マークは慌てる。クレアとセリアはルークと薔薇を睨み付ける。


「……」


 アイラは声も出せず、一輪の″紅い″薔薇を眺めていた。


「アイラ様、どうぞ」


 ルークの声だけが廊下に存在した。


「ひどすぎる」


 セリアが呟いた。マークはその声もしっかり耳に拾った。ルークはその声に気づかない。


「アイラ様、薔薇がお嫌いでしたら違う花をお持ちします」


 ルークの言葉にやっとアイラの意識が戻る。


「えっ? いえ、大丈夫です。レオン様からなのですね? この薔薇は」


「はい! お見舞いの薔薇です」


 ルークは笑顔で答えた。


「そうですか。では、お受けします」


 アイラは薔薇を受け取ろうと手を出した。


「アイラ様!」


 セリアが叫ぶ。マークも、この異様な空気に薔薇がアイラの手に渡らないように、ルークの腕を掴もうとした。


「レオン様からですもの、私、お受けします」


 何かの宣言でもするように、アイラは薔薇に向かって囁き微笑んだ。薔薇がアイラの手に渡る。


「ルーク、レオン様にお受けしますとお伝えください」


「え? あの、"お受けします"ですか?」


「フフッ、"お受けします"は、おかしいですか?」


 アイラがルークの疑問を口にした。そして、「普通は、"ありがとうございます"かしら?」と。


「はい。では、レオン様にアイラ様から薔薇のお礼の言葉をお伝えします」


 ルークが明るく言う。二人の侍女は無表情にそれが見ていた。マークに不安が襲う。"豊の姫"にと言った二人の侍女のただならぬ様子に。それに加え、″お受けします″と答えたアイラ様の様子に。そんな風に、思い悩むマークにアイラから声がかかった。


「マーク、今日はもうよいわ。ルークと一緒に下がってください」


「いえ、まだお聞きしたいことがあります」


 マークは食い下がった。


「ご免なさい、マーク。私、疲れてしまいました。今日はもう休みたいのです」


 食い下がるマークをなんとか帰し、アイラ達は部屋に戻った。


「アイラ様、お座りください。まだ傷の消毒が終わっておりません」


 ジーナに促され、アイラはソファに座った。


「あの、それは?」


 エレーナが、アイラの持つ薔薇を見つめる。


「フフッ、レオン様からなのよ」


「「え! 受け取ったのですか?」」


 ジーナとエレーナが声を揃えて訊いた。


「あなた方は、知っているの?」


 アイラも二人に問う。


「"豊の姫"に切り花を贈ることは、『会いたくない』を意味するのですよね」


 ジーナが答えた。


「ええ、その通りよ。でも、涼の国の史官でさえ知らなかったのに、あなた方は知っている。あなた方は何者?」


 アイラは、ジーナとエレーナにさらに問う。二人は互いに顔を見合い、頷いた。


「私達は、青の国から来た巫女侍女です」


 ジーナの発言に続き、エレーナが詳しく話はじめた。


「三年前、この涼の国の隣国"いにしえ国"の魔の封印が解かれ、暗雲が広がりました。その際、青の国の巫女の力で浄化を行い、銀の国の五光石と五光石の大剣、そして、いにしえ国の呪術で再度封印致しました」


 エレーナはここで一呼吸した。ジーナに目配せする。ジーナがその後を話し出した。


「いにしえ一国で、封印の任をしていたのです。封印が解かれるまで中央大陸の国々は知らずにおりました。銀の国の王太子様が大陸各国に、封印の任の協力を進言しました」


「なるほど、それであなた方が、あなた方青の国の巫女侍女方がこの涼の国に居るのね」


 アイラは先読みをして話した。


「はい、中央大陸の各国は、それぞれの国で封印の詳細を伝えるため、またその方法を伝授するため、交換留学を行っております」


 部屋に少しの静寂が訪れた。


「青の国の侍女を着かせた。涼の国は、最初からアイラ様を蔑ろにしていたのですね」


 セリアがポツリと呟く。


「え! あ、あの、それはどうかわかりません」


 ジーナが慌てて言った。


「建前上の妃。来ぬレオン様。海しか見えぬ孤立した海の塔。華やかな草原の塔に側室。青の国の侍女。傷を負わせた上に"豊の姫"に切り花。それも紅い薔薇!!」


 クレアが叫んだ。ジーナとエレーナがさらに慌てる。


「"豊の姫"に切り花を贈る意味を、涼の国の方々は知らないのです。意図してしたことではないと」


「そう! 知らない。知る必要がない! こちらは涼の国のしきたりを学びました。だけど、この国は遠く嫁いできたアイラ様の母国のことを何も知らない。要るのは、アイラ様の、"豊の姫"の力のみだから! だから、こんなひどいことが……」


 セリアが薔薇を睨み付けている。


「"豊の姫"に切り花を贈ることは、『会いたくない』の意味。そして、贈る花言葉の反対の意味。『愛してない』ということ」


 重い空気に包まれた部屋にアイラの声が通った。


「いいのよ。私は、芽の出ぬ姫です。だから、調度いいのよ。あの草原の塔にはきっともうすぐ側室の方が入られるのね。レオン様の寵愛を一身に受けておられる……エミリアさん?」


 ジーナとエレーナが顔を見合せ首を傾げた。


「私達は何も聞いておりません。一年前からこの涼の国に居りますが、エミリアさんと言う方の存在は聞いたことがありません」


「そう、私達はレオン様の妹君から聞いたのです。レオン様の心はエミリアのものだと言っておられました」


 アイラはそう言って立ち上がり、窓辺に近寄る。海を眺めてポツリと溢した。


「せめて、草原に行きたいわ」


 その背を四人の侍女が見つめる。アイラは手にしていた薔薇をそっと抱きしめた。


「切られて痛かったでしょ? ごめんね、私のせいで」




***




 マークはルークと共に、アイラの元を下がった。


「ルーク、豊の国のことを調べよう。豊の姫についてもだ」


「マーク様、何故調べなければいけないのですか? 結婚前ならまだしも、もうお二人は夫婦ですし」


「お前は! レオン様に着いていてわからんのか? レオン様は婚礼後一度もアイラ様の元に行ってはいないのだぞ!」


「え!」


 ルークが驚く。


「毎夜、レオン様はアイラ様の元に行くと言って執務を終えていますが」


 マークは溜め息をついた。


「海の塔までお供をしているのか?」


「エミリア様のお墓までお供はしますが、レオン様から"ここまででよい"と言われますので」


「側近失格だな」


 マークは痛烈に言い放った。


「すみません。レオン様は毎夜何処でお休みになられていたのでしょう? というか、アイラ様は今日何故草原の塔に?」


 ここで、ルークはやっと今日のレオンとアイラの様子に疑問を抱いた。


「単なる痴話喧嘩ではなかったのですか?!」


 マークはルークの発言に顔をしかめた。


「ルーク、レオン様は何と言っておった?」


「いえ、何も。なので、私がお見舞いに花を贈ってはどうかと進言しました。レオン様は頼むとおっしゃったので、やはりこういうときは薔薇が良いと思いまして、喧嘩の後はと思っていたもので」


 ルークの語尾が細くなる。マークはそんなルークにさらなる衝撃の言葉を伝えた。


「ルーク、アイラ様は言ったのだ。"はじめてレオン様の声を聞いたと"」


「え!」


 ルークの足が止まる。


「声をはじめて聞いた?」


 ルークが言葉をなぞる。


「ああ、そうだ。あのように傷を負わされながら、"声を聞けて嬉しい"とアイラ様はおっしゃった。そして、薔薇を受け取り"お受けします"とおっしゃった。おかしくないか?」


 マークは感じていた違和感を、ルークに伝える。そして、再度言った。


「豊の国、豊の姫、アイラ様のことを調べなければ」


 そこに、バタバタと足音が近寄ってくる。


「マーク様! ルーク様! 至急王様の元へ!」


 ジークが大声を出しながら走ってきた。


「何かあったのか!」


 ジークの慌てように、マークが素早く反応する。王の塔に駆け出しながら問うた。


「はい! 草原に異変が生じまして、緊急に会議が行われます!」


 マーク、ルーク、ジークは走りながら会話をした。


「草原の異変とは?」


 ルークが問う。


「岩山の港近くの草原一帯が、害虫被害に!」


「は? そんなことでか? 害虫対策の薬を振り撒けばよいであろう」


 ルークは、ジークの発言に納得しない。


「薬が効かないのです! 数日前より被害が出ていたのですが、今日午前中に一気に広がり、先ほど報告が上がり急遽会議が行われることに!」


「薬が効かない? 最初の被害はどう対処していたのだ?」


 マークが問うた。


「被害周辺の芝生を刈っていたそうです。それでなんとか収まっていたらしいのですが、今日午前中に一気に広がったとのことです!」

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