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空を舞う  作者: 新浜李恋
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春の夜風

草むらの中に猫がいた。黒と白の、モノクロ猫。

その向こうで、大地が揺れる。砂ぼこりが舞うたびに、聞こえる掛け声。

風は、それを応援するかのように大地を吹き荒らす。


そういうところなのだ、ここは。

ゆったりとした時の流れ。ずっと続くと思ってしまうけど、そうじゃない。

時の流れは、河原に立って上から見てみれば、柔らかな絨毯のようにノラノラとのたっているけど、その川底に足を入れてしまえば、そこからは龍が吹き出す炎のよう。

あっという間に流されて、過ぎ去って、曲がってうねって石にぶつかりながら、その先に青い海を見つける。空と海の青が混ざり合う、本当の青を見つける。


青くて青くて綺麗で、でも儚くて、どこか愛おしく、名残惜しく、その青を見上げるのだ。

温かくて、いやそれ以上に熱くて、冷たい水や凍った水面でさえ、溶けて一緒に流される。


だから、青春。青い春。

青い春だから、青春。



長くて速かった川旅が終わると分かったとき、濃いオレンジが景色を丸ごと包み込む。

熱く差していた太陽の光は、最後に鮮烈な衝撃を与えてから、役目を終えたかのように静かに潜り込む。冷たい海の中に、熱くなった頭と体を冷やすように。


そして現れるのが、藍色。

もうあのときの本当の青色は、二度と見られないと悟る。


そして、夜がやってくる。

春の夜風が、景色を丸ごと包み込む。

それはもはや、春ではない。冷たい風が濡れた体を突き刺し、熱かった体は冷え切り、大人びてゆく。


だから、青春はいい。

一度しか来ない春に、そのときしか見られない青がある。自然の道理には逆らっているけど、自然を操る人間にしか分からないもの。それが青春。


ここは、そういう場所だ。


「校訓 兜坂(かぶとざか)と書いて、青春と読む。

    兜坂生と読んで、川と書く。

    兜坂と書いて、海原と呼ぶ。       」


兜坂高校。ここは、そういう場所だ。

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