07.揺れ続ける心
考えながら歩いていた。
学校へ行って、不登校になって、改めて登校しはじめて——なんとなく授業に出て、なんとなく帰る。
今日——何かが違った気がする。
あの音楽室の風景。
同じ学年の奴が、1、2学年上の先輩たちと並んで楽器を演奏する。
それって、すごいことなのかもしれない。
俺にできるのか?
……いや、まったくできる気がしない。
でも——
少しだけ、やってみたいかもしれない。
仮入部って、できるんだろうか?
そんなことを考えながら歩いていると、家に着いた。
「ただいま」
家に入ると、奥から母さんの声。
「お帰り」
「遅かったわね」
「吹部の見学してきた」
その瞬間、母さんの動きが止まる。
「何?」
俺が聞くと、母さんは少し間を置いて——
「吹部? 入るの?」
「うーん……。」
まだ決めていない。
母さんは
「まあ、手洗って、ごはんあるから食べておいて。ちょっと塾へ送ってくる。」
そう言って、妹の塾へ向かった。
妹の受験と、俺の不安
1つ下の妹、久実は受験を控えている。
もしかしたら、俺が不登校になった影響なのかもしれない。
環境の整った学校へ通わせたい——それが親の願いなのはよくわかる。
俺だって、久実には不登校の辛さを味わってほしくない。
合格してほしい。
俺自身、たった1か月程度で学校へ行けるようになったけど……その間は、「行きたい」と思っても、体がベッドから出なかった。
小学校からずっと友達だと思っていた佐藤が、実は俺のことを嫌っていた。
俺がいなければ、そのポジションは佐藤だった——。
その事実を知ったとき、俺の心は折れた。
黒沢だって——もしかしたら、学級委員の責任感かもしれない。
もしかしたら、吹奏楽部の人数を増やしたいだけかもしれない。
だとしても——
どうして、俺はついていった?
テスト対策?
ノートのコピー?
それなら、俺は本当は学校へ行きたいのか?
ごはんを食べながら、ぐるぐると考え続けた。