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第十九話

【封印スキル:一騎当千】

 開放条件:ボスクラスモンスターの単独撃破

 この封印スキルは、闇の民四種族のみ開放可能。

 修練方法:非パーティー時、非共闘時の単独戦闘を通じて上昇する。

 効果:非パーティー時であり、かつ非共闘時において、全ステータスの上昇効果を得る。

 スキル値の上昇により、ステータス上昇効果が増加する。

 パーティー時、又は共闘時にはステータス上昇効果は得られない。



【決闘】

 詠唱時間:0sec

 再使用時間:0sec

 効果:スキルアーツ使用後、非パーティー時、かつ非共闘時に追加のステータス上昇効果を得るパッシブエフェクトが発動する。

 効果中にパーティーに参加、又は共闘状態へと移行した場合、全ステータス減少の状態異常を受ける。

 この状態異常は【決闘】の効果を解除しても、戦闘状態が継続する限り解除されない。



「ボスソロ撃破おめー。解体しないの?」

 ラガナムを倒した後、システムブックを開いて新たに開放された封印スキルについて確認していると、メリルから声を掛けられた。

「見てみ」

 メリルにシステムブックの一部を指し示す。

「何?……封印スキルの開放、ってマジ?初封印スキルじゃん!」

「ああ。しかもこれやばいぞ。闇の民始まったな」

 遂に開放された初の封印スキル【一騎当千】は、闇の民専用のスキルで、ソロでの戦闘時に全ステータスが上昇する。

 一騎当千スキルSA【決闘】と併せればかなりの効果がありそうだ。

 未だ一騎当千スキルのスキル値が0.1なのでステータスがどれだけ上昇するのかはわからないが、これがあればかなりボス戦が楽になるだろう。

「スキルでステ上昇して、SAでもステ上昇って、ただでさえ闇の民のステータス最大値高いのに、いいのかな?」

「けど、高いって言っても素の状態じゃ光の民の倍程度しか無いんだから、これくらい無いと後半のボスソロとか無理だろ?メリットばかりって訳でもないしな」

 一騎当千スキルの効果も、【決闘】の効果もソロ限定、しかも【決闘】使用中に共闘ペナルティが発生したら追加で状態異常まで受けてしまう。

 ただでさえ辛い共闘ペナルティに、同じ効果の状態異常まで受けるとあっては、気楽に使用できるSAではない。

「【決闘】に関しては完全にボス用だな。それも絶対に邪魔が入らないと確信できる時以外は怖くて使えたもんじゃない」

「けど、ボス用でも有難いよね。やっぱ一番死ぬ可能性高いのボス戦だし」

「そうだな。ラガナムにガードブレイク食らった時はマジ死ぬかと思ったしな」

「私もあれは死んだんじゃないかと思った。ていうか最後なんてらしくなかったよね。SAとかボイスコマンドで発動してたし」

「そうだったか?覚えてないな」

 思い返せばかなり無茶な戦い方をしたものだ。

 ボス相手に盾を投げたり、大ダメージ食らった後回復もしないで戦い続けたり、最後なんてほとんど捨て身の特攻だった。

「ま、生きてるから問題無い」

「死んでたらこんな事言ってらんないっつの。それより解体しないの?折角倒したのに、死体消えちゃうよ?」

「おっと、そうだった」


 剣と盾を収め、ダガーを取り出しラガナムの亡骸に刃を当てる。

 戦利品は【ゴブリン部隊長の紋章】と、【輝く鉄鉱石】が五個。

 そしてラガナムの亡骸が光の粒として消えた後、床に残されたラガナムが使用していた大盾【ゴブリンリーダーシールド】。

「その盾結構いいんじゃない?」

「ああ。ステータスギリギリだけど何とか使えるな。悪くない……ん?」

 ゴブリンリーダーシールドの詳細を表示すると、防御率や要求ステータスの項目の下に【????】と表示されている。

「なんか特殊な効果でもあるのかも」

「鑑定が必要なアイテムって事か……鑑定スキルなんてあったか?」

「誰かNPCがやってくれるとかじゃない?」

「エドワードあたりがやってくれれば話は早いんだけどな。一応鑑定しなくても普通に使えるみたいだな」

 未鑑定状態でも装備する事は出来るようだ。

 しかし性能は申し分無いと言っても、ずっとこのままというのも気になって仕方ない。

 基地に戻ったら鑑定する手段を探さなくては。

「他のアイテムは……輝く鉄鉱石ってのはレア生産素材っぽいな。この紋章は売れるのか?」

 キューブから【ゴブリン部隊長の紋章】を取り出して眺めていると、システムアラートがクエストの発生を告げる。

「何?」

「クエが発生した。この紋章を持って騎士団長の所へ行けだとさ」

「報酬は?」

「10sと、宿命値100増加だ」

「わお、これ繰り返し出来たらお金と宿命値楽に稼げるじゃん」

「楽にってお前……これボスのドロップアイテムだぞ?」

「けど、現時点では一番まともな宿命値稼ぐ方法じゃない?」

「確かにそうだけどな……」

 しかし、ラガナムとの死闘の果てに得たアイテムを指して楽にと言われるのは複雑な心境だ。

 確かに他にまともな宿命値を稼ぐ方法が無い以上、これが一番効率的なのは間違い無いんだが……。

「そんな事言ってあっさりボスにやられたら笑えないぞ」

「うっ……変なプレッシャーかけないでよ」

「プレートアーマーの上から一気に三割近くライフもってかれたからなー。メリルさんの紙装甲じゃ一発で危ないんじゃないですかね……」

「あ、当たらなければどうということはない……はず」

 回避型は回避性能を高めるための軽装故に、一撃を食らった時のダメージが甚大だ。

 メリルならば全ての攻撃を避けてもおかしくはないが、ボスが相手となれば、万が一という事もあるだろう。

 神術スキルの自己強化SAがあれば一撃で死ぬという事は無いだろうが、相手を甘く見てキャラロストされても困る。


「まあ、暫くはこのボスの広間周辺でゴブリンでも狩って時間潰すか。ボスのリポップ時間も調べたいしな」

「そうね。私も早く一騎当千スキル欲しいな」

 腕を回しながら通路へと戻るメリル。

 俺はラガナムが座っていた椅子を一瞥し、呟く。


「然らば、ゴブリンの戦士」


 感傷的な己の呟きに苦笑し、メリルの後を追う。




 ボスゴブリンのリポップはゲーム内時間で十二時間だった。

 エリートゴブリンのリポップが六時間なので、その倍以上はかかるだろうと、予想はしていた。

 しかし、ラガナムがやけに個性的だった事もあって、十時間を経過した頃から、もしやリポップしないのではないかと不安を感じていたが、杞憂だったようだ。

 しかし、新たに沸いたゴブリンのボスはラガナムではなく、別の名前を名乗り、長剣と大盾というスタイルではなく、身の丈程もある大剣を持っていた。

 どうやら「ゴブリンの部隊長」にも色々なパターンがあるようだ。

 正直長剣と盾を使うラガナムは、俺とスタイルが被っていた事もあって少しやりにくかったのだが、新しくリポップしたボスはメリルと相性がいいようだ。

『ヌウウウウッ!チョコマカトッ!』

 まるで暴風のように振るわれる大剣だが、その悉くをメリルは密着状態でかわしながら拳を叩きこんでいく。

 攻撃速度の遅い大剣使いは、回避特化のメリルが最も得意とする相手だ。

『オノレェェェッ!』

 強烈な打撃を受けたたらを踏んだゴブリンが、身を沈め身体を捩る。

 両手剣術SA【ワールウインド】。

 その場で大きく大剣を振るい全方位を斬り伏せる大技だ。

 本来ならば多数の敵に囲まれた状態で使用する技だが、ちょこまかと動き回るメリルを捕らえようと放った苦肉の策だろう。

 メリルはボスゴブリンに追撃をかけようと走り込んでいた所だった。

 バックステップでかわすには勢いが付きすぎていたし、左右にかわしても大剣の範囲から逃れられるタイミングではなかった。

 メリルの身体を捉えたかと思われた一撃だが、ボスゴブリンの一撃は当たらない。

 高く跳躍したメリルの爪先を、【ワールウインド】が掠める。

「【スーパー稲妻キック】!」

 メリルの高らかな宣言と共に、激しい雷光を纏った蹴りがボスゴブリンの頭を捕らえる。

『ギィィィィッ!』

 蹴りの炸裂と共にボスゴブリンの身体を稲妻が焼く。

『ギ……オノ……レェッ……』

 二三歩後退さったボスゴブリンは、糸が切れたように地に倒れた。

「ふぅっ……一騎当千ゲット!」

 大きく息を吐き、高らかに拳を突き上げるメリル。

「お疲れ。余裕だったな」

 早速ダガーを取り出し戦利品を回収するメリルに歩み寄る。

「余裕じゃないっつの。一撃貰ったらやばいと思って必死だったんだから」

「それであんな危ない戦い方が出来るんだから呆れるよ」

「呆れるとか言うな」

 ガンと音を立ててメリルの拳が二の腕の装甲を叩く。

「で、何が出た?」

「紋章は出たよ。あと鉄鉱石も。けど装備は私が使える奴じゃないなぁ。ボスが持ってる装備をドロップするみたいだね」

 地面には先程ボスが振るっていた大剣が消えずに残っている。

「ガイ、これ使う?あんたたまに両手持ちにするし、持ってても悪くないんじゃないの?」

「いいのか?」

「私使えないもん。その代わり次格闘武器ドロップしたら頂戴」

「悪いな」

 メリルから手渡された巨大な大剣を軽く振って見る。

「これも未鑑定だけど、使えるな」

「次のリポップは十二時間後かぁ。補給もしたいし、一度基地に戻らない?」

「そうだな。ここ暫くは篭りっぱなしだったから、そろそろ戻らないとやばいな」

 俺とメリルは、廃坑の出口を目指す。

 ボスを撃破した今、ただの雑魚ゴブリンに遅れを取る理由は無い。

 かつてないペースで廃鉱を踏破し、前線基地へ向かう。




 前線基地へと戻る途中、森の中を歩く初期装備のプレイヤーの姿がちらほらと見受けられる。

「なんか初期装備プレイヤー多いね」

 システムブックを開きリアルの日時を確認する。

「二次出荷でAGを購入した新規プレイヤーだろうな」

「あー、そっか。今日から新規プレイヤー登録受付開始だっけ」

「あれだけ闇の民は不遇って情報が出回っても新規はいるもんだな」

「正式初日から続けてるうちらが言えた事じゃないけどね」

「確かに」

 何にせよ、プレイヤーが増えるのは良い事だ。

 狩り場が混雑するのは勘弁してほしいが、既に先行している俺達と彼らの狩り場が被るのはもっと先の話だろう。

 ここの所のプレイヤーの減少で、本当のゴーストタウンになりかけていた前線基地が活気付くのは喜ばしい事だ。

「果たして彼らの内何人が脱落するのでしょうか」

 不吉な事を呟くメリルに苦笑しながら、前線基地の門を潜る。



 俺達はまず最初に、部隊長の紋章を届けるために騎士団を訪れた。

 門番に誰何されたものの、隊長に用があると言ったらすんなりと通してくれた。

「門番の意味あんのかな、あれ」

「まぁ、そういう演出なんだろ。素通りってのも味気ないしな」

 どうやら先客がいるようで、隊長室の部屋の前でしばらく待たされる。

 数分して部屋から出てきたのは、初期装備に身を包むプレイヤー。

 俺達のそれなりにごつい装備を物珍しそうに眺めていたプレイヤーに手を振るメリルを引っ張って隊長室に入る。

「おや、傭兵隊の……それと冒険者ギルドの方ですね。今日はどういったご用件ですか?」

 ソファに腰を下ろし、【ゴブリン部隊長の紋章】を差し出す。

「これは……貴方達、これを何処で?」

「アーカス廃鉱の奥にいたゴブリンの隊長を倒した際に手に入れた物です」

「それは素晴らしい。部隊長を倒しても頭がすげかわるだけとは言え、彼らの戦力を大きく削ったのは間違いありません。良くやってくれましたね。貴方達の手柄に報いるには少々小額ですが、受け取って下さい」

 10sが入った小袋を受け取ると、クエストが完了し宿命値の増加ログが表示される。

「あの、もしまた紋章を持ってきたら?」

「頼もしい言葉ですね。もしまた部隊長を倒したらまたいらしてください。報酬をお渡ししますよ」

「ありがとうございます。がんばります」

 隊長に一礼して席を立つ。

「ああ、隊長さん。例の北の遺跡の巨大モンスター、どうなりました?」

 ここ暫くは廃鉱にかかりきりで新しいクエストを確認していなかった。

「ああ、あれは被害の規模から我々では手に余ると判断したもので、本国に騎士団の増援を頼みました。前線基地に詰める騎士団の増員も必要でしたので、それと併せて」

「なるほど。では傭兵隊の出番はありませんか」

「そうなりますね。ここの所傭兵隊と冒険者の皆さんに頼りきりでしたので、今回の件は多少無理をしてでも騎士団で処理したかったのです。気に病んでいらしたのであれば、申し訳ない事をしてしまいましたね」

「いえ、そういう事であれば仕方ありません。では失礼します」

 一礼して隊長室を後にする。

 外の通路には、何人かの初期装備のプレイヤーの姿。

「やっぱ皆最初におつかいクエやらされるのかな?」

 通路に並ぶビギナープレイヤーに視線を送りながら呟くメリル。

「多分な。同じ内容ではないとしても、似たようなクエが発生するんだろ」

「そういうとこはやっぱりネトゲだよねぇ。色々リアルだからたまに忘れちゃうけど」

「忘れて楽しめるなら良い事なんじゃないか」

「なるほどね。んじゃ、次は?」

「武器屋に行こう。エドワードに鑑定できるか聞かないと」

 騎士団を後にした俺達は、エドワードの店へと足を向ける。



「武器の鑑定で御座いますか。確かに商売柄、装備品の目利きには多少の自負がございますが……見せて頂けますかな」

 ボスゴブリンのドロップ品を渡すと、エドワードは細部を確認するように眺める。

「ほう……ゴブリンの部隊長が使っていた武器ですか。なるほど、なかなかの品ですな」

 やがてエドワードは小さく首を振る。

「武器そのものの目利きであればご期待に添えたでしょうが、これは私の手には余りますな。エンチャントがかかっておりますが、魔術の素養のない私には如何様な効果が付与されているのか判りかねます」

「エンチャント?」

「呪術師が武具に付与する力の事で御座います。そうですな、魔術具店を営んでいるメイサであれば、エンチャントの効果がわかるやもしれません」

「なるほど。行ってみるよ、ありがとう」

「お力になれず申し訳ありません。しかし、エンチャント付きの武具を用いられるようになりましたか。そうなると、当店の武具では既に力不足ですな。ですが、何かあればまたいつでもお越し下さいませ」

「ああ、また来るよ」

 エドワードに礼を述べ店を後にする。



 魔術具店を利用するのは初めてだ。

 メリルは魔術スキルを取っていないし、俺も魔術スキルは40.0まで上げただけで、新しいSAは習得する金もなかったので縁がなかったのだ。

 魔術具店は、大通りに面しており、周囲の店と比べると如何わしい雰囲気を放っている。

 店の中に入ると、薬品じみた鼻を突く香りが漂っている。

「いらっしゃいまし。何をお探しかしら?」

 メイサと名乗った店主は、透けるような白髪を床に着くほど長く伸ばした妙齢のダークエルフの女性だった。

「これに掛かっているエンチャントについて調べて欲しいんだが」

 軽く大盾を掲げると、メイサは目を細める。

「鑑定でございますか。一品につき50cを頂いております」

 1sを支払い、大剣と大盾をカウンターに置く。

「あら、これは珍しい。掛かっているのはオーク共の呪術ですわね」

「オーク?これはゴブリンが持っていた物なんだが」

「ゴブリン共にこのような物を作る技術は御座いませんわ。彼らの武器は須らくオークの手によって作られた物ですわね」

 メイサは大盾と大剣を受け取ると、軽く手を翳す。

「大剣に付与されているエンチャントは【重量軽減】。文字通り武具の重量を軽くさせる効果がありますわ。といっても、実際の重さが減る訳ではありませんから、性能には影響しませんわ」

 差し出された大剣を受け取ると、驚く程軽くなっている。

「エンチャントは使用者がその効果を正しく理解していなければ効果は発揮されませんの。正しくは、エンチャントの効果を引き出すパワーワードを理解しているかどうか、ですけど。その大剣の場合、【重量軽減】がそのパワーワードですわ」

「だから未鑑定だと効果が発揮されてなかったわけか」

「こちらの大盾に付与されたエンチャントは【衝撃軽減】。防御した際の衝撃が緩和される効果がありますわ。どちらも効果自体は軽微な物ですが、武具の長所を引き出す悪くない品ですわね」

「なるほど。助かったよ、ありがとう」

「この程度何の事はありませんわ。またいつでもいらして下さいましね」

 扇で口元を隠し笑うメイサに礼を述べ、魔術具店を後にする。




 ポーションや応急薬、飲み水と食料の補充を終えた俺達は、再び鉱山地帯周辺の森へと分け入っていた。

『グギャァァァァ!』

 渾身の力で振るった大剣が、ゴブリンを一刀の元に斬り捨てる。

「うわ、一撃とか……」

 ゴブリンを軽くあしらっていたメリルが呆れたように呟く。

 俺達の近接スキルは、一つの山場である80.0を越えた事で、これまでの装備でも森をうろつくゴブリン相手なら苦も無く倒せるようになっていたが、まさか一撃で倒せるとは思わなかった。

「さすがボスドロップ武器。これなら大剣も悪く無いな」

 大剣を使っていては盾防御スキルは伸びないが、盾防御スキルは、武器で相手の攻撃を受ける際にも影響する。

 武器を使っての防御は、主に対応する武器スキル値に依存するが、盾防御スキルが高ければ成功率とダメージ減少率にボーナスを得られるのだ。

 盾防御スキルをマスターしたら、雑魚戦では大剣をメインに使うのも悪くない。

「いいなぁ……格闘武器出すボスがいなかったらどうしよう」

「祈るしかないだろ。それより【重量軽減】のかかった鎧とかあればいいんじゃないか?軽ければ回避に影響しないで防御力を高められるだろ」

「んー、あんまり重装備は好きじゃないんだよねぇ。ほら、コンセプトがモンクだし」

「胴鎧だけでも金属鎧にしたほうが安定すると思うけどな。まぁ拘りじゃ仕方ない」

「ていうか、【重量軽減】てそんなに軽くなるもんなの?」

「そうだな。かなり軽く感じるぞ。下手したら……」

 ふと思い立ち、片手で振ってみる。

 ……多少扱いにくさを感じる。が、問題無く振れる。

「これ片手持ちできるぞ」

「マジで?」

 大盾と同時に装備して構え、何度か振ってみる。

「今はなんとか振れる程度だけどな。もうちょっとSTRが伸びれば普通に使えそうだ」

 確かに片手武器を両手で持てるのであれば、能力値さえ満たしていればその逆が出来てもおかしくはないが、こんな馬鹿でかい大剣を片手で持つという発想は無かった。

 片手で扱えば当然攻撃力は落ちるが、それでも通常の片手剣とは比べ物にならない。

 むしろ片手剣では軽すぎて攻撃力に不満を感じ始めていた所なので、この発見は僥倖だ。

「重量軽減の効果もあるんだろうけど……これは良い拾い物だったな」

「出したのは私だけどね」

「感謝してるよ」

 貰いっぱなしは性に合わない。

 ボスを狩ってメリルの格闘武器を出さなければ。

 紋章で宿命値も稼げるし、廃鉱に篭ればすぐに大剣を片手で自在に操れるようになるだろう。

「行くか。早くボス狩ってメリルの武器も出さないとな」

「うし、んじゃガンガン行こうぜ!」

「まだリポップしてないけどな」

「十二時間は長いわー」

 口を尖らせて不平を言うメリルと共に廃坑へ向かう。


 闇の民は不遇だ。

 それに閉塞感を感じていたのも確かだった。

 しかし、今は違う。


 ボスをソロで倒した事による自信。

 封印スキルの開放による能力値の上昇。

 優秀な武器と、新しい発見による攻撃力の増加。

「何ニヤケてんのキモい」

 そして、口は悪くて手癖足癖の悪い女らしさの欠片も無い相方がいる。

 闇の民を選んだのは間違いではなかった。

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