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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第2章 番外編:サッカー部
33/132

33.【番外編:サッカー部】女子差別といじめの代償、厳しい警告、部員は何を思うのか

コーチは解任され、顧問は不在となったため、サッカー部は校長の直轄となった。


新しい顧問が決まるまでの間、校長が学校にいる時間を副校長が調整し、活動を続けた。

しかし、練習は週1回に減り、練習試合もできなくなった。


部員たちから不満の声が上がる中、副校長は笑顔で言った。


「廃部でもいいんだよね。女子差別いじめ部活は。」


「あいつらのせいかよ。それでなんで俺らが!」

怒りをあらわにした部員が食ってかかろうとする。

しかし、他の部員が慌てて押さえつけた。


副校長は食ってかかった部員と、それを押さえた部員の顔をひとりひとり見つめる。


ため息をつくと、全員に向かって話し始めた。


「正直に言おう。君たちは恥ずかしいんだよ!

もっと恥ずかしいのは、これに気付けなかった校長先生と僕だ。

今回、渡辺さんが声を上げてくれたことで、ようやく問題が明るみに出た。


これが通用すると思っていたのか! まだわからないのか!」


部員たちは固まった。一部の部員はへたり込んだ。


「実は校長先生と僕は、サッカー部をいったん廃部にするという話をしていた。

君たちがやっていたことは、ただのいじめではない。

パワハラ、セクハラに該当する。

一般社会では法に触れる問題なんだ。

公になれば、学校の名誉にも傷がつく。」


部員たちの顔から血の気が引いていく。


副校長は話を続けた。


「渡辺さんの件は、それほど大きな問題だった。

他にも、君たちの行動について詳細を把握している。

未熟だったから許される——そんなものではないと判断した。


思い当たることはないのか?」


部員たちは視線を落とし始める。


副校長は冷徹な声で言った。


「顔を上げろ。先生の目を見て話を聞け。」


緊張が走る中、副校長は続けた。


「君たちが着替えや物置として利用していたサッカー部室。

渡辺さんはそこでは着替えず、荷物も置かなかったそうだ。


着替えは女子トイレ、荷物は学校で使用しているロッカーに。

入りきらないボールやシューズなどは、サッカー用具倉庫の棚の上に置いていたそうだ。

名前を書いていたはずだから、誰のものかすぐにわかるはずだ。


ボールの空気を抜く必要はあったのか?

サポーターが泥まみれになる状況は何だ?

それでボールでも磨いたのか?」


つい下を向いた部員がいた。


副校長はその部員に歩み寄る。


「目を見て話を聞けと言ったはずだ。」


下を向いた部員は、慌てて顔を上げる。

その拍子に副校長と目が合い、固まってしまった。


「ほかにも色々ある。

もう1人、退部した部員がいるはずだ。

いくら聞いても本人は何も話さなかった。

しかし、それに関する証拠も報告もある。」


部員たちは沈黙したままだ。


副校長は厳しく言った。


「他に証拠を持っている部員は、素直に提出するように。

情報提供の際の秘密は守る。」


副校長は冷たい口調で続けた。


「渡辺さんは謝罪を受け付けないそうだ。

一生許されないことをしたことを覚えておけ。


そして、校長先生が廃部を決断したが、それを覆して存続させたのは渡辺さんの父親であることも申し添えておく。」


一部の部員が驚きの表情を見せた。


副校長は部長に視線を向けた。


「部長、お前は何をしていた?

見ていたはずだろう。何もしなかったのか?

まさか、加わっていたのか?

まさかとは思うが、先頭に立ってやっていたとか、なあ?」


部長は震えながら下を向こうとしたが、副校長の鋭い声が飛んだ。


「目を見ろ!」


部長はすぐに顔を上げた。


「サッカーは紳士のスポーツだ。

今の君らに、サッカーをやる資格はあるのか?」


部員たちは沈黙した。


副校長は問いかけた。


「反論は? あれば聞く。」


しかし、誰も何も言わなかった。


副校長は静かに言った。


「何かあるなら来週の部活のミーティング時に。

それ以外は受け付けない。

今後、緊急で何かをすることも一切ない。」


さらに続ける。


「保護者には、学校からメールでサッカー部の顧問とコーチの解任、新しく決まるまで校長直轄で週1回の活動となることを一斉送信する。


何かあれば、部活動の時間にまとめて受け付けることにする。

理由は自分たちで考えて話せ。

自分のしてしまったことをよく思い出すんだ。


ただし、保護者から渡辺さんの責任を問うような声が学校に届いた場合は容赦しない。

万が一、学校に説明を求められるようなことがあれば、校長先生が直接対応する。」


それだけ言い残し、副校長は校舎へ戻っていった。


翌日、何人かの部員の母親が学校に来たり、電話をかけたりした。

しかし、すべて校長先生が話すと、わずか3分で終わり、それから静かになった。


親同士で話が伝わったのだろう、と推察された。

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