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ルイン・ラグナロク  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 最高の悪夢
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第11話 フィルドとパトラー

※フィルド視点です。

 無表情のまま、パトラーは私に向かって歩いてくる。彼女はアレイシアの言うまま、私と戦うつもりだ。


「パトラー、私だ! フィルドだ!」

「…………! フィ、ルド……?」

「気にするなパトラー! そこの女もただのクローンだ! コマンダー・ログ! お前を見捨てたクリスター政府の人間だ!」

「アレイシアお前ッ!」


 私はアレイシアを睨み付ける。私の視線に気が付いた彼女はニヤリと笑う。……あの女、私に対して個人的な恨みを抱いているな。だが、なんの恨みだ?


「ク、クリスター……?」


 パトラーは震える声でクリスター政府の名を口にする。記憶が戻りかけているのか? だが、彼女は頭を激しく横に振り、雑念を振り払うようにして、私に向かって走ってくる。鋭い長槍に変異した右腕を振り上げる。

 私は後ろに跳び、彼女の攻撃を避ける。だが、ちょっと遅れた。右頬に長槍の先端がかする。傷ができ、そこから真っ赤な血が頬を伝っていく。


「パトラーっ……!」


 私は地面に降り立つと、剣を抜き取る。彼女を傷つける気はないが、このままだと私が彼女に殺されかねない。

 パトラーはその場で長槍と化した右腕を振り上げ、勢いよく下ろす。そこから斬撃が発生し、それが飛んでくる。私は剣でそれを防ぐ。激しい衝撃が腕に伝わる。剣から金属音が上がる。斬撃は超能力の一種だ。そんなことまで出来るようになったのか……。


「パトラー、しばらく見ないうちに強くなったじゃないか」


 私の頬を涙が伝っていく。かつての弟子が立派になったからじゃない。……普通の人間に魔法や超能力は使えない。私のようにサイエンネット・ウィルスを身体に適合させないと使えない。


 13年前、私が16歳のときに、連合軍――連合政府の前身組織――によって、無理やりサイエンネット・タイプ1=ウィルスを身体に入れられ、偶然にも、完全にではないが、適合してしまった。

 それ以後、連合軍はサイエンネット・タイプ1=ウィルスにある程度適合した私のDNAをベースに、クローンを作るようになった。シリカやアレイシア、ライカも私をベースに作られたクローンだ。


 パトラーも実験台にされた。私と同じように、あの忌まわしい人工のウィルスを入れられ、人間じゃない存在に無理やり作り変えられた。私の弟子だったから、彼女が実験台にされたのか? 私の弟子だったから、人間じゃない存在に作り変えられてしまったのか? ――連合政府ッ……!


「すまない、パトラー……。お前が今こんなことに巻き込まれているのは私のせいだ。そんな右腕になってしまったのも、私のせいだな」

「…………!」


 シールド・スクリーンに映るヒライルーは、楽しそうな表情で私たちの戦いを見物している。大方、戦闘データも収集しているのだろう。

 今や連合政府は崩壊したも同然。だが、連合政府を引き継ぐ形で、ビリオン=レナトゥスとネオ・連合政府がいる。

 ネオ・連合政府は知らないが、ビリオン=レナトゥスは喉から手が出るほどサイエンネット・タイプ4=ウィルスを欲しがっているハズだ。私がパトラーに殺されれば、この兵士たちがパトラーを連れて行くだろう。そして、彼女を殺し、ウィルスだけを手に入れる。


「……ヒライルー、お前の思い通りにはさせない」


 私はパトラーに向かって行く。私が負ければ、パトラーは死に、ヒライルーの一人勝ちだ。ヒライルーの一人勝ちを防ぐためには、私が勝てばいい。だが、それはパトラーを殺すことになる。なら、道は1つしかない。

 パトラーは長槍状の右腕を十字に振り下ろす。十字状の斬撃が飛んでくる。私は剣でそれを弾き飛ばす。だが、勢いが強すぎた。私も剣も弾かれてしまう。剣は私の遥か後ろに音を立てて転がる。

 私は勢いよくパトラーに飛び込み、彼女を押し倒す。左手で彼女の長槍と化した右腕を地面に抑えつける。


「パトラー、私のことを忘れたのか!? 私はお前の師――フィルドだ! 5年前、オーロラ支部で一緒に帰ろうとした。覚えていないか? そのときにパトフォーが私とお前を無理やり引き離した」

「…………ッ! パト、フォー?」

「オーロラ支部で捕まっていたお前を助け出し、一緒に帰ろうとしたあの日だ。本当に忘れてしまったのか……? また、お前を助けに来たぞ。私は師だからな……」


 私はパトラーに語りかける。5年前のあの日、私はオーロラ支部に捕えられたパトラーを助けに行った。そういえば、その日も今日のような天気だった。闇夜に包まれた空。激しい吹雪。骨まで凍るような寒さ……

 パトラーは私の言葉に動揺する。身体が小刻みに震えている。エメラルドグリーンの瞳から涙があふれ出している。彼女はそっと左手で私の顔に触れる。


「……フィルド、さん?」

「…………! ああ、そうだ。また助けに来たぞ」


 私の目からも涙が流れていく。パトラーが勢いよく私を抱きしめる。絶対に離さないかのような強い力だった。私も同じだけの力で弟子を抱きしめる。


「フィルドさんッ!」

「すまない、助けに来るのが遅れて……!」


 私はパトラーの背をさすりながら、濡れた目で奥のシールド・スクリーンに視線をやる。


「ヒライルー、悪夢は終わりだ」

[あら、すごいじゃない。師弟の絆って意外と強いのね。でも、本当に悪夢は終わったと言えるのかは、まだ分からないわ]

「なに?」


 ヒライルーは冷たい笑みを浮かべたままだ。まだ何かあるのか? 少なくとも、今の状況は彼女の思惑通りじゃないだろう。


[クェリア、そこの軍にフィルド、パトラー、シリカ、アレイシアの4人を殺すように命令を出しなさい]

「なんだと!?」


 私は素早く周りを見渡す。周りは60人近い国際政府の兵士が取り囲んでいる。戦闘ヘリ――ガンシップも4機ある。


[…………。……グルー、4人を殺せ]


 シールド・スクリーンに映るクェリアはグルーに命令を下す。ずいぶん、大人しく従っているが、クェリアとヒライルーの間には何か裏取引があるのだろうか?


「イエッサー。……全兵、4人を殺せ!」


 グルーは大きな声で部隊に命令を下す。マズイ、いくらなんでもこの数を相手に、シリカとパトラーの2人を守りながら戦うことは難しい。ヒライルーの言う通り、まだ悪夢は終わってない。ここからが正念場だ……!

  <<タイム・ライン>>


◆2/15 19:27

 ◇完成体(パトラー=オイジュス)が暴走。

 ◇コマンダー・ドロップが殺害される。


◆2/17 01:17

 ◇パトラーとアレイシアが出会う。


◆2/17 02:21

 ◇コマンダー・ライカがパトラーとアレイシアに襲われる。


◆2/17 20:47

 ◇パトラーの師フィルドと、シリカがルイン本部へと乗り込む。


◆2/17 23:34

 ◇フィルドとシリカが怪物化したコマンダー・ライカと出会う。


◆2/18 01:41

 ◇ヒライルーがルイン本部をサイバー攻撃で制圧する。


◆2/18 02:52

 ◇フィルドとパトラーが再会する。

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