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『…………会えるよ…………』



 ポチャン……

 

 暗闇の中で、何か音がしたような気がした。

 聞こえるはずのない、水音だ。


 作業服に身を包んだ研究員の一人が振り向く。

 その先には、暗闇でシルエットは定かではないが、それでも存在感だけはあるひどく大きな円筒形の水槽が見えていた。


「どうしたベイル」


 同僚の声で我に返ったような、そんな気がした。

 途端にそこかしこから響く電子機器音の乱雑な騒音が耳に入ってくる。


 そう、こんな音の入り乱れた状態で水音など聞こえるはずもない。


「いや、何でもない。何か聞こえた気がしたんだよ、この騒音の中でね」


 ベイルと呼ばれた男はかぶりを振りつつため息をつく。


「ありえないな」と同僚は笑った。


 ベイルも笑った。


 そう、ありえない。

 ありえるわけがない。


 もう一度、水槽に目を向けてみる。

 今ベイル達他数人の作業員のいるこの部屋は特殊な構造となっていた。


 まず地下二十階に位置し、馬鹿でかい水槽の置かれた、吹き抜けのようなと形容してもおかしくないそれ程に大きな区画と、それにおまけのようにぽっこりと浮き出たこぶのような小さな区画に機器や作業員が配置されている。


 ものすごい比重だ。


 水槽の周りには照明はおかれてはいなかった。

 先にあるそれはいつも暗闇の中でひっそりと佇み、ただ存在感だけをおぼろげにアピールしている。

 見ては困るものなのか、それともつける必要がないだけなのか。


 だが、一つだけ確かな事はあった。

 機器に目を落とす。

 水槽から莫大なエネルギーを得ているという事実。


 クッターヴァエネルギー研究所。


 それがこの施設の名前だ。

 大陸にいる全ての人々の電気や生活エネルギーをここで作り出し、世に送り出していた。

 そう、先にあるあの水槽一つで全世界のエネルギーを供給し続けているのだ。


 就職し、ここに配属されてもう十年になる。

 いまだにエネルギーの原理については何も説明されてはいなかった。

 他の皆も同様だ。

 ただ、エネルギーの伝達を維持する為だけにベイル達は存在する。


 ポチャン……


 音が、水音が、また聞こえた気がした……



『……もうすぐ……もうすぐだよ…………』

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