09.ホルンって、ミッドフィルダー?
給食の後、昼休憩時に職員室へ向かった。
内田先生の机の前に立つと——
「お、入部する気になったか?」
開口一番、そう言われた。
「あの、仮入部ってできたりしますか?」
尋ねると、先生はしばらく無言だった。
「そう来たか……。」
背もたれに寄りかかり、天を仰ぐ。
「テスト1週間前だから、今日から部活ないんだよね……。」
「え?」
「あ、初テストか。
中学ってテスト1週間前は部活停止。
テスト終わってから部活再開。
まずはテスト頑張って。
終わったら、また見学に来るといい。」
「……そうなんですね。」
「ただ、その頃には、コンクール曲の怒涛練習が始まる。
正直なところ、新入生をもてなすような仮入部期間の雰囲気はなくなると思う。」
内田先生は考えながら、慎重に言葉を選んでいた。
俺も先生も黙り込む。
そして、先生がぽつりと言った。
「入部してくれたら、嬉しい。
ただ、決して甘くはない。
時に厳しい。
黒沢も4月に入部したばかりだけど、合奏練習で数回泣いてる。
でも続けてるのは、楽しいからだと思う。
その楽しいことに誘っただけの感覚だと思う。
全体で賞を目指すのは、やりがいを感じるはず。」
そこでふと疑問に思った。
「先生、僕が——もし、もしですよ、入ったら、どんな楽器ができますか?」
即答だった。
「ホルン」
「……ホルン?」
聞き返すと、先生は音楽の教科書をパラパラめくって、ページを指さす。
そこにはぐるぐると巻かれた金色の楽器。
「これは……カタツムリ、というか……どんな音がするのか、まったく想像つかないです。」
内田先生は軽く笑った。
「まあ、そうだろうね。」
……笑うんだ。
「今1年がいないんだ。
それで困っている。
このままだと、今の1年が2年になった時、先輩がいなくなる。
2年の新人指導、コンクール練習、受験勉強——3年の負担が重くなる。
だから、今の1年にホルンをやってほしいんだよ。」
先生は、少し困ったように話す。
俺は考えながら——思わず、聞いてしまった。
「先生、ホルンってサッカーで言ったら、どのポジションすか?」
「……。」
内田先生は考え込む。
「楽器の種類だけで、あえて言うならミッドフィルダーだろうか。
でも、それだけだと単純すぎるな……。」
先生はさらに言葉を選びながら続ける。
「メロディがフォワード、対旋律がミッドフィルダー、リズムがバック——だとしたら、ホルンはその中間。
楽曲の中で目まぐるしく役割が変わる。
6分の演奏の中でどんどん変わるんだ。」
「……?」
俺の混乱がピークに達する。
「サッカー選手が90分間ずっと全ポジションをこなせると思う?」
「いや、無理ですね……。」
「そういうこと。説明難しいな……こんな質問、初めて聞かれたわ。」
俺は——理解しようとして質問したのに、逆に混乱してしまった。
先生はふっと息を吐き——
「まあ、やってみればいいよ。入部届、出せ、ほら。」
そう言いながら、手をひらひら差し出してくる。
「いや、すみません、また考えてきます!」
言い終わるや否や、ダッシュで職員室を飛び出した——!!