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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 狂気の反撃
6/23

第5話 赤色の再会

※第1話と第2話の間に位置する話です。

※パトラー視点です。

 ――EF2015.02.17 01:17 【ルイン本部要塞内 廊下】


 頭が痛い……。

 薄暗い小さな廊下。辺りは闇と静寂に包まれ、何者の気配もない。少し前まで鳴り響いていた警報によると、施設を襲ったサイバー攻撃で軍用兵器は機能を停止させ、クローン兵も多くがウィルスに感染して死んでいったらしい。……もうすぐ、グールとなって動き出す。早くここを離れないと……。


「ぅ……!」


 右腕に鋭い痛みが走る。私は左手で右腕を抑えて、その場に座り込んでしまう。なんだろう、“あの部屋”を出てから、何度も右腕に痛みが走る。それに、かなりの熱を持っているみたいだ。触れるとそれが分かる。いや、それだけじゃない。小刻みに痙攣している。それもずっと……。


 私は近くの扉をそっと開け、部屋の中へと入っていく。何かのオフィスだ。誰もいない。いや、クローン兵の死体が転がっている。みんな似たような姿をした女性。誰のクローンなんだろうか……。

 そのとき、再び強い頭痛が私を襲う。……赤茶色の髪の毛に美しい顔立ちをした女性。前にもどこかで、ずっと私の側に……私の側に?


 私は床に散乱した紙切れを一枚手に取る。よく分からない。何が書いてあるんだろうか? コマンダー・ライカ、バトル=オーディン、連合政府、国際政府……。

 紙に目を通した途端、また頭痛に襲われる。私は紙を投げ捨てる。頭が痛い。思い出せない。それに、思考が上手く回らない。頭に薄い膜が張っているみたいだ。


 そのとき、別の紙に目がいく。“パトラー=オイジュスへの実験成功”と書かれた紙を手に取る。なぜか、手が震える。


『完成したサイエンネット・タイプ4=ウィルスをパトラー=オイジュスに投与した結果、期待通りの結果が得られた。

 総員は敵国(“国際政府”及び“クリスター政府”に加え、“ネオ・連合政府”もこの定義に含める)からの攻撃に、これまで以上に注意せよ。

 ここまで来てウィルスを奪われてはならない。このウィルスを持っているのは、私たちだけである。これが世界を姿を一変させることの出来る、唯一の武器だ。

 連合政府第二代総統コマンダー・ライカ』


 私はなぜか崩れるようにして座り込む。目から涙が溢れ出る。なんで……? ワケも分からずに、その場に蹲り、声を殺して泣き出してしまう。

 記憶が抜け落ちている。書いてあることの半分も理解できない。ただ、助けて欲しい。そんな想いが心に広がっていく。……誰に?

 私はさっきの紙にもう一度、目をやる。……クリスター政府。その名前にやたら惹かれる。なぜかは分からない。


「パトラー=オイジュス。クリスター政府に裏切られ、連合政府によって実験台にされた悲劇の女性」

「…………!?」


 いきなり部屋に響いた女性の声。私は素早く後ろを振り返る。出入り口に誰か立っていた。黒い上着を1枚だけ羽織った半裸の女性。

 私は半ば反射的に彼女に向かって飛び掛る。宙を舞いながら、右腕を振る。真っ赤な炎の弾が飛んでいく。半裸の女性も素早く動き、部屋に飛び込む。炎の弾を避ける。

 憎い、殺したい、許さない……! なぜか、そんな想いが私の心を染めていく。今までも、この想いに駆られて、目に付いたクローン兵たちを皆殺しにしてきた。


「サイネンネットの力か……! さすがだ、パトラー」

「…………ッ!」


 パトラーという単語が頭を貫く。私はその場で動きを止めてしまう。


「自分の名前さえも奪われたのか、ひどいことするんだな……」


 半裸の女性は哀れむような声で言う。私はそっと後ろを振り返る。そのとき、右腕が激しく痙攣し、再び激しく痛む。


「うッ、あぁあッ!!」

「パトラーっ!? どうした!?」


 あまりの痛みに、私はその場に倒れのた打ち回る。驚いた顔をした半裸の女性が駆け寄ってくる。……その身体は傷だらけだった。


「よ、寄るんじゃないっ、連合政府! …………!?」


 連合政府? 私は何を言っているんだ……!?

 半裸の女性は私の言葉に反し、側に寄って来る。腰を下げ、片膝を着きながら私の右手に触れる。手が少し震えていた。


「これは、サイエンネット・ウィルスが暴走しているのか……? 連合政府め、粗悪品をパトラーに……!」

「お、お前はっ、連合政府じゃ、ないの、かっ?」


 私は激しい痛みに耐えながら、声をなんとか上げる。痛みで額に汗が滲む。


「私は連合政府に反逆し、捕らえられた。地下の牢獄でずっと拷問されていた。……お前を助けようとして、失敗したんだ」

「…………!?」


 彼女はそう言いながら、私を抱きしめる。なぜか、この温もりに覚えがあった。昔もどこかで同じように、こうやって抱きしめられた……?


「一緒に敵を倒そう。もう、二度とお前を酷い目に合わせない。私が守るから、ずっと側にいるから、一緒に戦ってほしい。……お前を傷つけた者を、一緒に滅ぼそう」

「わ、私を傷つけた……?」


 彼女は私を強く抱きしめながら、無言で頷く。

 右腕はまだ痛い。しかも、いつの間にかおびただしい量の血が流れている。戦う前に、これを治療した方がいいような……。


「お前の、名前はっ……?」

「――アレイシア。お前の唯一の味方だ」

  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。



  <<登場人物>>


◆パトラー=オイジュス(人間女性)

 ◇フィルドの弟子。

 ◇実験台にされていた女性。元は普通の人間女性だったが、サイエンネット・タイプ4=ウィルスを投与され、超人的な能力を得た。

 ◇記憶を失っている。


◆アレイシア(クローン女性)

 ◇連合政府将軍。

 ◇パトラーを助けようとしたが失敗し、捕らえられていた。

 ◇フィルドのクローン。

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