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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 狂気の反撃
7/23

第6話 コマンダー・ライカの悲劇

※コマンダー・ライカ視点です。

 ――EF2015.02.17 02:21 【ルイン本部要塞内 最上級医療室】


 本当に大変なことになった……。

 パトラー=オイジュスが目覚め、パトフォーを殴り倒し、施設中にサイエンネット・ウィルスが蔓延してしまった。もう、この施設はダメだ。早く逃げないと……。

 私は自分の右腕から注射器の針を抜き、空になった注射器を机にそっと置く。ここは最上級医療室。連合政府上層部の人間だけが使える部屋だ。


「コマンダー・ライカ将軍、ワクチン接種は終わりましたか?」

「お、おうっ……」


 私は部下のクローン兵の声に、生返事をする。もう、注射器には何の液体も入っていない。これはサイエンネット・ウィルス用のワクチンだ。これを打つことで、グールにならないで済む(これで本当に大丈夫なのかっ!?)。


「急ぎましょう。もう連合政府は終わりです。サイエンネット・ウィルスさえ持っていけば、ネオ・連合政府も閣下を受け入れてくれるでしょう」

「分かってるっ! うるさいな、君はっ!」

「す、すいません……」


 ワクチンが効かず、結局グールになってしまうんじゃないか? 連合政府から分離・独立した組織――ネオ・連合政府は、私を受け入れてくれないんじゃないか? そんな恐怖が私を支配していた。

 私はサイエンネット・ウィルスを保管したケースを手に取り、イスから立ち上がる。早くこんなところから脱出して、ネオ・連合政府へ向かわないと……。


「パトラーはなんで目覚めたんだ……。しかも、その直後のサイバー攻撃はなんだったんだ……」


 私は愚痴を吐きながら、薄暗い廊下を歩いていく。

 パトラーの目覚め自体が予想外だ。しかも、謎のサイバー攻撃で、施設内の軍用兵器は全てストップ。バトル=オーディンも機能を停止させてしまった。ウィルスも蔓延した。

 やがて、小さな廊下から、広い廊下へと出る。そこには、大勢のクローン兵が待っていた。全員がワクチンを接種済みだ。たぶん、もう私たち以外には誰も生き残ってない。


「コマンダー・ライカ将軍、急いでください。パトラーに出くわすとやっかいです」

「分かってるっ……!」


 私は数十人ほどのクローン兵と合流すると、その場から歩き出す。もうパトフォーなんか知ったことじゃない。どうせ、アイツはもう死んだだろう(呆気ない男だ)。

 だが、少し歩いた所で、私は足を止める。……前から誰か来るぞ?


「ライカ将軍、あれは誰でしょう?」

「知らんっ。お前の友達じゃないのか?」


 よく見ると2人いる。……片方のヤツ、何か引きずってるぞ?


「…………! ライカ将軍っ、あの2人は!」

「なんだ、思い出したのか? ……で、誰なん―― …………ッ!?」


 私の身体から血の気が引いていく。……なんてことだ、あれは――


「アレがコマンダー・ライカだ……。パトラー、お前を傷つけた張本人」

「…………」


 何かを引きずる女――アレイシアが私を指差して言う。その真横にいるのは、パトラー=オイジュスだ! ヤバイっ……!

 アレイシアは引きずっていたモノを投げ捨てる。よく見ると、それは上級のクローン兵だ。すでに息はない。……コマンダー・コルボ! 私の部下じゃないか……!


「アレイシア、お前っ!」


 私は腰に装備していた剣を手に取ろうとする。だが、それよりも前にパトラーの方が早く動いた。彼女は一瞬で、私の後ろに回り込む。


「えっ……?」


 パトラーが青色に硬化した巨大な爪を振り上げ、側にいた数人のクローン兵をまとめて薙ぎ払う。血が飛び散る。

 私は呆然としてパトラーの後ろ姿を見ていた、右腕だけが変異し、グールの腕となっている。それ以外は人間と変わらない。サイエンネット・タイプ3=ウィルスのせいだろうか……?


「こ、殺せっ!」


 誰かが叫ぶ。数人のクローン兵がアサルトライフルの銃口をパトラーに向け、一斉に射撃する。けたたましい銃撃音。銃弾がパトラーを襲う。彼女の血が、床に飛び散る。

 だが、パトラーは怯むことすらせず、クローン兵たちに飛び掛っていく。次々と彼女たちの身体は斬り裂かれ、あっという間に命を奪われる。


「ひぃ、いやだぁっ! 助けてライカ将軍!」


 泣き叫ぶクローン兵を、パトラーは何の躊躇もなしに殺す。鋭い爪で、彼女の胴を貫く。彼女は苦痛に顔を歪ませながら絶命する。……部下たちは、ほとんど一瞬で皆殺しにされてしまった。

 私は剣を落とし、その場に座り込む。涙が頬を伝っていく。


「ライカ、もうお前の悪運も尽きたようだな」

「…………!」


 すぐ後ろからアレイシアが声をかけてくる。私が振り向くと同時に、彼女は私に飛び掛って押し倒す。サイエンネット・ウィルスを入れたケースが転がる。


「い、いやだぁ、助けてっ!」


 私は冷たい表情をしたアレイシアに命乞いする。怖くて仕方なかった。心の底から震えていた。殺されるっ……!

 私を押さえ込むアレイシアは、チラリと転がったケースに目をやる。サイネンネット・タイプ4=ウィルスの入ったケースだ。


「そ、そうだっ、サイエンネット・ウィルスを、クリスター政府に、持って行けばっ、きっと受け入れて、くれると思いますっ……!」


 クリスター政府は元々パトラーが所属していた組織だ。最近聞いたが、パトラーの師フィルドもシリカと一緒にクリスター政府にいるらしい。

 アレイシアは冷たい笑みを浮かべると、ケースを開ける。


「えっ、な、なにをっ?」


 中から青色の液体――サイエンネット・タイプ4=ウィルスが入った注射器を取り出す。そして、私の右腕のレザースーツを捲し上げる。


「タイプ3・ウィルスとそのワクチン。それが入った身体にタイプ4・ウィルスを流し込むと、どうなるんだ?」

「…………!!? な、なにをするんだっ!? いやだっ、いやだぁッ!」


 アレイシアは私の叫びを意に介さず、針を右腕に突き刺す。鋭い痛みが走る。


「ひぃ、助けて、助けてッ!!」

「これが、パトラーにしたことだ……」


 冷たい声で言うアレイシア。泣き叫ぶ私の身体にサイエンネット・タイプ4=ウィルスを流し込んでいく。その様子を、パトラーは無表情で眺めていた――。

  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 02:21

 ◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。



  <<登場人物>>


◆パトラー=オイジュス(人間女性)

 ◇フィルドの弟子。

 ◇実験台にされていた女性。元は普通の人間女性だったが、サイエンネット・タイプ4=ウィルスを投与され、超人的な能力を得た。

 ◇記憶を失っている。


◆アレイシア(クローン女性)

 ◇連合政府将軍。

 ◇パトラーを助けようとしたが失敗し、捕らえられていた。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・ライカ

 ◇連合政府将軍/第二代連合政府総統。

 ◇ルイン本部から脱出しようとしたが、アレイシアらに襲われ、サイエンネット・タイプ4=ウィルスを打たれる。

 ◇フィルドのクローン。

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