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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第3章 吹奏楽部員として
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82.壊れた壁と広がる空間

教室へ戻ると、いろんな奴が声をかけてきた。


「おい、鈴木、大丈夫か?」

「怪我はしてないのか?」

「たくみん、大丈夫?」

「お前、目赤いぞ。泣いたのか?なんかあった?」

「黒沢どうしたか知ってるか?」

「あいつら、さっき来たけど、何にも言わずに帰る準備してた。 問い詰めてたら、ハゲデブがなぜかキレてたし…。何があったんだ?」


他にも色々聞かれた。 どこまで答えたらいいんだろう?


俺は一息ついて答えた。

「黒沢は肩と首が痛いって。 昨日の怪我だと思う。 早退して病院に行ったんじゃないかな。

あいつら2人は、先生に怒られてたよ。

昨日のこととか、変な噂を言いふらしてたからってさ。

で、俺は大丈夫。」


すると、一気に反応が返ってきた。


「おー、たくみん、良かったよ。」

「お前も散々だったな。まあ、給食で元気出せよ。」

「今日カレーなんだよ!良かったな。クロは残念。あいつの好物なのに。」

「サッカー部の奴は気にするな。俺らもいるからさ。」

「あいつ、ハゲデブに異常に反応するよな。 マジおもろいんだけど。俺らのおもちゃになりつつあるわ。」


賑やかなやり取りが続く。

聞き取れたものには、適当に答えた。


クラスメイトとこんなに話せるようになったのは、黒沢のおかげだと思う。

こんなに輪が広がるとは思わなかった。


そんな発見をしたけど、明日には終業式で夏休み開始だ。


5時間目は夏休みの課題が配られた。


…こんなに!?


漢字、英単語、文法問題集、数学計算確認問題集、地理・歴史ワークブック、 生物問題集…さらに音楽、美術、書道、家庭科、技術まで…。


小学校の時とは比べ物にならない。


有岡先生が、課題の束を手にしながら話し始めた。


「夏休みの時間割は自分で作る。

夏休みというのは、あくまで建前だ。

自分の力で勉強を進める練習時間だと思え。

部活や家族のイベントなどもあるだろうが、 学校でも、授業をしながら運動会や移動教室をこなしてきただろう?

それを今度は、自分で考えて実行すること。

本来なら課題も自分で考えてやらせたいところだが、 そうすると『夏休みだ!わーい!』って、40日間遊び倒すと思うんでな。

親切に用意しておいた。

ありがたく受け取れ、そして取り組め。」


あちこちからぼやく声が聞こえた。


「何か文句でも?」

有岡先生が問いかけると、静まる。


「夏休み明けに課題の理解度テストがある。

ただやるだけで終わらせず、テスト勉強に使うようにしろ。

もちろん成績にも反映されるし、高校入試を考えた内容にもなっている。

今のうちから備えて取り組め。

この課題なんか、高校入試で当たり前に出る問題ばかりなんだから、得でしかない。

まあ、これだけじゃ受験勉強には全然足りないがな。

2年後に焦ってやるんじゃなく、この夏休みから受験勉強を始めろ。」


…高校…。

まだ目の前のことで精いっぱいだった。 そんな先のことだと思っていた。

受験勉強って…どうやるんだろう? 塾に行くのかな?


運動会、移動教室…。 そんな行事があったのか。

その間にみんな、仲良くなっていたんだろうな。


1か月の不登校って、やっぱり大きいんだな。


ぼーっとしていたら、帰りの会まで終わっていた。

そのまま音楽室へ向かう。

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