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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 最後の生還者
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第19話 コマンダー・ライカの復讐

※フィンブル視点です。

 飛行型グールに姿を変えたコマンダー・ライカは、私の操る小型戦闘機に向かって飛んでくる。私は素早く操縦席のコントロール・パネルに触れ、小型ミサイルを放つ。2発の小型ミサイルは一直線に飛んでいく。


「…………!」


 コマンダー・ライカは2つの小型ミサイルを軽く避け、私に向かって再び飛んでくる。私は彼女が再び動き出す前に、彼女の右側をすり抜け、小型戦闘機を進める。

 私が逃げたことに気が付いたコマンダー・ライカは、その後を追って来る。追いながら、電撃弾と火炎弾を飛ばしてくる。私は小型戦闘機にシールドを張り、攻撃を防ぐ。威力が強いせいか、2発喰らっただけでシールドは消えてしまう。


「クッ……!」


 マズイな。コマンダー・ライカの動きがこの小型戦闘機以上に早い。もうすぐ追いつかれる。私は後ろをチラリと振り返る。コマンダー・ライカがすぐ近くにまで迫って来ていた。

 だが、さっき飛ばした小型ミサイルもすぐ後ろに迫っていた。それにコマンダー・ライカは気が付いていない。


「……あなたも終わりだな」


 私は無表情で迫って来ていたコマンダー・ライカに対してニヤリと笑う。あの小型ミサイルは追尾型。敵を見失うかエネルギーが切れるまで追い続ける。

 2発の小型ミサイルがコマンダー・ライカの身体に直撃する。ミサイルがその身体に突き刺さり、爆発する。炎と共に引き裂かれた肉片が飛び散る。彼女の身体が炎と煙に包まれて落ちていく。


「やった! …………!」


 コマンダー・ライカの姿が白い雲に消えようとしたとき、突如としてその煙の塊は旋回し、再びこっちに飛んでくる。


「なッ……!?」


 煙が晴れ、コマンダー・ライカの姿が再び露わになる。青かった皮膚が焼き焦げたせいか、黒くなっていた。だが、変わったのはそれだけじゃない。腕が4本になり、翼も同じ数になっていた。落ちていく僅かな時間で、身体を変異させたらしい。


「どうやったら殺せるんだ……」


 私は震える声で呟きながら、小型戦闘機のコントロール・パネルに触れ、再びミサイルを飛ばそうとする。

 だが、その直前に、何者かがコマンダー・ライカに砲弾を撃ち込む。爆音が鳴り響き、再び彼女の身体は落ちていく。


[……コマンダー・フィンブル、だな?]

「あなたたちはクリスター政府か」


 上空に大きな飛空艇が現れ、日が遮られる。白に青いラインが入った飛空艇。――クリスター政府の中型飛空艇だ。その周辺には30機近い小型戦闘機が飛んでいた。

 私は2機の小型戦闘機に誘導され、中型飛空艇に向かって飛ぶ。そして、飛空艇中腹の小型航空機プラットホームへと入り、私は小型戦闘機を着陸させると、そこから降りる。


「すまない、助かった」


 私はプラットホームに降り立つと、出迎えたフィルド・クローン――ムース少将に礼を言う。だが、そのとき、何かがプラットホームに飛び込んでくる。


「ムース少しょっ――」


 クローン兵の悲鳴が上がる。それと同時に何かが引き裂かれ、倒れるような音まで。

 私は後ろを振り返る。そこには、身体のあちこちが燃えているコマンダー・ライカが荒い息をしながら立っていた。炎で翼が焼け落ちていく。4本の腕が再び戻っていき、それぞれの手から5本の長く鋭い爪が生える。


「フィンブル、あれは――」

「コマンダー・ライカ! サイエンネット・タイプ4=ウィルスでグール化したコマンダー・ライカだ!」


 私の声に、コマンダー・ライカがゆっくりと顔を上げていく。頬まで裂け、鋭い牙が並んだ口。赤い目に小さな黒い瞳。元の顔は失われていた。

 クリスター政府のクローン兵が一斉にアサルトライフルの銃口をコマンダー・ライカに向ける。ムースが合図すると共に、一斉に銃弾が放たれる。無数の銃弾は怪物の身体をハチの巣にしていく。

 だが、コマンダー・ライカはやや怯みつつも、私に向かって走ってくる。


「う、うわっ!」

「いやぁっ!」


 途中、走りながら、目にも止まらぬ速度で3人のクローン兵を爪で裂き殺す。真っ赤な血が飛び、鋼色の床に色を付ける。


「連合政府の最後のメンバーはしぶといようだ」


 ムースが私の前に立つ。素早く両腕に黒い破壊魔法――ラグナロク魔法を纏うと、彼女は自らコマンダー・ライカに向かっていく。


「ライカ、久しぶりだな」


 ムースは常人の二倍以上の大きさの身体を持つコマンダー・ライカの懐に転がり込むと、一瞬の動きで彼女の左胸に手を突っ込む。コマンダー・ライカの低い雄叫びが上がる。凶器となった4本の手が、ムースをバラバラにしようとする。

 だが、それよりも前にムースはそこから飛んで離れる。彼女は私の側に降り立つと、一塊の肉塊を投げ捨てる。


「……心臓を抉れば死ぬだろ」

「ム、ムース……!」


 私はさっきムースが投げ捨てた肉塊をチラリと見る。赤黒いあの塊はコマンダー・ライカの……。

 コマンダー・ライカは口から大量の血を吐きだす。ぽっかりと穴の開いた左胸からもおびただしい量の血が流れている。

 ムースが再び右腕にラグナロク魔法を纏う。それと一緒に炎も纏っていく。彼女は一飛びでコマンダー・ライカの前に着地すると、彼女がいる方向の『空間』を殴る。すると、その空間が歪んでいく。ムースの部下たちが慌ててコマンダー・ライカの側を離れていく。


「…………!」


 空間が引き裂かれ、この飛空艇が木端微塵になりそうなほどの爆発が起こる。それと共に、真っ赤な炎が上がり、爆発で引き裂かれていくコマンダー・ライカの身体を焼き尽くしていく。

 強力なシールドを張っていた私はその場に倒れ、一瞬、意識が飛びそうになる。私を乗せていた小型戦闘機が吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。


「ムース……!」


 やがて衝撃波が収まり、私はゆっくりと立ち上がる。クリスター政府のクローン兵たちも同じように立ち上がる。


「…………!」


 私とクリスター政府のクローン兵たちはムースに駆け寄る。彼女の腹部から大量の血が出ていた。赤色の液体は彼女の白い服を染めていく。


「ムース少将!?」

「ど、どうしたんですか!?」

「この傷は一体!?」


 私はチラリと木端微塵になり、炎によって焼き消されていくコマンダー・ライカの残がいに目をやる。1本の腕があった。そこには5本の大きな爪。

 恐らく、空間がはじけ飛ぶ直前、コマンダー・ライカは最後の力を振り絞って、どれかの腕でムースを一突きしたのだろう。


「フィ、フィンブルっ……」

「ムース……!?」


 血を口端から流しながら、ムースは私に声をかける。もはや瀕死だ。いくら生命力が強いクローンでも、もう助からない。


「サイエンネット・タイプ4=ウィルスを、必ずクラスタ閣下に、渡せっ――!」


 ムースは小さな声で私に言うと、がっくりと力を失う。息絶えたようだ。

 私は懐にしまっていた円柱状の大型試験管を手に取る。そこには、グールの腕に変異したパトラーの右腕が入っていた。これをクラスタに渡せば取引は成立し、私は保護される。そして、“私の夢”も叶えられるかも知れない。だが、渡せば……

 私は炎に消えていったコマンダー・ライカの死骸に目をやる。これを渡せば、あの怪物がまたこの世界に現れるかも知れない――。

  <<登場人物>>


◆ムース(クローン女性)

 ◇クリスター政府特殊軍第21兵団少将。

 ◇元々は「連合政府=バトル・ライン」に所属していたクローン。コマンダー・ライカとも面識がある。フィルド・クローンの中でも、相当に高い実力を持つ。

 ◇フィルドのクローン。



  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 02:21

 ◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。


◆2/17 23:34

 ◇フィルドとシリカが怪物化したコマンダー・ライカと出会う。


◆2/18 01:41

 ◇ヒライルーがルイン本部をサイバー攻撃で制圧する。


◆2/18 01:48

 ◇ビリオン=レナトゥスのクローン精鋭部隊が、連合政府最重要シールド・メモリ回収のため、ルイン本部に侵入する。


◆2/18 02:52

 ◇フィルドとパトラーが再会する。


◆2/18 03:01

 ◇ビリオン=レナトゥスのクローン精鋭部隊が連合政府最重要シールド・メモリを回収し、ルイン本部を脱出する。


◆2/18 03:19

 ◇パトラーの記憶が戻る。


◆2/18 04:41

 ◇フィルドらがルイン本部から脱出する。


◆2/18 05:12

 ◇パトフォーがルイン本部からの脱出を目指し始める。


◆2/18 05:13

 ◇コマンダー・フィンブルとクラスタが取引し、ルイン本部からの脱出を目指し始める。


◆2/18 05:41

 ◇パトフォーがルイン本部から脱出する。


◆2/18 05:59

 ◇コマンダー・フィンブルがルイン本部を脱出する。


◆2/18 06:00

 ◇ルイン本部が消滅する。


◆2/18 07:06

 ◇コマンダー・ライカが死亡する。


◆2/19 09:18

 ◇「ビリオン=レナトゥス」がサイエンネット・タイプ0=ウィルスとサイエンネット・タイプ5=ウィルスの開発を始める。

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