27.部活帰りの雑談、そして新しい気持ち
帰りのミーティングの後、黒沢とクラスの吹部女子2人と玄関で合流した。
女子のどちらかが「今日どうだった?」とテンション高く聞いてくる。
「先輩たちがすごい親切なんだね。
面倒見がいいというか。初心者だから入るのをためらってたんだけど、もっと早く入部届を出せばよかったかもしれないって思った。」
そう言うと、ポニーテールの子が
「でしょー。来てよかったよー!」
と嬉しそうに答えた。
ツインテールの子が
「入ったから言うけど、合奏練習の時の内田先生、めっちゃ怖いよ」
と言う。
うん、なんとなくわかる。
合奏練習を覗いたとき、厳しい指導が飛び交っていたのを見た。
その勢いで言われることになるんだな。
それも覚悟しての入部。
「覚悟はしてるけど、耐えられるかな…」
不安を口にすると、黒沢が
「覚悟なんて持たなくていい。泣け泣け。」
と軽く言う。
続けて
「俺も泣いたけど、先輩たちだって泣いてる。
でも、泣くことを怖がるより楽器が楽しいことが第一だと思うぞ」
と言うと、女子2人も
「うんうん」
とうなずいている。
「わかった。よろしく」
そう答えると、「もちろーん!」「OK!」と高い声が響いた。
途中から一人になったけれど、最近、この帰り道を充実した気持ちで歩けるようになったのが不思議だ。