朧気
僕は生まれついた才能がある.
誰もそれを理解できないだけだ.
テストで99点を取ったときだって,
その点数に誰も見向きもしない.
みんな100点のヤツしか見ないんだ.
人間は完璧なんかじゃないのに,
誰一人としてそれを認めようとしない.
テスト返却,僕は人間の愚かさを知る.
僕の才能,それは不完全性.
僕だけの才能じゃないところ,
それが僕の才能たるゆえんだ.
人間が完全を目指すこと,
それがいかにおこがましいかを知っている.
そんな当たり前でいて,誰も気がつかないこと.
それを僕だけが知っている.
ささやかな才能.
だから,僕は100%を目指さない.
僕の発揮する100%は,
どこまで行っても99%に過ぎないんだ.
だから,僕は僕であることに満足だ.
不満は完璧を目指すからこそ生じるんだ.
そんな理想を捨てさえすれば,
もっと幸せになれるんだ.
だから僕は,平和も平等も目指さない.
そんな歌は聞きたくない.
愛だって不完全だ.
人の愛なんてすぐに移り変わる.
僕にとって聖人なんてものは怪物に過ぎないと思う.
でもみんな,わかっていないから,
完全に見える人を神のように崇める.
だから,みんな愚かなのだ.
人間はいつか死ぬんだ.
だから,完全もないし,永遠もなく,
ただ滅びるだけなんだ.
この世に存在する数多の存在そのものは,
いつかは滅びるんだ.
僕だけはちゃんとわかっている.
だから祈りもしないし,信じもしない.
それが虚しいと思っているから,
みんないつかは100%になれると信じたがる.
でも,僕には才能があるから,
受け入れるんだ.
僕が僕であることを.
僕がただの人間であることを.
そして,
僕がいつか僕でなくなることを…….
生きててよかった.
死ねるから.
あと少しだけだから…