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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 嘆きの魔物
8/23

第7話 新しい世界の住人

※フィルド視点です。

 ――EF2015.02.17 23:34 【ルイン本部 廊下】


 私は目の前に迫ってくるグールに手をかざし、その身体を超能力で斬り裂く。グールは上半身と下半身で真っ二つになり、血を撒き散らしながら倒れる。


「軍用兵器も魔物もキリがないな」


 シリカがハンドガンでバトル=アルファを撃ち壊しながら言う。

 私たちはバトル=オーディンを破壊した後も、ずっと戦い続けていた。出てくるのは相変わらず軍用兵器とグールばかり。パトラーを見つけられていなかった。

 この施設で何があったのか? なぜグールばかりになっているのか? パトラーはどこに監禁されているのか? 何も分からなかった。


「フィルド、ここはクリスター政府首都に戻り、兵団を率いてきた方がいいんじゃないか?」

「…………」


 私はバトル=メシェディを斬り壊す。

 クリスター政府の兵団を動かせば、すぐに連合政府に見つかってしまう。パトラーを人質に戦われる。そうなれば、パトラーを危険に晒すことになる。だから、兵団を連れて来ず、たった2人で乗り込んだ。奇襲したんだ。

 だが、状況は予想外のものだった。まるで暴走した軍用兵器軍とグールの群れ。作戦もなにもない。誰も連合政府軍の指揮を執ってない。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 こんな状況で私の弟子は大丈夫なのか? コマンダー・ライカはなにを考えているんだ? パトフォーはこの状況をどう見ている?

 シリカの言うように、一度出直すのも1つの手だ。兵団を引き連れてきた方がいいかも知れない。だが、そんな時間はない。パトラーの身が心配だ。


[……クリスター政府の者たちだな]

「…………!?」


 私たちが小さな廊下でグールや軍用兵器と戦っていたとき、不意にスピーカーから女性の声が流れる。……クローンの声か?


[“世界の生まれ変わり”を前に、よく来てくれた]

「世界の生まれ変わりだと?」

[そう…… “彼女”を深く傷付けた世界に裁きを下すんだ。世界は新しく生まれ変わる。女王によって統制される素晴らしい世界に……]


 何を言っているんだ? この声の主はコマンダー・ライカなのか? いや、あの小心クローンがこんな大それたことを言えるハズがない。


「……お前、アレイシアだな?」


 シリカが監視カメラを睨みながら言う。アレイシア……? 確か連合政府将軍の1人だったハズだが、すでに失脚したと聞いている。


[シリカ、かつて“連合政府のクローン兵だったお前”が、クリスター政府の為に戦っていることは知っている。私は本当に嬉しかった。……だが、クリスター政府はパトラーを裏切った]

「何を言っているんだ! クリスター政府はパトラーを――」

[裏切った。クリスター政府はパトラーを利用するだけ利用し、最後は見捨てた。お前も知っているハズだ]

「…………!? アレイシア、お前本気で言っているのか!?」


 ……話が通じる相手じゃなさそうだな。アレイシアの言葉に狂気を感じる。パトラーの味方だが、気を付けた方がよさそうだ。

 3ヶ月前までパトラーはクリスター政府に所属していたが、今はもう離脱している。自分から離脱した。それは意見の相違からだった。決してクリスター政府はパトラーを裏切ったワケじゃないし、パトラーもそれは分かっているハズだ。


[クリスター政府の連中も、連合政府も、国際政府も全て滅ぼしてやる。サイエンネット・ウィルスで世界を作り変えてやる!]


 サイエンネット・ウィルスで世界を作り返る? どういう意味だ? まさか、サイエンネット・ウィルスを世界中にばら撒く気か?


「…………。アレイシア、パトラーはどうなった?」

「…………!」


 シリカの言葉に、私は胸に鋭い痛みが走る。答えを聞きたくない。イヤだ、パトラーはまだ無事のハズだ! ――だが、スピーカーから流れた言葉は残酷なものだった。


[実験台にされ、彼女は壊れてしまった。もう直せない。あの優しい彼女の心は死んでしまった]

「……そういうことか」


 私の身体から血の気が引いていく。拳を握りしめ、下唇を噛み締める。熱いモノが頬を伝っていく。悔しさと悲しさで身体が震える。……パトラーが壊れてしまった。間に合わなかった。


「……壊れたのは、アレイシア、お前もだ。マトモな判断を下せなくなっているんだな」

[…………。シリカ、フィルド、新しい世界は私たちが作る。全てが女王に跪く世界だ。……見せてやる、新世界の住人を!]

「…………?」


 シリカとアレイシアの言葉がもはや耳に入ってこない。私はその場に座り込み、泣きじゃくっていた。絶望だけが心に染み込んでいく。……それと同時に、激しい憎しみが沸き起こっていた。

 そのとき、少し先にある廊下の角から、何かが姿を現す。大きな身体を持つ美しい青色のグールだ。その両腕は大きく肥大化し、巨大な白い爪が姿を現している。


「…………!?」

[この怪物は、“元”コマンダー・ライカだ]


 私は泣きながら顔を上げる。……泣いているのは、魔物化したコマンダー・ライカも同じだった。どうなっている?


「ぅ、あっ……! 助け、テ……!」

[女王に魔物は逆らえない。コマンダー・ライカ、2人を殺せ]

「いやだぁあぁっ! 死にたくないよぉおッ! もう許してえぇッ!!」


 泣き叫ぶコマンダー・ライカ。だが、その言葉と裏腹に、彼女の身体は私たちに向かって走ってくる。……私は何の憐れみも感じなかった。殺してやる。パトラーを傷つけた者を!

 私はすっと立ち上がると、拳に炎を纏い、走ってくるコマンダー・ライカに向かっていく。何の躊躇もなかった。


「やめてえぇぇえッ! 戦いたくないよぉッ!」

「ハハハハハ! そうは言うが、身体は全く別の行動を取るんだな!」

「待てフィルド!」


 殺してやる、コマンダー・ライカ! どうせ、お前はもう魔物だ! 魔物なら殺してもいいだろう!?

  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 02:21

 ◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。


◆2/17 23:34

 ◇フィルドとシリカが怪物化したコマンダー・ライカと出会う。

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