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第十五話

 あれ以降は、メリルがターゲットを間違えるようなミスも無く、狩りは順調に進み、スキルの伸びもかなりの効率を見せていた。

 小川の水を水筒に汲んで豪快に呷る。

 岩の隙間から湧き出す水は冷たくて心地よい。

 革袋で出来たこの水筒は、見た目以上の容量があるが、無限に湧き出す訳ではない。

 普段はどうしてもちびちびと口に含む程度で我慢せざるを得ないので、こうして気が済むまで喉を潤す事が出来るのはなかなか爽快だ。

 小川の傍の木陰で休憩しながら、システムブックを眺めていたメリルが首を傾げる。

「もうちょっとワームメインで釣ったほうがいいかな?」

 既にラージスパイダーの討伐数は、クエストの指定数に達するのも目前だったが、ドレインワームの討伐数はあまり稼げていない。

「ワームは蜘蛛より数も少ないし、動きもランダムだからな。蜘蛛より討伐数が少なくなるのは仕方ないだろ」

「私こういうの駄目なのよね。なんていうか、均等にバランス良く狩りたいタイプ」

 討伐数の偏りが余程気になるのか、眉間に皺を寄せている。

「とは言え、狩れるワームを探してる間に蜘蛛を狩った方が効率はいいしな……諦めるしか無いんじゃないか?」

「そうだね。ああ、難儀な性格が恨めしい」

 大仰に首を振ってシステムブックを閉じるメリル。


「ん?」

 前線基地の方角から複数の気配が近づいてくるのを感じる。

「何?敵?」

「……いや、プレイヤーだ。数は六人」

「は?六人て……まるでパーティーじゃん」

「綺麗に並んで歩いてる。パーティーなのかもな」

 闇の民でもシステム的にパーティーを組む事は可能だ。

 しかし、パーティーを組むのであれば、圧倒的に光の民のほうが効率は良い。

 共闘ペナルティもその一因ではあるが、もう一つ、理由がある。

 闇の民では純粋なヒーラークラスを作る事が出来ないのだ。

 パーティーを組んでの複数戦闘は、特化したクラスによる役割分担によって初めて真価を発揮する。

 個々の性能が高い闇の民であれば、数を揃えるだけでも相応の戦力にはなる。

 しかし、やはり共闘ペナルティを受ける上に、数にまかせての力技では、巧みなソロプレイヤーには及ばないだろう。

 闇の民がパーティーに不向きであるという情報は、公式サイトなどでも詳細な情報が公開されているので、そもそもパーティープレイを求めるプレイヤーは闇の民を選ばない。

 なので、これまでパーティーはおろか、ペアを組んでプレイしているプレイヤーも俺達以外には見かける事は無かった。

「まぁキワモノプレイヤー揃いの闇の民だ。あえてパーティー組む奴がいてもおかしくはないが、問題はパーティーを組んで何をするかって事だ」

「何って……蜘蛛を狩るんじゃないの?」

「蜘蛛相手でわざわざ六人も揃える必要はないだろ。もしかしたら……マンイーターを狩る気かもな」

「……狩れるのかな?」

「さあな。実際の所どれだけ強いのかわからないからな」


 興味をそそられた俺達は、彼らの動向を観察するために巣窟へと向かう。

 どうやら向こうのパーティーに危機探知スキルが高いプレイヤーはいないようで、こちらの存在は気付かれていない。

「ねぇ、コソコソする意味はあるわけ?」

「仮に奴らがマンイーター狩りをするとして、手を貸せとか言われたらどうする?」

「いや……断るよ流石に」

「だよな。まぁ断っただけで妙な因縁付けられても敵わないからな。とりあえずどういうプレイヤーか、まず観察しようかと」

 実際過去に経験があるだけに、こういった状況には慎重にならざるを得ない。

 昔、VRシステムが普及するより前、別のネトゲのプレイ中に、狩り場でボスを狩るから手伝えと突然パーティー申請をされ、断ったら非協力的だなどと言って匿名掲示板に晒された。

 当然そんな理不尽で意味不明な晒し方をすれば、晒した方がボロクソに叩かれる物だが、相手は匿名でやっているのだから実害など無いに等しい。

 こちらも対抗して相手を晒す事も考えたが、そんな事をしていては相手と同じレベルになってしまう。

 結局そのプレイヤーには暫く粘着され、妙な名前の売れ方までしてしまったので、すぐにそのゲームは引退してしまった。

 今思えばそこまで面白いゲームでも無かったから良かったものの、アトラスで同じ轍を踏むわけにはいかない。

「あんたも苦労してんのね」

 メリルは俺の微妙な表情から過去の経験を察したのか、頷きながら肩を叩かれた。


 茂みの隙間から件のパーティーの戦闘を観察する。

「グリーンスキンの重戦士に、ノスフェラトゥの軽戦士、ライカンとダークエルフの神術師が二人、ノスフェラトゥとダークエルフの魔術師か。妙にバランスがいい。即席パーティーじゃないのか?」

「動きも手馴れてる感じだね」

「まさか本当にパーティープレイを前提として闇の民を選ぶプレイヤーがいるなんて、とんでもない変人だなあいつら」

「あれじゃないの、縛りプレイ」

「ソロならともかくパーティで縛りってどんだけだよ。しかし、流石に六人もいると共闘ペナあっても倒すのが早いな」

「やっぱり、巣の奥に行くみたいだね」

「ああ。まず間違いなくマンイーター狩りだろうな」

 彼らは、キャラの能力値的には俺達より格上のようだが、共闘ペナルティがある以上、実際の個々の戦力は俺達と同等か少し上といったところだろう。

 パーティープレイにはかなり慣れているようだが、果たしてそれだけで狩れるのだろうか?

「ちょっと探りを入れてくる。ここで待っててくれ」

「え?ちょっと!」

 メリルを残して森の中を大きく迂回し、前線基地から今大蜘蛛の巣に到着した風を装う。


「誰だ!?」

 背後から近付く気配を察したのか、グリーンスキンの重戦士がこちらにハルバードを向ける。

「うわぁ!あ、怪しい者じゃないです!プレイヤーですよ!」

 戦意が無い事を示すように両手を挙げる。

「やめろ、ラドル。驚かせてしまってすまないね、蜘蛛狩りかい?」

 リーダー格らしいダークエルフの魔術師が重戦士を嗜める。

「え、ええ。けど驚きましたよ。なんか沢山人がいるなぁと思ったら、まさか闇の民でパーティープレイをしてる人達がいるなんて」

「はは、俺達は別のゲーム時代からの友達でね。何か面白い事、他の人がやらない事をやりたいと思って、こういうプレイスタイルになったんだ」

「なるほど……けど、共闘ペナルティってあるんですよね?大丈夫なんですか?」

「ああ、確かにペナルティは辛いけど、パーティープレイには自信があるからね。なんとかなっているよ」

 ふむ、やはりペナルティは受けているのか。

 もしかしたら、ペナルティを回避してパーティーを組む方法でもあるかと思ったが、やはりそんな美味い話は無いか。

「いいなぁ。俺、友達は全員AGの購入権外れちゃったし、このへんのプレイヤーはソロ指向ばっかりで……まぁそれは俺もなんですけど。流石にソロしかできないのは辛いです」

「俺達はパーティー前提のキャラメイクをしているけれど、やはり闇の民で即席パーティーは難しいだろうね」

 さてどうやって目的を聞きだそうかと、会話をしながら思案していると、他のパーティーメンバーが落ち着き無く巣の奥へと続く山道に視線をやっているのに気付く。

 向こうから話を振ってもらうのが一番自然か。

 俺はリーダー格の男と、さも久しぶりの会話を楽しんでいるかのように装い、あえて他愛も無い雑談を続ける。

 やがて痺れを切らしたのか、周囲を警戒していたライカンの神術師が一歩前に出る。

「ゼル、そろそろ行かない?」

 ライカンの女性プレイヤーが、多少苛立ったようにゼルと呼ばれたダークエルフのリーダーの袖を引く。

「ああ、そうだな。すまない、これからこの奥にいるボスに挑むんでね。この辺で失礼するよ」

 やはりマンイーターに挑むのか。

 果たして勝算があっての事か、それともただの無謀か。

「えっ?ボスって、マンイーターですか?すごく強いって噂ですけど、大丈夫なんですか?」

「ああ。もう何人かのプレイヤーが挑んで返り討ちにあっているらしいね。だからこそ、挑戦のし甲斐があるというものさ」

 危険は承知の上か。

 ならばこれ以上言うことはない。

 例えこのパーティーが、シャミルが懸念していたような英雄願望じみた精神状態にあったとしてもだ。

「そうですか……あ、すみません。皆さんの実力を疑うような事言って」

「気にしないでくれ。俺達も絶対に勝てると思っている訳じゃないからね。敵わないと思ったら逃げるさ」

「皆さんならきっと勝てますよ。がんばってくださいね」

 心にも無い事を言って、パーティーの一団が奥の山道へと入っていくのを見送った。


「この服値切ってくれた時も思ったけど、あんたなんでそんな無駄に演技派なの?」

 メリルの潜む茂みに戻ると、呆れたような顔を向けられる。

「聞こえてたのか。実は俳優目指してるんだ。それより、やっぱり狙いはマンイーターだったな」

「冗談は顔だけにしてよね。けど、マンイーターって実際どれだけ強いんだろうね?案外それほどでもなくて、今の人達が倒しちゃったりして」

「顔だけとか言うな。まぁ何人も既にやられてるらしいが、序盤の狩り場のボスなんだから、可能性はある。つい忘れがちだけど、シャミルもNPCな訳だし、あの怯えようはそういう演出なのかもな」

「だといいけど……ま、私達より格上のプレイヤーが六人もいて無理なら、うちらにはどうしようもないか」

「そうだな。そろそろ狩りを再開しよう。早く残りを狩らないと日が暮れるしな」

 多少気掛かりではある物の、俺達に出来る事は何も無い。

 俺とメリルは先程のパーティーの姿が山道の奥へ消えるのを見届けてから、再び蜘蛛狩りを開始した。


 クエストの達成条件であるラージスパイダー二十匹とドレインワーム二十匹を狩り終えた俺達は、日暮れまでいくらか時間があったので、大蜘蛛をメインに狩ってスキル上げに勤しんでいた。

 俺より早くラージスパイダーを倒し終え、周囲の警戒に当たっていたメリルが、耳をひくつかせる。

「今、何か聞こえなかった?」

「状況を見て言え!戦闘中にそんな余裕あるか!」

 ラージスパイダーを盾で殴り、剣を突き刺す。

 光の粒を撒き散らして倒れたラージスパイダーから手早く戦利品を回収し、メリルの元に向かう。

「で、何が聞こえたって?」

「何がって訳じゃないんだけど、向こうから何か……」

 メリルが指し示す方角には、巣の奥へと続く山道。

「……まさかね。勘違いかな?」

「……いや、様子がおかしい。蜘蛛もワームも一匹もいなくなってるぞ」

 完全に蜘蛛の棲処となっていた廃村には、あれだけ沢山いた蜘蛛達の姿は一匹も見当たらない。

「え?なんで?さっき釣った時はいっぱいいたのに」


 不審に思い、【テリトリーサーチ】のアクティブエフェクトで広範囲を探知する。

 山道の方角、探知範囲ぎりぎりの所に、気配が一つ。

 これはプレイヤーの物だ。どうやら走っているらしい。

 そしてもう一つ、それを追うような気配が新たに範囲内に現れる。

 凄まじいスピードだ。

 これは……。

 瞬間、全身を悪寒が駆け抜ける。

「まずい、逃げるぞ!」

「え?あ、待って!さっきのパーティーの人が!」

 山道から、一人のプレイヤーが転がるように走り出てきた。

 先程のパーティーの軽戦士の男だ。

 スタミナを使い果たしたのだろう。

 尋常ではない様子で息急き切っている。

「た、助けてくれ!」

 こちらの姿に気付いた男は、恐怖に染まった瞳にかすかな安堵を浮かべると、こちらに縋るように手を伸ばす。

 だが、助ける訳にはいかない。

 駆け出そうとするメリルの腕を掴んで止める。

「ちょっと、何で止めるの?」

「もう、手遅れだ」

 次の瞬間、山道の奥、闇に包まれた暗がりから蜘蛛の糸のような物が放たれ、男を絡め取る。

「うわ、うわあああああ!」

 自由を奪われた男は、抵抗する事も出来ずに地面を引き摺られてゆく。

 そして、山道の入り口まで引き込まれると、暗闇から鈍い光を放つ大鎌が振り下ろされ、男の身体を貫いた。

「っ……!な、なに?何なの!?」

 男の身体から大鎌が引き抜かれると、男の身体は光の粒となって四散する。

 俺達より格上の軽戦士を一撃で屠った、刃渡り二メートルはあろうかという大鎌の持ち主が、その巨体を引きずるように山道から這い出してきた。

「あれが、マンイーター……?」

 かつて遭遇したドラゴンなど目ではない。

 それ以上に圧倒的な存在が放つ威圧感に、全身の自由が奪われる。


『巣の外に出るのはいつぶりだろうか。たまには外に出るのも悪くないね』

 それは、蜘蛛の下半身に女性の上半身、手首から先はカマキリのような巨大な大鎌という異様な存在だった。

『おや、まだ雑魚が残っておったか?けどおかしいな。広間に踏み込んだ奴は全員始末したはずですが』

 口調が一定しない、奇怪な喋り方をするその異形は、こちらを認めると困ったような顔をする。

『おいお前ら。喋れますか?言葉はわかる?』

 地を踏みしめるたびに地鳴りがする程の巨体を揺らし、異形はこちらに這い寄って来る。

『わからんのか?なら仕方ありませんね。おなかいっぱいだけど、死ね』

「ま、待った!喋れる!通じてるぞ!」

 咄嗟に手を上げ、制止の声を上げると、振り上げられた大鎌が空中で制止する。

『なんだ、わかるのでしたら早く言ってくれよ。貴方達は軽く撫でただけで死んでしまうほど弱いんですから、気を付けてよね』

 異形は満足げに頷くと、大鎌を下ろし、目線を合わせるように巨体を屈める。

『もう満腹ですので、食事はしたくないんだよね。お話をしましょう。会話は久しぶりである』

 異形は、にぃと口を醜悪に歪める。笑っているのだろうか。

「会話がしたい?何故だ、俺たちを殺さないのか?」

『愚問だな。今言ったでしょう?我はおなかがいっぱいなの。だから喋るのだ。もう随分長い事会話などしてないからね』

「なら、彼らは?お前が今殺した彼らとは話さなかったのか?」

『問いかけましたとも。けど、奴らは私の問いかけに答えず、いきなり斬りかかってきおった。弱いくせに。戦いたいみたいだったから殺したの。おかしい?』

 言葉を失う俺に、異形は首を傾げる。

『なぁに?貴様も死にたいの?なら殺そうか?』

「い、いや、お前と戦うつもりはない」

『それは重畳。満腹だというのに貴方達みたいなまずそうなのを食べるのは苦痛ですからね』

 そう言うと、異形はギャギャギャと耳障りな鳴き声を上げる。

 恐らく笑っているのだろう。

『さあ、ではお話を楽しもう。うーん、何か聞きたい事はある?』

「……お前が、マンイーターなのか?」

『マンイーター?それは貴様達が勝手に呼んでいる名ですね。だが真名はそう簡単には教えないよ。知りたければ力づくで聞きだすがよい』

「いや、それはまた今度にしておくよ」

『賢明ですこと。では私から問おうか。ここで何をしてたの?」

 言葉を失う。

 まさか敵の親玉を前にして、あなたの手下を狩ってましたなどと言える訳が無い。

『くはははは!そう怯えないでいいよ。私の子供達と殺し合っていたのだろう?気にする事はないよ。あの子達は君たちを殺し、貴方達に殺されるのが役目であるのでな』

「……自分の子供なのに随分な言い様だな」

『百万を越える子を持てばそなた達もそうなるよ。しかしお前は面白いのう。隣の獣まじりなど震えて声も出ないみたいだよ』

 マンイーターは大鎌の刃先でメリルを指し示す。

 恐怖に震えているメリルを落ち着かせるように、腕を掴み引き寄せる。

「自分でも驚きだよ。極限状態には思いがけない力が発揮される物だな」

『羨ましい事だ。私は生まれてこの方恐怖というものを感じた事がないんだよね。一度死んでみたいんだけど、僕を殺すには貴方達は弱すぎますから、叶わぬ望みなのかもしれんな』

「一度死んでみたいだって?一度死んだら終わりじゃないか」

『そうなのか?なんで?』

「なんで……いや、わからないが、命っていうのはそういう物だろう」

『そうであったか。知らなかったなぁ。礼を言うぞ弱き者』

 そう言うと、マンイーターは屈めていた身を起こし、背を向ける。

『面白い奴だ。お前を殺したくなってきた。また来いよ、次は殺し合おう。腹がいっぱいになったら眠くなってきました。我は巣に戻るね』

 一方的に言い放つと、マンイーターは巨体を揺らして山道の奥へと消えて行った。

「……助かった、か」

 奴の気配が巣の奥へと消えて、ようやく人心地がついた。

「こ、こ、怖かった……」

 メリルは地面にへたり込んでしまった。

「とりあえずここから離れよう。どこかに行った蜘蛛達が戻ってきたらやばい」

 メリルに肩を貸して、拠点としている小川の傍まで移動する。


 からからに乾いた喉を湧き水で潤す。

 ただ相対していただけだというのに、スタミナが減少している。

「あれはシャレにならないな。強いなんてもんじゃない。なんであんなのがこんな序盤の狩り場に配置されてるんだ」

 あのおぞましい姿を思い返すだけで震えが走る。

 メリルは未だに地面にへたりこんだまま動けない。

「おい、大丈夫か?」

 青ざめた顔で俯いているメリルの眼前で手を振る。

「あ、うん……ていうか、ガイはなんで平気なの?動けないどころか、なんかあいつと喋ってたし……」

「日頃の行いじゃないか?いや、冗談は置いておくとして、あえて理由を挙げるなら、MENの効果だろうな」

 精神力を表すMENの値が高いと、精神系の状態異常に耐性が付く。

 ライカンのMEN初期値はかなり低めに設定されているので、恐怖による精神系状態異常をモロに受けてしまったのだろう。

 対してノスフェラトゥのMENの初期値はかなり高い。

 逃げてきた軽戦士もノスフェラトゥだったし、恐らく間違い無いだろう。

「交渉術スキルも未だ低いとは言え、役に立ったようだしな」

 スキルログウインドウには交渉術スキル値上昇ログが連なっている。

 そろそろ10.0に届きそうだ。

 どうやら交渉術スキルは、値切るだけではなく、ああいった知性を持つモンスターとの交渉にも役に立つようだ。

 かの有名な悪魔を召喚して戦うゲームと同じように、彼らを使役できたりするのだろうか?

「うう……あんなのに勝てる気しないよ……」

「ステとスキルが上がれば、案外いけるんじゃないか?とりあえずMENはボス狩りするなら必須だっていうのが今回の収穫か」

「ポジティブな奴……」

「そうでも思わないとやってられねぇよ、あんなの……一度基地に戻るか?もうすぐ日も暮れるし、蜘蛛狩り再開って気分にはなれないだろ」

「そうね。ポーションも買わなきゃだしね」

 未だ恐怖による痺れの抜けないメリルに肩を貸し、大蜘蛛の巣を後にする。

 去り際に山道に一瞥を向けると、ただの暗がりが、大口を開けた異形の顎へと続いているかのような錯覚を覚えた。

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