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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第3章 吹奏楽部員として
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46.部活がない日の男子同士の会話、気楽な時間

授業が終わって、部活の日は音楽室へ行き、

休みの日は黒沢、高坂、バレー部のやつと帰る、

そんなルーティンがなんとなくできつつあった。


部活が休みの日の、何気ない時間が、俺にとっての休息のようなものだった。


部活はもちろん楽しい。

ただ、女子が多く、なんとなく圧を感じたり、先輩に気を使ったり、

先生がいるときの緊張感が半端なかったりするから、

時々こうして息抜きできる日があるのは、とても大切だと思った。


明日には忘れてしまうようなどうでもいい話をしながら帰る。

気楽だ。


高坂がぼやく。


「黒沢と鈴木いいよな。いつも女子とコミュニケーションとれるよなー。」


黒沢は、はぁーっと溜息をついてから言った。


「あれはコミュニケーションじゃない。圧だよ、圧。」


すると高坂がムキになって、つばを飛ばしながら言ってきた。


「とはいえ、あのかわいい二人組と、いつも一緒にいるじゃん。」


黒沢はまた溜息をついてから、低く言った。


「お前がそう見えるなら、教室に来てみろ。音楽室に来てみろ。

あの二人は、お前が思っているような感じじゃない。

ギャンギャンと『黒沢!あーだこーだ!』って、うるさいだけだから。

会話の中身は命令か、たかりだよ。

相手してると、まじで疲れるんだ。

だから軽くスルーしながら、まともに会話しない技術を身につけたんだ。

ただ、最近、それを見抜いてきて、さらに突っ込んでくるから、うっとおしさこの上ない。」


高坂はにやりと笑いながら言った。


「かわいいからいいじゃん。」


黒沢は眉をひそめて答えた。


「正直、そう思えないわ。

あのな、吹部女子を甘く見てると痛い目見るぞ。

この前、練習で暑くなったからって、ノートで顔を仰ぎながら、

目の前でいきなりボタンを外して、

『見てんじゃねーよ。見たな。帰り荷物持てよ』って因縁つけられて。

目の前で、勝手にボタンを外しただけなのに。

どっちかっていうとキモいし、怖いし。

まさか中学の音楽室に美人局がいるとは思わなかったわ。

正直、女を感じない。」


高坂がニヤニヤしながら言った。


「お前、人生損してるぞ。」


黒沢は肩をすくめた。


「じゃあ、お前の次のターゲットはあいつらか。それはそれで面白そうだな……。

お前の手に負えるか、見ものだな。

多分、『当分女はいい……』って泣き顔になると思うけど。」


あ、悪魔の顔になった。

たまにこういう顔を見る。


高坂が俺に聞いてきた。


「鈴木も見たのか?」


俺は首を横に振った。


「俺はまだ、見てない。」


すると高坂が怪訝そうな顔をした。


「まだ、って……見るつもりか?」


俺は慌てて答えた。


「いや、そういう意味じゃなくて。」


黒沢は苦笑しながら言った。


「たくみんは、お前とは違うし、あいつらは女子を盾にして強気だから。

しかもスクラムを組んで、圧というか、アクというか。

でも、お前はそういう女子に、一度打ちのめされるといいかもな。」


バレー部のやつが横から口を挟む。


「あー、失恋と、今度はトラウマを見ることになるのかな?」


高坂は得意げに言った。


「いや、俺の魅力で、両手に花かな!」


黒沢とバレー部は顔を見合わせて、同時に言った。


「今度は失恋とトラウマ確定だから、ゆっくり眺めてみようか。」


高坂は意気込んで言った。


「よし、じゃあ明日から行動だ!」


黒沢は無表情で告げた。


「もうすぐ夏休みだぞ。コンクール練習でピリつくから気をつけてな。」


高坂は満面の笑みで答えた。


「おう!応援サンキュ!」


黒沢はため息混じりに言った。


「してねーけど……。」


バレー部のやつが笑いながら言った。


「ずっとそういうやつじゃん。」


黒沢は、ふっと笑って言った。


「そうだった。」


高坂のルンルン顔と、黒沢とバレー部のやれやれ顔。


こういう会話にちょっと巻き込まれたり、聞いていたり。


本当は小学校時代からこんな雰囲気が大好きだ。



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