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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第1章 迷い(終了から始まり)
26/132

26.ホルンパートへようこそ!

授業が終わり、放課後。


黒沢の後ろについていくと、後ろから来たクラスの吹部女子2人が、俺の両腕をがしっとつかんできた。


「部活へ行くぞー!」

「おー!」


女子2人はテンション高めだった。


若干引き気味の俺に気付いた黒沢が、


「おー、両手に花ってこういうことだな。」


と笑った。


両手に花……というより、連行されているような気分になるのはなぜだろう?


黒沢が音楽室のドアを開け、


「失礼しまーす!」


と入っていく。


その流れで、女子2人に連行される形で、音楽室に入ることになった。




「鈴木は今日、入部届を出してます!」


黒沢が言うと、山田先輩は


「よっしゃー!」


とジャンプした。


デジャヴか……?



ホルンの2人の先輩も駆け寄ってくる。


「もしかして、入ってくれるの?」


藤村先輩が聞く。


「はい、よろしくお願いいたします。」


そう答えると、先輩同士がひしと両手を組み、


「やっと念願の1年生が来ましたね。」

「今年はもう来ないって思っていたから……。」


うっすら涙を浮かべている……。


そんなに期待されても……。


「ほんと、音楽とか全くわからなくて、小学校でも音楽嫌いだったし…。

でもちょっとホルンいいなって思っただけで、たぶん全然役には立てないと思います……。」


そう言うと、


「そんなこと、どーだっていいんだよ!」


と高橋先輩が即答。


続けて藤村先輩が、


「練習は厳しいと思うけど、頑張ろうね!」


と言ってくれた。


初めての世界に飛び込んでみた。


こんなところにいる自分や、人間関係が、ここまで変わるなんて思っていなかった。




少し雑談していると、音楽室のドアが開き——


内田先生が入ってきた。


部員は全員着席する。


俺は黒沢、女子2人、ホルンの先輩たちの近くに座った。


「よろしくお願いします!」


山田先輩の声が響く。


すると、他の部員も一斉に声を揃えて


「よろしくお願いいたします!」


と挨拶した。


山田先輩が「着席」と言うと、部員全員が座る。




一呼吸おいて、内田先生が、


「鈴木、前へ。」


と言う。


恐る恐る、先生の隣へ行く。


「今日から鈴木が入部することになった。

パートはホルン。

ちょっと遅いスタートになるが、フォローしながらみんなでやっていきましょう。

では、鈴木、挨拶。」


そう言われ、


「鈴木です……えっと、今日から入部します……よろしくお願いいたします。」


と挨拶すると——


拍手、バンザーイの声、踊り出す部員——その場が完全にカオスに見えた。



「はい、そこまで。」


内田先生が言うと、部員たちは何事もなかったかのように、すとんと座る。


何? 今の?


完全に戸惑う俺と、内田先生の視線が合う。


「鈴木、今度感情解放のレッスンをする。表現の基礎だ。」


はい?


頭の中が「?」になった。


かんじょーかいほー?



「まだ1年だけでなく、2年、3年でも難しいようなので、近いうちにタイミングを取って全体でレッスンをする。」


内田先生の言葉に、部員たちは声を揃えて、


「はい!」


と返事をする。



「今日から鈴木も、この返事をするようにな。」


と言われて、


「はい。」


と言うと


「声が小さい!」


と即指摘される。


思わず、


「はいっ!」


と声を出したら、裏返った。


「まあいい、今後慣れていくだろう。


今日はパート練習。


明日は合奏で、基礎合奏から課題曲をやる。


18時になったら音楽室集合。」


と言うと、部員と一緒に、


「はい。」


と小さめに返事をした。

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