12.少しずつ、切り替えられそうな気がする
テストは……正直手ごたえがなかった。
黒沢のノートの「ここ出る」は本当に出た。
それでも、全く自信はない——。
後日、テスト結果が返ってきた。
黒沢、学年4位。
俺、補習は免れた。
……バスケ部のあいつは何位だったんだろう?
教室では、黒沢が同じクラスのサッカー部のやつに絡まれていた。
「お前何点だよ~?」
黒沢は無言で98点の答案用紙を広げる。
「俺は見せたんだから、見せろよ。」
圧強め。悪い笑顔。
サッカー部のやつは「俺は……」と、こっそり折り曲げた用紙を黒沢に奪われる——。
黒沢が広げると——
「45点!俺の半分も取れないって? 人に絡んでる場合かよ~!
あ、それとも笑いを取りに来た?」
どんどん悪い顔になっていく。
「黒沢ー、もうそれぐらいにしてやれよー。」
クラスの女子が苦笑しながらたしなめる。
すると——黒沢の目が冷徹になる。
「何? あいつのこと好きなん?」
「先生ー!黒沢がセクハラしてきましたー!セクハラ学級委員!」
「えー、点数で最初にケンカ売ってきたのはあいつなんだけど。」
女子は引き際と判断したようで——。
「冗談だよ。先生、解決でーす。」
有岡先生は、一部始終を無表情で黙って見ていた。
帰り道、一人だった。
黒沢は放課後、学級委員の何かがあるらしい。
家で勉強していた手をいったん休め、考える。
黒沢は、ノートのコピーの間に部活案内のプリントを挟んでいてくれた。
ただし、サッカー部のところは黒く塗りつぶされていた。
その上に赤字で『これはない』と。
俺は思い出し笑いする。
「黒沢と書いて悪魔って読む、って言ってたな。」
味方を探す努力をしていなかったのかもしれない。
でも——今は、少し切り替えられそうな気がする。
それだけでも、良かったと思えた。