2,片付け
「はぁー。」
帰りの電車の中、思わずため息をついてしまった。
向かいに立つ人の視線を感じる。。。
レポートは授業中になんとか終わらせて提出してきた。ま、評価は期待してないけどね…。
『いい加減忘れなきゃなぁ…。』
周りに言われなくったって毎日のように思ってる。
なのになんで忘れられないんだろう…。
学校から家まで1時間掛かるのにユータの事を考えてたらあっという間に家に着いた。
「ただいまー。」
「ちょっとサキ!部屋片付けてよ!」
私が帰るなり、3歳年上の姉 真衣子が怒り口調で言ってきた。
「あれっ!?なんで居るの?」
お姉ちゃんは今、新潟で一人暮らしをして教育大に通っている…はずなのに。
「言っておいたでしょ?6月の後半から教育実習があるから1ヶ月実家に戻るって。」
「そーいえば。」
「だから部屋片付けておけって言ったわよね?なんであんなに汚いの!?」
「すっかり忘れてて…。」
私の家は一軒家だけど部屋数が無いから、お姉ちゃんと2人部屋なのだ。
まぁここ数年は私だけの部屋になってるんだけど…。
「ごめん。すぐ片付けるから!」
急いで自分の部屋へ向かった。
昔からお姉ちゃんはちょっと怖い…。こんな風に怒ってたら従うしかないのだ。
これが妹の弱いトコロ…。
「サキ、、、この汚さは私が帰って来たからっていう以前の問題だよ?」
そう言うお姉ちゃんは信じられないって顔をしてる。
床に散らかる服にマンガにゴミもろもろ…。
そう、私は俗に言う『片付けられない女』なのだ。
「さすがO型だわ。私も片付けるの手伝うから早く終わらせよ。」
そう言ってお姉ちゃんは散らばるゴミを拾いはじめた。
「はい、ごめんなさい。」
私もがむしゃらにゴミを拾った。
「アンタ、何でまだ高校の教科書が床に落ちてんの!?」
「あははー何でだろうね、、、。」
苦笑いをする。
「どうせもう使わないんだから捨てなさい。ほら、ビニール紐持ってきて。」
「はーい。」
今は従うしかない。紐を取りにリビングへ向かった。
『部屋をキレイに保たなきゃなぁ。』
そう思うけど出来ない。
…私、いっつも思うだけで何も出来て無いじゃん…。
テンションが更に下がる。
「そういえばユータ君と別れたの?」
部屋に戻るとお姉ちゃんがいきなり聞いてきた。
その手にはユータと撮ったプリクラが握られている。
「えっ?てか…別れてもう1年近いよ。知らなかったっけ?」
「聞いてないよー。何で別れたの?」
「古い傷をえぐらないでよ。」
「って事は振られたんだ―。ユータ君に好きな子が出来たからでしょ?」
「違うよ。何でそう決めつけるのー?」
「今日ユータ君と知らない女の子が一緒に居るのを駅で見かけたの。」
「!?」
言葉が出なかった。
『ユータの事だし、大学でもう彼女居るんじゃない?』
ナチの言葉が鮮明に蘇る。
「手、繋いでたし新しい彼女だろうねー。ま、あの顔ならモテるだろうし当たり前か。」
「そーなんだ…。」
「あれっ?もしかしてショック受けてるー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
「知らなかったから驚いただけ!ユータなんてもうどーでも良いし。」
まだ引きずってるなんて言えない。
「サキも新しい彼氏作りなよー。」
「ちょっと、何で居ないって決めつけるの?」
ま、居ないけどね。なんとなくムカつく…。
「そんな事言うならこの写真しまいなさい。このぬいぐるみも。」
姉の目線の先にはツーショットの写真とディズニーに行った時貰ったミッキーのぬいぐるみがあった。
「おっしゃる通りです…。」
「この際だからこの部屋全て片付けちゃいなよ。こんな部屋じゃ新しい恋もやって来ないわよ。」
お姉ちゃんの名言。。。
色んな意味で心に染みた…。
6時から始めた片付けはご飯前には終わる訳もなく、結局日付が替わる直前まで続いた。
部屋はだいぶキレイになった。
キレイにし過ぎたからか、ユータに関する物を片づけたからか、私はこの部屋に寂しさを覚えた。