2人のデスティニー
キンコンカンコンで始まりキンコンカンコンで終わる今日。それが私たちの恋だった。
私と目が合うといつも横を向く君。友達は【避けられているよ】と言うけれど違うよね?だって君と私は運命の2人。出会うべくして出会った羽の無い生きもの。
私、まだ覚えているよ。君が昨日、私の消しゴムを拾ってくれたこと。脳内で【君の悲しみも消してあげたい】って言ってくれたこと。どうして私がお母さんと進路のことでもめたこと知っているの?もしかして私が独りで泣いてたことも知ってる?そんな私を君の言葉が全てを救ってくれたんだよ。
君はきっと未来のことも知っている。私たちが遠い未来に笑顔で結ばれること。何度もほどけたくつひもを2人で結び直すこと。私たちのくつひもはほどけることを知らないはずなのにね。
私は九櫻美鈴、花の17歳。私の君は鳳仙拓海、誕生日はまだだから16歳男子。控えめでシャイな男の子。暗い性格じゃないから友達も多いのに自己主張は少ない人。話すより人の話を聞くタイプ。
ねぇ、友達とばかり一緒にいないで私の話も聞いてよ。心の中で何度もつぶやく、この想い、君に届けと。私の寂しさを満たせる人は君以外いないんだからね、と。
ふと君が窓の外へと目をやった。もし私が瞬間移動できたなら君の視界の中へと飛び込むことができるのに。君の見てる千年桜の木の下で君が忘れられないような笑顔を咲かせることができるのに。
「こら!美鈴。またあっちの世界に行ってるよ!」
「ほへ!?」
私は突然名前を呼ばれ困惑した。たっくんの声じゃない。女の……これはアリスの声だ。
私に声を掛けたのは橋野アリス17歳。獅子座の彼女は男まさりだと自称してるけど、全然、乱暴でも粗野でもないし、たまに言葉使いをイキがっている時はあるけど、それもまあ踏まえてかわいい女の子だ。
「ほへ!?じゃないよ。拓海くんの方を見て目がトロンって、あんた告白されるまで拓海くんに気があること知られたくないんでしょ?もうバレバレよ。拓海くんが鈍感だから気づいてないみたいだけどたぶん拓海くん以外のクラス全員が気づいてるわよ!」
アリスは矢継ぎ早に言う。
「え!?なにそれ?私の恋心は私とアリスだけの秘密だよ。みんな知らないに決まってんじゃん!だって私、アリスにしかそのこと話してないもん!」
「はあ、だから、話さなくても空気読みってのがあるでしょ?」
アリスは眉間に手を当て、顔をしかめた。
「空気なんて見えませんよーだ。空気が読めただなんてただの思い込みだよ。実際に直接訊いたら違ってただなんてザラにあるでしょ。きっと愛や心と一緒、目に見えなく形無いものだから面白くて大切にしたくなるんだよ」
私は笑顔を返した。美鈴はため息をつく。
「あ、美鈴。ため息は酸素の無駄遣いだよ。どうせなら楽しいことを考えよ!」
「ため息はあんたに呆れたからでたの。酸素の無駄遣い?なにそれ?ため息は鬱々(うつうつ)した気持ちを吐き出してくれるの。我慢は身体に良くないでしょ?」
「そうなの?確かに我慢は身体に良くないわね?私のたっくんへの想いを猛牛タックルしたら彼は私の気持ちに応えてくれるかしら?」
私は思わず両ほほに手を当てぶりっこスマイルをつくる。美鈴は死んだ魚のような目で私を見た。
「ないない!受け止めるどころか、ひかれるよ!マタドールのように華麗になんか対処されない!それが普通の人よ!」
美鈴は何をそんなにムキになっている言いようなんだろう?【ひかれる】が私の魅力に【惹かれる】にしか聞こえない。私の鼓動が空へと跳ねた。
「そうよね?【猛牛タックル】なんて鉄板すぎる恋の必殺技よね?南海キャンディーズのシズちゃんもそれで多くの男の心をつかんだと聞くわ」
「はいー!そこー!自分の妄想話をさも当たり前のように話さない!聞く人によればすぐに見やぶられちゃうし、そもそも誰も同調しませーん!」
美鈴は私のおでこに空手チョップを打ち叱る。
「大丈夫であります!私はちゃんと現実世界に居るよ!だって私がなぜ、美鈴にチョップされてるかわからないもん!私は誰~!?此処は何処~!?」
私は頭を抱えて美鈴ににらみをきかした。私はこんなことで引き下がる乙女じゃない!数々の苦難と試練を乗り越え、愛しのたっくんのハートをゲットする運命の人。
キンコンカンコンで始まりキンコンカンコンで終わる今日。そんなのは嘘。私たちの恋に区切りなんて物は存在させない。グローブ片手に奥手なたっくんに愛のラッシュを贈るの。邪魔する者は全て打ち払って見せる。きっと全ての悪を打ち倒した時に左手の薬指に光る何かをたっくんがくれる。優しいキスと一緒に。
私たちは未来を歩く。いくつもの扉を開けて。さあ、詩を歌いましょう!祝福の鐘を未来の教会で鳴らすため!
【世界はまだ始まってすらいない】わ!
ショータイムはこれからよ!
私は両人差し指で角をつくり、たっくんへと猛牛タックルをかましに進んだ。アリスは止めなかった。私も止まらなかった。
大丈夫、私は未来を知っている。たっくんが結構ノリが良いことも!?
今、開いた扉【未来】はどんな顔でこちらを見てるかな?




