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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 嘆きの魔物
9/23

第8話 女王に逆らえない昆虫

※シリカ視点です。

 フィルドは私の制止も聞かず、コマンダー・ライカの硬化した腹部に、真っ赤に炎に包まれた拳を叩き込む。コマンダー・ライカは吹っ飛ばされ、壁に背を叩きつける。壁にヒビが入る。


「痛いよおおぉッ! やめてぇええッ!」


 泣き叫び痛みを訴えるコマンダー・ライカ。だが、彼女は素早く起き上がると、私たちに向かって来る。再びフィルドは彼女の身体を殴りつけようとする。

 だが、今度は上手くいかなかった。彼女の姿が消える。次の瞬間には、私のすぐ目の前に現れていた。瞬間移動ッ……!?


「シリカさん助けてくださいぃいッ!」

「ライカっ!?」


 私は素早く後ろに下がる。ライカの爪が床に振り降ろされ、半分近くもめり込む。どんな力で降り下ろしたんだ……!?


「痛い痛い痛いィッ! もう許してぇッ!」

「そんなに痛いなら楽にしてやる!」


 コマンダー・ライカのすぐ背後に迫ったフィルドが、クロス状に斬撃を飛ばす。それは彼女の背を斬り、血を流させる。ライカは苦痛に顔を歪め、涙を床に落とす。

 だが、フィルドはお構いなしに次々と斬撃の嵐を彼女の背に浴びせる。その度にライカは激痛に悲鳴を上げ、助けと許しを叫ぶ。


「トドメだ!」


 飛び上がったフィルドが、ライカの頭を狙ってより大きな斬撃を飛ばす。そのとき、彼女は床に刺さっていた爪を引き抜くと、すぐ後ろに迫っていた斬撃を爪で弾く。弾き返され、天井に当たった斬撃は、大きな亀裂を走らせる。


「ほう、少しはやるようだな」

「痛い、痛いッ、助け、て……」


 私に背を向けたライカ。深く大きい斬り傷が無数に付けられ、おびただしい量の鮮血が流れ出ていた。まるで酷い拷問をされたみたいだ。


[全てのサイネンネット・モンスターは“サイエンネット女王種ウィルス”に逆らえない。女王に逆らえない昆虫と同じようにな]


 支配種ウィルス? 女王? ……そういえば、バトル=オーディンは死ぬときに「女王パトラー」と口にした。なにか関係があるんだろうか?


「やめてぇえッ!」


 コマンダー・ライカが再び悲鳴を上げる。泣き叫ぶ彼女の腹部に、フィルドの右拳が埋まっていた。赤黒い血が流れ出ている。

 フィルドは勢いよく腕を引き抜く。彼女の手に握られた柔らかそうなモノは腹の内容物だろうか? 血が滴り落ちていく。パトラーの師は、それを冷たい瞳で見ていた。


「もうっ、もう殺してッ! 一思いに殺してくださいッ!!」


 そう叫ぶコマンダー・ライカは血を垂れ流しながら、再びフィルドに向かって走り出す。肥大化した爪を振り上げる。


[女王の命令は絶対。全てが女王に従う。私は“パトラーと一緒に”世界を作り変える。ウィルスによる最高の統治機構が生まれる]

「…………!? パトラーはまだ生きて――」

「痛いいぃいッ!!」


 私ははっとフィルドの方に視線を向ける。彼女の強烈な斬撃を受けたライカの巨体が、私の方に向かって弾き飛ばされてきていた。


「しまった! シリカ避けろ!」


 我に返ったフィルドが叫ぶ。だが、時すでに遅し。コマンダー・ライカの硬化した巨体を私は正面から受け、彼女と一緒に壁に叩き付けられる。私の身体に激痛が走り、壁にヒビが入る。普通の人間なら、死んでいるだろう。

 私は咳き込みながら、ゆっくりと立ち上がる。だが、その後ろで、コマンダー・ライカも起き上がる。爪を振り上げる。


「シ、リカさんっ、私を、殺し――! お願いッ……」


 ライカは消えるような声で言うと、がっくりと意識を失う。だが、身体だけは倒れず、まだ動いていた。そして、次の瞬間、ライカは再び顔を上げる。そこにあったのは、さっきまでの泣き顔じゃない。魂を失ったのか、無表情なモノとなっていた。

 私は剣を抜き取る。完全に怪物化したライカは、お腹に響くような奇声を発する。そんな彼女の首筋を狙って、私は流れるような動きで、斬り付ける。大量の血が首から迸る。奇声を上げながら倒れる巨体。怪物化したコマンダー・ライカの最期だった。


「すまない、シリカ。大丈夫か?」

「もう少し、冷静でいてくれるとありがたいな」


 私は剣に付いた血を振り払いながら言う。


[女王に逆らえる世界も、いずれ終わりを迎える。全て女王の意のままになる世界が構築される]


 アレイシアが再び話し始める。近くには監視カメラもある。恐らく、コマンダー・ライカの死も確認しただろう。


「女王はアレイシア、お前か?」

[ハハハハ、自分で確かめるんだな]


 ……教えてはくれないか。だが、アレイシアかパトラーのどちらかが女王だろう。

 そのとき、どこからかグールの鳴き声が上がる。それも1つや2つじゃない。心を震わせるおぞましい声だ。この施設にいたクローン兵は、もう誰も生き残っていないだろう。まさに、女王の支配する巣だな。


「フィルド、行こう」

「……ああ」


 フィルドは俯き加減で返事をする。私たちはコマンダー・ライカの死体を背に、再び廊下を進んでいく。

 もし、女王がパトラーだったとき、フィルドはどうする? 彼女は戦えるのか? それとも、“女王の統治”を受け入れるのだろうか? もしそうなったら、私は――















































































 ――私たちは気が付かなかった。


 私たちが去った後、死んだハズのコマンダー・ライカが、再び動き出したことに――。

  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 02:21

 ◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。


◆2/17 23:34

 ◇フィルドとシリカが怪物化したコマンダー・ライカと出会う

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