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1-1 ショータイムの幕開け

 それは春休み中のある休日の昼前の出来事。

 そして姉の何気ない一言から始まった。


「私昨日新しい下着買ったんだけどさ、凄くお気に入りなんだから絶対に触んないでね」


「なっ、なな、それは、俺を疑ってるのか! いつも正義に燃えてるこの俺を! というか、今まで姉ちゃんの部屋に入った事もないんだぞ!」


 いきなり理不尽な精神的攻撃に気が動転した為か、少年の抗議は甲高い声となっていた。


 第三者から見ると、いかにも前科がありそうな声だった。

 姉は信じてないと言わんばかりのジト目で応える。


「まぁ、いいんだけどさ。んじゃ友達と遊びに行ってきま~す」


 後半は母親に向けて声をあげ、姉は玄関から飛び出していった。


「はいはい、いってらっしゃい」


 おっとり気味の母親もそれに返し、そして言う。


「じゃ、私も婦人会に出かけてくるけど、しっかりとお留守番お願いね。くれぐれも夢ちゃんの部屋には入っちゃ駄目よ?」


「なっ、なな、それは、母さんも俺を疑ってるのか! 俺が、いつ、姉ちゃんの部屋に入って下着を物色したよ? んな事、他人が許しても俺の正義の心が許すわけないだろ!」


「ん~でも~休日の昼に一人家に閉じこもって子供向け番組を見るような男の子だし~」


「正義の番組見るのと変態を一緒にするなよ!」


 母親はにっこりと笑う。


「まぁ、でも気にしないでね。年頃の男の子なんだし、母さんは心が広いつもりよ?」


 絶対に信じてない口振りだ。

 少年のおセンチでメンタルなハートは粉々だ。


「くぅ、俺が一体何したんだよ……」


「じゃ、婦人会にいってくるわね~」


 息子の心を滅多打ちにしたまま、とても歳相応には思えない元気な声で母親は玄関から飛び出していった。


 二人揃って悪者扱いだ。


 現在姉はもうじき花の女子高生という年代だ。

 しかしながら少年には興味などない。

 姉はツルペタという名の少女体型なのだ。

 女性の魅力など欠片もない。


 それに数日で進級決定の健全なる中等部一年生の男子ではあるが、女性よりもむしろ正義の方に興味が偏っているからだ。

 性技の番組ならまだしもだ。

 そう、興味のあるのは正義の番組なのだ。

 性犯罪者予備軍と一緒にされてはたまったものではない。

 失礼すぎる。絶壁な姉など興味すら沸かないのにだ。

 考えれば考えるほど理不尽だ。


 これはもう、やるしかないんじゃなかろうか。

 いや、やってくれと言われたようなものだろう。

 少年はそう解釈し、覚悟を決めた。


 少年の名は正義。正義と書いてマサヨシだ。


 親の期待のこもった名前に応えたのか、その名を示す通り、彼は正義を愛する少年に育った。

 だが、今のせちがらい世の中、正義を重んじる生き方はひどく生き辛い。

 現に彼は、今まさに! 変態扱いされてしまった。


 休日だとしても普通の日だとしても、戦隊ヒーロー物を見てもいいじゃない。

 孤高のヒーロー物を見てもいいじゃない。

 正義のイメージトレーニングしたっていいじゃない!

 だがしかし、そんな彼に世間は冷たいのだ。


 言われるならば やってみせよう ウタスズメ


 なんとなく違う気もするが、とにかく少年は眼下のビデオの再生を止め、真っ暗になった画面のテレビを消し、行動を開始した。

 父親は朝から会社の接待のゴルフに出掛け、帰りは遅くなるはずだ。

 俺達を養う為に休日からご苦労様です。

 母親も姉も今出かけたばかりだ。帰ってくるのは夕方近くになるだろう。


 ふっ、時間はたっぷりとある。


 ここで荒ぶる鷹のポーズ。

 さぁ、ショータイムの幕開けだ!

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