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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第2章 番外編:サッカー部
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31.【番外編:サッカー部】男女差、父親の怒りと学校側の対応

中学生のみなさんは、もう入部し、活動開始している時期でしょうか?


部活動の勧誘、仮入部、本入部、練習開始などの流れは、社会に出たときの人事採用や就職活動、面接、インターン、入社、OJTなどと重なる部分があり、とても貴重な経験になります。


勉強はもちろん大事ですが、部活動もできる限り参加してほしいなと、個人的には思っています。


ただ、決して無理はしないでください。


悩むことがあったら、自分ひとりで抱え込まず、いろんな大人に頼ってください。


相談する中で、嫌なことを思い出し、さらに傷ついてしまうことも残念ながらあります。

それでも、本当に大変なときは、できるだけいろんな人に話してみてください。


親、先生、先輩、役所……あきらめずに相談してほしいです。


すべての人が大事にされるべきだと思っています。


また、もし誰かが相談してきたら、できるだけ寄り添える自分でありたいと思っています。


それでも、もし自分ひとりではどうにもできそうにないと感じたら——悩んでいる人と一緒に、相談できる人を探しに行きます。


成長の挑戦はしてほしい。だけど、理不尽に潰されることは許されません。


これは個人的な思いですが、仕事が休みの日には、そんなことを考えながら、小説を書ける自分を大切にしています。


拙い文章や、うまく伝わらない部分もあるかと思います。

一度最後まで書いたあと、最初から読み直し、伝えたかったことがきちんと伝わる文章に整えていこうと思います。


よろしくお願いいたします。


---


今回は番外編を書いています。


たくみんの後、また新しい被害者が出ました。


女子サッカー部の少なさ——。

先生の労働環境などの問題もあるのかもしれません。


課題は山積しています。

そのうち、編集して別作品にするかもしれません。


舞台は同じなので、このサッカー部員たちとたくみんたちが、そのうち同じ場面で交わることもあるでしょう。


進捗が遅くて、すみません。


書きたい人物も、景色も、音も、気持ちも、ありすぎて——いろいろ追いつきません。


ページビューを見て、ひとりでも読んでくれる人がいることに安心しました。

そして、その方を大切にしたい、という思いがあることをお伝えしたいです。


ありがとうございます。

もしよければ、今後ともゆるく見守っていただけると嬉しいです。


作者、登場人物たち、そして、彼らに重なる現実の中学生たち。

すべてを、よろしくお願いいたします。

今年、新たに渡辺さんという女子部員が入部した。

しかし、思ったことと違うことが多かった。

練習中、遠ざけられているようだった。

それに、いろんな違和感を持つようになっていった。


しばらくして選手からマネージャーへとポジションを変更した。


プレーヤーとしてではなく、分析や戦術、相手の情報収集などの面でチームに貢献しようと考えたのだ。


サッカー部は週5回の練習に加え、土日のどちらかに試合が入る。

スコアの記入だけでなく、顧問やコーチからの指示、部員のフォロー、洗濯などの雑用、試合で負けたときのギスギスした空気——その積み重ねで、渡辺さんのメンタルは限界を迎えた。


6月に入るとすぐに、退部届を持っていった。


顧問と部長は必死で引き止めた。

翌日、渡辺さんの両親が学校に来て、校長室で話し合いが行われた。


そこで特に怒っていたのは、渡辺さんの父親だった。


「事務作業を勉強の時間を削ってやっている。

帰ってきてからゼッケンを洗濯し、干して、朝に持っていく。

『マネージャーならやっておいて』という態度が当たり前になっている。


ここは学校で、先生がいて、外部コーチが偉い顔をしている。

感謝の気持ちも育てられないのか!

うちの娘を何だと思ってる!

おたくの部活の奴隷じゃないんだぞ!」


渡辺さんは本来、マネージャーではなく選手として入部した。


女子サッカー部がなかったから、男子サッカー部に入ったのだ。


しかし、現実は厳しかった。

女子というだけでやりにくさがあり、フィジカルプレーでは体が密着することで動きが制限されることもあった。


試合では、相手チームの選手から誹謗中傷を受けたこともあると聞く。


あれだけなでしこジャパンが活躍したのに、現実は何も変わっていないのか。


落ち込んで、それでも自分を奮い立たせようとして、うまくいかず、また落ち込む——そんなループにはまってしまった。


渡辺さんは選手としてのポジションをいったん引き下がり、大好きなサッカーのそばで何かしたいと考えてマネージャーになった。

しかし、そこでさらに問題が発生した。


特に父親の怒りはすさまじかった。


「なでしこジャパンの苦労を、娘を通して初めて知った気がする。

サッカーをしたい気持ちに、女子も男子も関係ないだろう。


顧問もコーチも、女子だからという理由でどこかで線を引いていたのではないか?

サッカーを一緒にやればよかっただけの話じゃないのか!」


父親は続ける。


「うちの娘は小学校ではスポーツ少年団で女子サッカーをやっていた。

初心者ではなかったはず。

それなのに、初めてサッカーをやる男子がレギュラーになり、娘はベンチにすら入れない。

それでも基本練習を続け、戦力になる日を目指して努力していた。

チームとのコミュニケーションも自ら取った。

メンバーを決めたのは顧問とコーチと聞いている。」


父親は顧問とコーチに詰め寄った。


顧問は答えた。


「サッカーができるからスタメンに入れるとは限りません。

心でつながれるか、チームプレーができるかどうかです。」


すると父親は言い返した。


「だから、そのチームプレーの練習になると、娘を外していたそうですね?

その理由を聞いています。

実力がある人をチームにするのが、あなたたちの指導ではないのですか?」


顧問は言葉を濁した。


「正直、我々の指導の実力不足ではありますが…。」


そう言ったまま、黙り込んでしまった。


ここで退部者を出せば、部活の信頼は落ち、教育委員会からの予算も減る。

部費だけではなく、退部者を出した顧問への評価にも響く——職員会議での報告を考えると気が重い。


渡辺さんの父親は言った。


「別に、娘が決めたことだから、サッカー部に入ったことも、自らマネージャーになったことも、辞めることも、すべて受け入れてきました。

ですが、退部届を受け取らず、マネージャーとして残るよう求めるのはどういうことですか?」


顧問もコーチも、校長先生も黙り込んだ。

父親は、話にならないとつぶやく。


「後日、弁護士を通じて教育委員会経由で退部届を提出しましょうか?」


すると、慌てて校長先生が父親から退部届を受け取った。


「退部届、確かに受理しました。」


顧問とコーチは、父親と目を合わせることができず、目を泳がせるばかりだった。


父親はため息をつきながら言った。


「謝罪の一つでもあるかと思いましたが、ご自分たちのことしか考えていないようですね。」


それでも顧問とコーチは黙ったままだった。


父親は静かにスマホを取り出す。


「今回退部することについて、今後娘に不利なことをされたら、この録画を公表します。

素直に謝罪と退部届の受理をしていただけると思っていましたが、ここまでこじれるとは。

録画しておいてよかったですよ。」


スマホから「ピッ」という録画停止の音が鳴る。


顧問とコーチは、その瞬間、ようやく事態の深刻さに気付き、声をそろえて叫ぶ。


「申し訳ございませんでした!」


父親は笑顔で手を上げ、静止した。


「もう結構です。こちらは退部届を受理していただければ、それで十分です。

今後、一切謝罪は求めませんし、受ける気持ちもありません。」


顧問とコーチは言葉にならない声を発しながら、父親を見つめるしかなかった。


父親は校長先生に向かい、こう話した。


「校長先生にはまだお話があります。お二人は退席いただけますか?」


校長先生は顧問とコーチに、校長室から出るよう促した。


20分ほど話し合いが続き、その後、渡辺さんと両親は笑顔で校長室を出て、帰っていったという。

親は本気を出すときは出す。 モンペ(モンスターペアレント)と言われるかもしれないし、その矛先が自分の子どもに向かうかもしれない。 それでも、自分の子どもを守るために手段は選ばない。 大人げないと思われることもする。


自分は幸運にも、素晴らしい先生に恵まれた。 子どもも親も、先生に救われてきた。


「ダメなことはダメ」とはっきり伝えられ、人を大事にするとはどういうことかを学んだ。 傷つけてしまったら何が悪かったのか、その行為がどれほどの迷惑をかけるのか、 社会で同じことをしたらどうなるのかまで、きっちりと指導してもらった。


だからこそ、安心して逆の「ダメダメアウトなパターン」を表現できると思えた。

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