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記憶  作者: 望月愛
3/13

3,心の変化


「やばっ。寝坊した!!」


時計の針は7:20を指している。


「あ、起きた?アンタの目覚ましうるさかったから止めたよー。」


そう言うお姉ちゃんは既にスーツに着替え化粧をしていた。


「起こしてよー。今日1限からなのに!」


1限は8:40から。あと20分で家を出ないと間に合わない。


「何回も起こしたって!友達に代返して貰えば?」


「この先生は出席厳しいの。」


「諦めて2限から行けばー。」


薄目になってマスカラを塗るお姉ちゃんに何故かムカついた。


こんな人が教師になって良いんだろうか?


時計とにらめっこする。


「間に合う!」


そう言って急いで着替え、メイクもせず慌てて家を出た。



起きてから15分後、奇跡的に駅に着いた。時計を見る。なんとか間に合いそうな時間だ。走って来たから汗が出る。


ホームに行くといつもよりたくさんの人が居た。


『この時間は混むのなかぁ?』


息を落ち着かせつつ乗り換えしやすい5両面へ向かう。


すると構内アナウンスが流れた。


『只今、東横線祐天寺駅で人身事故が起きた為、上下線共に運転を見合わせております…』


足が止まる。

せっかく走ってきたのにー!

意味ないじゃん!!


とりあえず5両目へ行こうと歩き出した。


「イタっ。」


「あっすみません!!」


急に動いたから女の人の足を踏んでしまった。


「大丈夫?」


聞き慣れた低い声が聞こえる。


はっと顔を上げた。


「ユータ…」


私が足を踏んだ人の隣にユータが立っていた。


「サキ?」


ユータは驚きを隠せない様子だった。


訳が分からない女の人は私を見た後ユータを見つめていた。


「あ…久しぶりじゃん。」


無言が気まずくてとりあえず喋った。


「ホントだな。元気?」


「元気だよ―。」



ふと昨日のお姉ちゃんの言葉を思い出す。


「…彼女?」


彼女を見つつ、超ストレートに聞いてしまった。


「そう。同じ大学のユカリ。」


ユカリさんは恥ずかしそうにペコっと頭を下げた。


この人…私とは正反対だ。大人っぽい。てかお嬢様っぽい。


「こっちは中原さん。高校のクラスメイト。」



『中原さん』なんて呼んだ事も無いくせに。


まぁ、元カノとは言わないよなぁ…。


って、とりあえず謝らなきゃ。


「足踏んじゃってごめんなさい。」


「いえ、私こそ。ボケっとしてたから…。」


無言になる。


気まずい。


「私乗り換えあるから向こうの車両行くね。」


「あぁ。あ、そうそう、谷原が夏休みにクラス会やろうって言ってた。また連絡行くと思うから。」


「わかったー。」


そう言って振り返り人混みの中を歩き出した。


「ユカリ、危ないから俺に掴まってて。」


遠ざかる中、かすかに聞こえたユータの声。


もう私には向けられない優しさ…。


彼女、ユータの家に遊び行ったんだろうなぁ。ユータのお母さんめっちゃ優しくて良い人だから、すぐ仲良くなるんだろうな。

いっつも『サキちゃん』って可愛がってくれたな…。


分かっていたはずなのに苦しい。

涙が溢れるのをガマンしてる。


なんで…なんでまだ好きなんだろ?私だって次の恋したいよ。


『新しく好きな人出来たらユータなんかすぐ忘れるって。』


ナチに何回も言われたコトバ。



さっきの幸せそうなユータを思い出す。

こっちはこんなに悩んでるのに楽しそうにしやがって!


なんかだんだんムカついてきた。


よし、私も好きな人作ってやる。ユータよりめっちゃ良い男捕まえてやる!


悲しみが怒りに変わったのか、自然とそう思えた。



でも…


恋ってどうやってするんだっけ…。



「ナチ、やっぱ私も合コン行く!」


ナチに会った瞬間、おはようも言わずそう言った。


「えっ?遅刻してきていきなり何言ってんの?」


結局学校に着いたのは1限が終わる頃だった。普段でさえ満員すぎる電車がそれ以上だったから授業は諦め、空いてから来た。


「今更合コン行くって言われてもムリ。もうカヨに頼んじゃったよ。」


「うそぉ。お願い!私も入れて!!」


「急にどうしたの!?何かあった?」


「それは…」


「わかった。ゆっくり聞くからとりあえずどっか行こ。」


今日は1限と3、4限の日。3時間近く空くから近くのファミレスに行く事にした。



「で?何があったの?」


注文を言った後すぐナチは問いかけた。


「今朝ユータに会った。」


「まじ?」


「隣に彼女居た。」


ナチは目を広げて驚いた。言葉が出ないっぽい。


私は今朝の詳細と昨日のお姉ちゃんとの会話を全部ナチに話した。


「つまり…新しい恋をする気になったんだ?」

「うん。でもどうやって好きな人作るか忘れちゃって…同じ学科の男の子は一緒に居て楽しいけどときめかないしさー。」


「だから合コンかぁ。」


「そゆこと。」


「昨日まで合コンキライとか言ってたくせに。」


「今は手段選んでる場合じゃないの!一日でも早く彼氏が欲しいんだって。」


「人は一日で変わるもんだねぇー。でもサキがそう考えれるようになったのは嬉しいよ。」


そう言ったナチは笑顔だった。


「で…合コン参加はムリ?」


「んーサキがそこまで言うなら相手にお願いしてみるよ。どうなるか分からんけど。」


「ありがとう!いざとなったら3:4でも良いから!」


「アンタがよくても周りが良くないから!」


…間違いない…。


ナチはメールを打ち始めた。


その間に注文したハンバーグランチ(ライス大盛り)が私の前に置かれた。


「サキ昼からよく食べるね―。」


ナチはケータイを打つ手を止め、大盛りなご飯を見た。


「今日朝ご飯食べて無くてさー。朝昼ご飯だから♪」


「サキってよく食べるのに太んないよね―。うらやましい。」


「食べて動く!これ基本☆」


「ウソつけ。運動してないクセに。」


「バレた?でも運動したいなー。今更だけどサークル入らない?」


「何よー通学に時間掛かるから入りたく無いって言ったくせに。」


「でもサークルって『大学』って感じするじゃんー。」


「あっ、返事来た。」


話を遮ってナチが言った。


「早いねー。」


メールが早い男の人ってなんか負けた気がするのって私だけかなぁ?


「『全然大丈夫☆こっちも一人足すから。』だって。」


「まじ!?ありがとうー。」


「…てかサキ…?」


「んん?」


大口でハンバーグを入れた瞬間ナチが言った。


「アンタスッピン&その服で行くつもり?」


「んー!?」


急いでハンバーグを飲み込んだ。


「そうだった。今日寝坊したから慌てて来たんだよ。メイク道具は持ってるけど…。」


今の服装…いわゆる…Tシャツ&ジーパン、、、。


「メイクは良いとしてもさすがにそのカッコは無いよ。」


「あぁ!って事はこのカッコでユータに会っちゃったんだぁ。やばい。」


「サキー。もう忘れるんじゃないのー?」


「あ…ついクセで、、、それよりどーしよう?」


「家戻る時間は無いよー。6時に待ち合わせだから。もうそれで良いんじゃない?いちおセシルのTシャツにジーパンだからオシャレっちゃオシャレだよ。」


「ナチ投げやりでしょー!」


「ホントに思ってるって。それより早く食べて化粧した方が良いって。」



人生初の合コン。どうなる事やら…。



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