第2話 師の覚悟
※フィルド視点です。
――EF2015.02.17 20:47 【ルイン本部付近 上空】
激しく雪の降るルイン島。裸の山々は真っ白に染まり、雪の彫刻と化していた。その間を1機の戦闘機が飛んでいく。デルタ型をした3人乗りの小型戦闘機だが、実際に乗っているのは2人。
「そろそろだな」
後部座席に乗っている女性が声をかける。赤茶色の髪の毛に同じ色の瞳をした女性――シリカ。私の仲間だ。
「私の弟子がこのルイン本部に……」
私は戦闘機を操縦しながら呟く。私の弟子――パトラーが姿を消して3ヶ月近くになる。私たちは全力で彼女のことを探してきた。そこで得た手がかりは、“ルイン本部に新しい実験台が運び込まれた”という情報だけ。ただ、その時期はパトラーが消えた時期とほぼ同じらしい。
しかも、その情報はどこから流れたのか、よく分からない。いつの間にか、世界のウワサになっていた。いつ、だれが流したのか、それすら分からない。
でも、それ以外に手がかりとなる情報は皆無だった。だから、信じて行くしかない。……これでアテが外れたら、また振り出しに戻る。
「降りるぞ」
「了解」
私の操る小型戦闘機は、工場のような大型の施設――ルイン本部のエアポートへと降りていく。ここにパトラーがいるというという情報は、ただのウワサでしかない。確証なんか、どこにもない。それでも、私は――。
私とシリカは戦闘機から飛び降り、外へと出る。冷たい外気が襲ってくる。外は吹雪だ。だが、そんなものは大きな脅威ではない。本当の脅威は……。
「さっそく来たな」
私は腰の剣を抜く。奥から、細身の人間型機械兵士たちが走ってくる。この施設を守る軍用兵器――バトル=アルファだ。アサルトライフルを使う戦闘兵器。この施設を所有・管理する“連合政府”の兵士だ。
[攻撃セヨ!]
私はシールドを張りながら、自らバトル=アルファの集団に突っ込んでいく。剣を握り締め、その身体を斬り壊していく。この剣――デュランダルは特殊な剣だ。刃に魔法を纏い、金属すら斬ることが出来る。
[破壊セヨ!]
「邪魔するな!」
シリカは腕を大きく振り、炎を纏った魔法弾――火炎弾を飛ばす。バトル=アルファの胴体に着弾すると同時に、空気を震わせる爆発が起こり、火花が散る。周囲のバトル=アルファたちも倒れる。
私も彼女も魔法を操ることが出来る。火炎弾だけじゃなく、電撃弾や衝撃弾などの攻撃魔法に加え、シールドや回復弾などのサポート魔法をも扱える。普通の人間には出来ない。
「フィルド!」
シリカが私の名を叫ぶ。すぐ後ろにバトル=アルファの上位種バトル=メシェディが迫っていた。バトル=メシェディは手に持ったアサルトライフルで、私の頭を正確に狙い撃ってくる。私は素早く宙に飛び、銃撃をかわす。
空中でバトル=メシェディの方に手の平を向ける。メシェディの首が斬れ飛び、その身体が崩れるようにして倒れる。……高位魔法の超能力だ。斬撃を飛ばし、相手を触れずに斬る。
[攻撃セヨ!]
エアポートから陸橋へ。だが、道を塞ぐ敵は多い。陸橋上にも数多くの軍用兵器が待ち構えていた。私とシリカは魔法で敵を倒していく。
「シリカ、空から来てるぞ!」
暗い夜空から向かって来る小型戦闘機――バトル=スカイだ。機体左右のマシンガンで攻撃してくるタイプの自律兵器。
シリカは剣を握り、陸橋から空中に飛び出す。銃撃してくるバトル=スカイ3機を真っ二つに斬り捨てる。2機は陸橋の下へ。1機は陸橋へと降ってくる。私は素早く飛び、降ってきたバトル=スカイを避ける。バトル=スカイはバトル=アルファの群れに突っ込んで爆散する。
「ザコが減ったな」
私は僅かに残っていたバトル=アルファを斬り倒しながら、先に進んでいく。後ろからシリカが続く。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
四足歩行をする半人間型軍用兵器――バトル=ベータが出てくる。両腕がマシンガンになっている軍用兵器だ。私は銃撃を避けながら、素早くバトル=ベータの懐に潜り込む。そして、剣で胴体を斬り壊す。上半身と下半身で真っ二つになったバトル=ベータは、雪の降り積もった地面に倒れる。
私は流れるような動きで、側にいた他のバトル=ベータやバトル=アルファを斬り倒す。シリカも、魔法と斬撃で機械兵士を破壊していく。
[攻撃セヨ!]
「キリがないな……」
私は腕を振り、大型の火炎弾を数発飛ばす。バトル=アルファやバトル=ベータを中心とした軍用兵器の軍勢に撃ち込まれた大型火炎弾は、地面を震わせるほどの爆発を起こし、真っ赤な炎を上げる。火の粉がこっちにまで飛んでくる。今ので20体ぐらいは倒れただろうか?
「フィルド、あそこから中へ入ろう!」
シリカがバトル=メシェディの頭を斬りながら言う。やや離れたところに、ルイン本部要塞内へと通じる大きな鋼の扉がある。
「ああ、分かった!」
私は襲い掛かって来ていたバトル=メシェディを蹴り壊しながら返事を返す。後ろに白色をした魔法弾――衝撃弾を飛ばしながら走る。爆音。強い衝撃波で、何十体もの機械兵士が吹き飛ばされる。残骸は私の側にも降ってくる。
ここルイン本部は、連合政府が所有する2つしかない本部要塞の1つ。警備は厳重だろう。まだまだ強い敵もいるハズだ。油断は出来ない。最悪、死ぬかも知れない。だが、私は進んでいくことに、なんの躊躇もなかった。パトラーを助けるためなら、私は死んでもいい。本気でそう思っていた――。
<<タイム・ライン>>
◆2/15 19:27
◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。
◇コマンダー・ドロップが殺害される。
◆2/17 20:47
◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。
<<登場人物>>
◆フィルド(人間女性)
◇パトラーの師。
◇パトラーを助けるために、シリカと共にルイン本部へと乗り込む。
◆シリカ(クローン女性)
◇フィルドの仲間。魔法・超能力を操る。
◇実は「とある女性」のクローン。
◆パトラー=オイジュス(人間女性)
◇フィルドの弟子。
◇実験台にされていた女性。元は普通の人間女性だったが、サイエンネット・タイプ4=ウィルスを投与され、超人的な能力を得た。
◇なぜか暴走状態にある。




