第3話 グールの出現
※フィルド視点です。
――EF2015.02.17 21:13 【ルイン本部要塞内 第3エリア メイン・ストリート】
建物の中に入っても、思った通りだった。中は機械兵士で埋め尽くされている。私とフィルドでもう何千体と葬ったことか。それでも、後から次々と出てくる。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
ナイフを持ったバトル=メシェディが、私に斬りかかってくる。フィルドがそのバトル=メシェディを斬撃で首を斬る。私は別方向にいたバトル=アルファとバトル=ベータの集団に向かって火炎弾を飛ばす。爆炎と共に、数体まとめて焼き壊される。
「はぁ、はぁ……」
私は息をやや乱しながら、群がってくるバトル=アルファやバトル=ベータを斬り倒していく。本当に数が多いな……。
赤茶色の髪の毛を振り乱しながら、フィルドも剣を降り、魔法弾を飛ばしている。彼女の電撃弾で、バトル=ベータが機能を停止させる。火花と煙が出ている。
……フィルドは強い。彼女は“私たちクローンのベースとなった女性”だ。昔、パトフォーという男によって、サイエンネット・タイプ1=ウィルスを投与され、魔法を操れるようになったらしい。私たちは、そんな彼女から作り出された。
[攻撃セヨ!]
「ぼーっとするな、シリカ!」
「分かってる!」
私は目の前に走り寄ってくるバトル=メシェディの胴体を斬り壊す。
ここの施設長官コマンダー・ライカや副長官コマンダー・ドロップも彼女のクローンだ。まだ姿を見かけてないが、ここにいるクローン兵たちも、みんな彼女のクローンだ。
人間を進化させる人工のウィルス。それがサイエンネット=ウィルス。パトフォーが切望する夢のウィルス。今はどこまで完成したのだろうか……?
「…………?」
私とフィルドはメイン・ストリートから、狭い廊下へと移動する。電気はついておらず、廊下に灯る光は赤色の非常灯だけ。そこで、私たちはおかしなものを見つけた。
「…………」
黒いレザースーツを着た女性――クローン兵の死体が転がっている。すでに死んでいる。乾いて赤茶色になった血が、辺りに飛び散っている。廊下の壁にもべったりと付着している。
これをやったのは、私たちじゃない。私たちはまだ一度もここに来ていない。……なら、誰が彼女を殺したんだ?
私とフィルドは近くの扉をそっと開ける。部屋の奥には、液晶画面の割れた大きな監視モニターがあった。……血の臭いがする。
フィルドは手に炎を宿して、明かり代わりにする。浮かび上がった光景は酷いものだった。殺されたクローン兵の死体がいくつも転がっていた。並べられた作業用机の上には、大量の血が飛び散り、置かれたコンピューターや機材がメチャクチャになっていた。一部の机は倒れ、床に転がっている。
「……銃痕があるな」
フィルドが床に開いた小さな穴を触りながら言う。よく見れば、床や壁にいくつかの銃痕があった。振り返ると、廊下側の窓ガラスが大きく割れていた。……そこにも血が付いている。
なにか、戦闘があったんだな。でも、誰と誰が? いや、片方は分かる。この死んだクローン兵たちだ。では、彼女たちは誰と戦ったんだ?
そのとき、入ってきた扉がゆっくりと開いていく。私とフィルドは素早く扉の方を振り返る。
「…………?」
入って来たのは人型をした……? なんだあれは?
異様にゴツゴツとした硬そうな皮膚。その色は黒に近い濃い青色。指が硬く長い爪に変異している。異様な姿をした怪物だ。
「な、なんだ、この生き物――」
「下がれ、シリカ! グールだ!」
「えっ?」
フィルドが叫んだのとほぼ同時に、グールとかいう生き物は腕を振る。その途端、真っ赤な炎の弾――火炎弾が飛んできた。
「う、うわっ!」
私はそこから素早く横に飛ぶ。だが、足を机にぶつけ、コンピューターを押し倒しながら、床に倒れ込む。あの魔物、魔法を使えるのか!?
そのとき、誰かに右脚を掴まれる。ぎょっとして、脚を掴んできた者へ目をやる。……そこにいたのは、入ってきた魔物と同じタイプの魔物――グールだった! 赤く鋭い爪が、しっかりと私の脚を握っている。
「は、離せっ!」
私は驚きのあまり、強力な斬撃を飛ばす。斬撃はグールの頭を斬り裂き、机やコンピューターをも斬り壊す。最後には壁に大きな斬り込みを入れてしまう。大きな音が鳴り響く。
「シリカ、落ち着け! 強い敵じゃない!」
フィルドは入ってきたグールの首を剣で斬り飛ばす。グールは真っ赤な血をほとばしらせながら、床に倒れ込む。
私は荒くなった息を整えながら、ゆっくりと立ち上がる。だが、そのとき、後ろで物音が上がる。コンピューターか何かが倒れる音と、何かの呻き声。私はそっと振り返る。そこにいたのは、3体ものグールだった。
「さ、さっきまでいなかったハズじゃ……」
私はそう呟きながら、フィルドの側に寄っていく。だが、そのとき、側に転がっていたクローン兵の死体が起き上がる。……いつの間にか、グールへと変わっていた。
「出るぞ!」
フィルドが私の手首を掴み、廊下へと飛び出す。……廊下にあったクローン兵の死体がなくなっている。さっき入って来たのは……。
私たちは薄暗い廊下を走って行く。辺りの部屋から呻き声が上がっていた。窓ガラスや扉から、次々とグールが出てくる。
この辺りはオフィス・ルームが数多くあるエリアだ。あのグールたちは、きっと元々クローン兵だったのだろう。なぜ、彼女たちはあんな魔物に変わってしまったんだ……?
私たちはグールの呻き声を背に、再び広いメイン・ストリートへと出る。だが、そこにいたのは、無数のバトル=アルファやバトル=ベータ。そして、グールたちだった――。
<<タイム・ライン>>
◆2/15 19:27
◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。
◇コマンダー・ドロップが殺害される。
◆2/17 20:47
◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。
<<登場人物>>
◆フィルド(人間女性)
◇パトラーの師。
◇パトラーを助けるために、シリカと共にルイン本部へと乗り込む。
◆シリカ(クローン女性)
◇フィルドの仲間。魔法・超能力を操る。
◇フィルドのクローン。
◆パトラー=オイジュス(人間女性)
◇フィルドの弟子。
◇実験台にされていた女性。元は普通の人間女性だったが、サイエンネット・タイプ4=ウィルスを投与され、超人的な能力を得た。




