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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第4章 吹奏楽コンクールへ練習と準備の日々
98/132

98.止まった花火、繋がる友情

開始直後に中止だなんて…。

実はすごく楽しみにしていたから、ショックだった。


あーあ…。

と思っていたら、何度も雷が落ち、勢いの強い雨が降り続ける。


斉藤:「これ…中止で良かったかもな。」

小松:「そうだな…。」


そこへ藤井のお母さんが来た。


「みんな、泊って行けば?

このままだといつ雨あがるかわからない。

道はまだ混雑してて、危なそうだし。

なんか事故とかあったら大変でしょ。

それに、タブレットとか、スマホとかゲームとか、濡れたら使えなくなるよ。

うちはいいから。

みんなのおうちに連絡しておいて、もし必要だったら話しするからね。」


顔を見合わせて、ありがとうございます!と言った後

一斉に、スマホでポチポチ始まる。


「あー、今の子はこうなるか。」

藤井のお母さんはそう言って、俺らを見て苦笑いをした。


俺は

「藤井の家いる、雨だし、混雑してるから、泊まったらって。

だから泊る。明日帰る。」

とメッセージを送信したら、すぐ母さんから電話があった。


「あー、母さ…」

「拓海!いきなり泊まるなんて、ご迷惑でしょ!

雨やんだら、とっとと帰ってきなさい!」

「えー!今、みんな泊まるって連絡してるんだよー。」

と言ってるところで、スマホがひょいっと浮いた。


「あー、藤井です、息子さんからお土産いただいて、ありがとうございまーす。」

俺のスマホで母さんと話し始めた。

みんなでその様子を見守り始める。


「そーんな、気になさることじゃないですよー、

うちじゃよくあることなのでー。

今まだ雨も混雑もすごいし、雨いつ止むか、多分待ってたら夜中になるし、

そんな時間に歩いていたら補導されちゃうじゃないですか。

うちは大丈夫ですよー。」


俺は藤井に

「よく友達泊まるの?」

と聞くと

「うん、父ちゃんとか母ちゃんとかの友達もよく来てるし、

リビングで知らない人が寝転がっているのとこかも見てる。」

と答えた。


…家によって全く違う。

うちじゃ、絶対ありえないだろうな。

今は久実の受験もあるし、

母さんも、人が来る前にきちんと掃除したい、っていうだろうし。


その間に話がついたようで

「お母さんにオッケーもらったからね。」

と言って藤井のお母さんは俺にスマホを渡した。

「あ、ありがとうございます。」

受け取ったスマホの通話は切ってあった。


その後メッセージで

「迷惑かけないように!

もてなされるとかじゃなくて、自分で動くんだよ。」

と来た。

はい、とだけ返信して完了。


その後、他のメンバーも同じような感じで、

藤井のお母さんに話してもらって、無事許可を得た。


藤井のお母さんは、

「明日の朝ごはんは、梅おにぎり、みそ汁、ゆでたまご。

8時ぐらいにいったん声かけるね。」

と言った。


一斉にありがとうございます!とお礼を言った。


明日の朝ごはんの話をしていたら、

急におなかがすいてきた。


「俺、弁当食べたくなった。」

「そうだよね、花火見ながら食べるつもりだったから忘れてた。」

「温めるやつ、あたためるぞー。」

「お願いしまーす。」

「俺もー。」


藤井の家のレンジを借りて少し温めさせてもらった。


花火は見れなかったけど、また夕飯をみんなで食べた。


俺は思わず

「移動教室ってこんな感じだったのかな?」

とつぶやくと

「そんなわけねえじゃん!

飯まずかったし、なんかわからない山登りとかしんどいし、暑いし。

先生よくキレてたし。」

と小松は言った。


「うちのこれを移動教室だと思えばいいんじゃね?

あとで風呂入ろうよ。そんな広くないけどさ。

俺、あとで入るから。

着替えも、父ちゃんがもらってきたけどサイズが小さくて入らない、

わけのわからない柄のTシャツと紙パンツとかある。

下も、洗濯してあるから短パンとかジャージはいとけばいい。

服は洗濯、乾燥するから明日には着られるよ。」


藤井は、お母さんと一緒に色々用意してくれた。


布団はさすがにないとのことで、

クッションをまくらに、タオルケットを一人1枚渡された。


弁当を食べた後は、弁当5人分のごみをみんなで捨てに行き、

お風呂に入った後、雑談。


床にそのまま寝ることになるが、全く気にならない。


スコアを持ってきてはいたが、誰一人取り出すことなく

その夜はゲームで、はしゃぎ疲れて知らない間に寝落ちた。


次の日の朝、目が覚めたのは9時だった。


晴れてる。

多分外はまた暑いだろうな。


部屋には、昨日洗濯から乾燥までしてくれたメンバーの服が

かごにそのまま放り込まれていた。


なんとなく安心した。

これが丁寧にたたまれていたとしたら、だいぶ気を使ってしまう。


いきなり来たのに、朝食5人分って、大変だよな。


藤井はキッチンにみんなを呼び、

紙皿におにぎり3つとゆでたまご2個

紙コップに味噌汁を入れて部屋へ運ばせた。


5人でぼーっとしながら、朝食を食べる。


「このだるさが、またなんとも言えず、心地いいのは何でだろう。」

「自由だから」

「何気に学校と吹部でスケジュールぎちぎちだもんな。」

「たまにゆるくなりたいよな。」


ぼーっとおにぎりを食べながら、まったりと過ごせる。


「明日からまた部活かー!」

「スコアわからん!」

「明日、先輩に聞くわ!」

「俺も!」


朝食食べたら目が覚めてきた。


着替えて、紙皿、紙コップ、紙パンツを捨てて、

Tシャツは、いただいた。


クッションはまとめて、タオルケットは洗濯機へ。


お茶を飲んで、少ししたら、帰るか、となって藤井の家を出た。

そうして、藤井の家を出た。


みんな、ばらばらの方向へ。


なんとなく、ふわふわとした気持ちで歩いていた。


練習はきつかったし、いろんなことがあって辛かった。


それでも——。


学校に来れて良かった。 吹奏楽部に入れて良かった。 友達ができて良かった。


家に着くと——また寝た。

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