ハンモックの妖怪

　妖怪もの、好きなんですよ。

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　網(あみ)の両はしを吊(つ)るして

　そこに横たわるイメージだったけど

　編まれた紐(ひも)やロープじゃなくて

　きちんといちまいのシートになってることに

　まずおどろかされた

　これなら起きたとき 背中や脚(あし)に 網目(あみめ)模様が

　くっきりついてるなんてこともないから

　安心して眠れるねって思ったけど

　そいつは危険な油断だぞ

　ベッドでもそうだよね あんまり寝相(ねぞう)が悪いと

　ハンモックからはころげ落ちる

　くれぐれも 気をつけなきゃなんないよ

　二段ベッドの上の段ほど高くはなくても

　ふつうのベッドよりは高いので ちょっと危ないかも

　ところが べつに寝相(ねぞう)が悪くなくたって

　それで安全ってわけでもない

　なんたって ハンモックには

　野球で言う9回裏の魔物みたいに 妖怪が棲(す)んでいて

　ちょっとひどい悪戯(いたずら)だけど

　べつに寝相(ねぞう)が悪くないはずのひとを

　眠ってるあいだにころげ落とそうとする

　だけど やっぱり ベッドでもそうだよね

　高いところで眠るひとはみんな

　眠ってるあいだに そこからころげ落ちる

　そのリスクを負うことを

　ことばに出さなくたって ちゃんと承知しているはずさ

　それはいわば 暗黙の了解ってやつだ

　眠ってるあいだに ひどい悪戯(いたずら)で

　ころげ落とそうとするやっかいなやつ

　ハンモックの妖怪の存在だって

　暗黙の了解だとしたら きっと

　ころげ落とされたあと 文句は言えないんだろうなあ

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　ハンモックで眠ったこと、ありません。