第7話 新しい世界の住人
※フィルド視点です。
――EF2015.02.17 23:34 【ルイン本部 廊下】
私は目の前に迫ってくるグールに手をかざし、その身体を超能力で斬り裂く。グールは上半身と下半身で真っ二つになり、血を撒き散らしながら倒れる。
「軍用兵器も魔物もキリがないな」
シリカがハンドガンでバトル=アルファを撃ち壊しながら言う。
私たちはバトル=オーディンを破壊した後も、ずっと戦い続けていた。出てくるのは相変わらず軍用兵器とグールばかり。パトラーを見つけられていなかった。
この施設で何があったのか? なぜグールばかりになっているのか? パトラーはどこに監禁されているのか? 何も分からなかった。
「フィルド、ここはクリスター政府首都に戻り、兵団を率いてきた方がいいんじゃないか?」
「…………」
私はバトル=メシェディを斬り壊す。
クリスター政府の兵団を動かせば、すぐに連合政府に見つかってしまう。パトラーを人質に戦われる。そうなれば、パトラーを危険に晒すことになる。だから、兵団を連れて来ず、たった2人で乗り込んだ。奇襲したんだ。
だが、状況は予想外のものだった。まるで暴走した軍用兵器軍とグールの群れ。作戦もなにもない。誰も連合政府軍の指揮を執ってない。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
こんな状況で私の弟子は大丈夫なのか? コマンダー・ライカはなにを考えているんだ? パトフォーはこの状況をどう見ている?
シリカの言うように、一度出直すのも1つの手だ。兵団を引き連れてきた方がいいかも知れない。だが、そんな時間はない。パトラーの身が心配だ。
[……クリスター政府の者たちだな]
「…………!?」
私たちが小さな廊下でグールや軍用兵器と戦っていたとき、不意にスピーカーから女性の声が流れる。……クローンの声か?
[“世界の生まれ変わり”を前に、よく来てくれた]
「世界の生まれ変わりだと?」
[そう…… “彼女”を深く傷付けた世界に裁きを下すんだ。世界は新しく生まれ変わる。女王によって統制される素晴らしい世界に……]
何を言っているんだ? この声の主はコマンダー・ライカなのか? いや、あの小心クローンがこんな大それたことを言えるハズがない。
「……お前、アレイシアだな?」
シリカが監視カメラを睨みながら言う。アレイシア……? 確か連合政府将軍の1人だったハズだが、すでに失脚したと聞いている。
[シリカ、かつて“連合政府のクローン兵だったお前”が、クリスター政府の為に戦っていることは知っている。私は本当に嬉しかった。……だが、クリスター政府はパトラーを裏切った]
「何を言っているんだ! クリスター政府はパトラーを――」
[裏切った。クリスター政府はパトラーを利用するだけ利用し、最後は見捨てた。お前も知っているハズだ]
「…………!? アレイシア、お前本気で言っているのか!?」
……話が通じる相手じゃなさそうだな。アレイシアの言葉に狂気を感じる。パトラーの味方だが、気を付けた方がよさそうだ。
3ヶ月前までパトラーはクリスター政府に所属していたが、今はもう離脱している。自分から離脱した。それは意見の相違からだった。決してクリスター政府はパトラーを裏切ったワケじゃないし、パトラーもそれは分かっているハズだ。
[クリスター政府の連中も、連合政府も、国際政府も全て滅ぼしてやる。サイエンネット・ウィルスで世界を作り変えてやる!]
サイエンネット・ウィルスで世界を作り返る? どういう意味だ? まさか、サイエンネット・ウィルスを世界中にばら撒く気か?
「…………。アレイシア、パトラーはどうなった?」
「…………!」
シリカの言葉に、私は胸に鋭い痛みが走る。答えを聞きたくない。イヤだ、パトラーはまだ無事のハズだ! ――だが、スピーカーから流れた言葉は残酷なものだった。
[実験台にされ、彼女は壊れてしまった。もう直せない。あの優しい彼女の心は死んでしまった]
「……そういうことか」
私の身体から血の気が引いていく。拳を握りしめ、下唇を噛み締める。熱いモノが頬を伝っていく。悔しさと悲しさで身体が震える。……パトラーが壊れてしまった。間に合わなかった。
「……壊れたのは、アレイシア、お前もだ。マトモな判断を下せなくなっているんだな」
[…………。シリカ、フィルド、新しい世界は私たちが作る。全てが女王に跪く世界だ。……見せてやる、新世界の住人を!]
「…………?」
シリカとアレイシアの言葉がもはや耳に入ってこない。私はその場に座り込み、泣きじゃくっていた。絶望だけが心に染み込んでいく。……それと同時に、激しい憎しみが沸き起こっていた。
そのとき、少し先にある廊下の角から、何かが姿を現す。大きな身体を持つ美しい青色のグールだ。その両腕は大きく肥大化し、巨大な白い爪が姿を現している。
「…………!?」
[この怪物は、“元”コマンダー・ライカだ]
私は泣きながら顔を上げる。……泣いているのは、魔物化したコマンダー・ライカも同じだった。どうなっている?
「ぅ、あっ……! 助け、テ……!」
[女王に魔物は逆らえない。コマンダー・ライカ、2人を殺せ]
「いやだぁあぁっ! 死にたくないよぉおッ! もう許してえぇッ!!」
泣き叫ぶコマンダー・ライカ。だが、その言葉と裏腹に、彼女の身体は私たちに向かって走ってくる。……私は何の憐れみも感じなかった。殺してやる。パトラーを傷つけた者を!
私はすっと立ち上がると、拳に炎を纏い、走ってくるコマンダー・ライカに向かっていく。何の躊躇もなかった。
「やめてえぇぇえッ! 戦いたくないよぉッ!」
「ハハハハハ! そうは言うが、身体は全く別の行動を取るんだな!」
「待てフィルド!」
殺してやる、コマンダー・ライカ! どうせ、お前はもう魔物だ! 魔物なら殺してもいいだろう!?
<<タイム・ライン>>
◆2/15 19:27
◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。
◇コマンダー・ドロップが殺害される。
◆2/17 01:17
◇パトラーとアレイシアが出会う。
◆2/17 02:21
◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。
◆2/17 20:47
◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。
◆2/17 23:34
◇フィルドとシリカが怪物化したコマンダー・ライカと出会う。




