800字で全てを語ることのできる感動のラブストーリー『美し過ぎる僕とキミとの恋物語(BL)』
僕がキミと出会ったのも、こんな雨の降る夕方だった。また、そのキミをこうして待っている。
しきりに雨が傘を打つ。部活を終えての帰り道、制服のシャツが汗ばむ肌にまとわりつく。
道端に咲く紫陽花も色あせてきた。もう夏は始まっているんだよね。
「裕紀~!」
濡れたアスファルトを踏む赤いスニーカーがこちらへ向かって来るのが見えた。
僕は汗でズレたメガネをかけ直し、視界を遮る傘を上げて前を見る。この長い脚とセンスの良い服装は西園寺毅羅。僕と同じ千光高校三年生…僕がこの世で一番好きなヤツ。
「悪ぃ悪ぃ。待ったか?家を出るのが遅くなっちまって」
「ううん。大丈夫、今来たとこ」
「そっか。でも、裕紀って遠くから見ると仔犬みたいだな」
毅羅は背の低い僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。大きくて温かい手。優しくていつも安心できるんだ。
でも、キミには僕の『好き』が伝わってないけど…。
「やめてよ!同い年なのにガキ扱いすんなよ」
僕は嬉しさを隠して反発して見せる。なかなかキミの前で素直になんかなれないから。
「何だよ。そんなに目くじらたてるなって。奢ってやっから」
僕は拗ねた顔つきで毅羅を見上げる。毅羅の黒い傘と僕の白い傘とが触れ合って雨粒がきらめいてはじける。
ふいに、お互いの視線が絡み合った。
「裕紀…」
いきなり毅羅が僕の両肩をつかんだ。二つの傘が同時にアスファルトに舞い落ちた。
「い、いきなり何だよ…」
僕は、どぎまぎして毅羅の顔を見た。と、同時に毅羅の唇が僕の唇を塞いだ。
甘い甘い初キッス…永遠の一瞬。
僕の心臓は壊れてしまいそうに激しいリズムを刻む。
僕と毅羅は雨の降りしきる中、無言で抱き合った。
「ママ、あのお兄ちゃんたち、二人そろって凄くブサイクだね!ボク、吐きそうだよ!」
「シッ!見ちゃいけません!」
ボーイズラブだからって、二人が美形だとは限らないんだよ。もしかして、僕たちを美形だと思ってた…?
うっしー様より
《完》
ツッコミ、騙されたという怒り、何でもぶつけてください!ばっちこーい!