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東方二次創作【識神譚】  作者: 遊鑼鳴世
第一章 識鏡録
9/72

識鏡録 08 観戦者

この作品は東方Project様の二次創作です。

※オリキャラ多数

※独自設定多数

※キャラ崩壊そこそこ

※投稿不定期

以上の点に注意してお楽しみ下さい。


◆登場人物紹介◆


アンネローゼ・アマリティア

種族:吸血鬼♀(突然変異体) 年齢:不明

血統能力:霧化、影移動、蝙蝠化、浮遊、低次物質顕現、超常再生、血液支配、眷属化、悪魔召喚、魅了、陽光耐性、吸血鬼特攻

技能権能:闘気、鬼覇気、超威圧、闘包霊力

程度の能力:血液が鍵になる程度の能力

得意とする霊術:鬼道術、魔術、妖術、操影術

たまに使う霊術:召喚術

◆魔界の吸血鬼陣営を率いる女王。基本ポンコツ。

「うひゃぁ!? なんて鬼気なの? おっかないわね……」


魔界。鏡也と萃香の模擬戦(?)を遠くから見物している者がいた。


「止めなくてよろしいので?」


「ヴェントノワール卿、私に死ねって言うの!? 無理よあんなの! 私、ザコザコなのよ!?」


そう憤慨するのは、人間なら12歳程度の外見の少女だ。

しかし勿論、魔界にただの人間などいない。

彼女の名はアンネローゼ・アマリティア。

この魔界に住む者なら誰もがこの名前を知っているだろう。


「しかしですな、あれは後々我々の障害になるかと思いますが」


ヴェントノワール大公は『ザコザコ』発言はスルーして話を進める。

彼も吸血鬼(ヴァンパイア)の純血種であり、それも七王家の一つであるノワール家の分家にあたるヴェントノワール家の当主なのである。

そんな彼が敬意を表して対応するに値すると判断する相手。それがアマリティアだ。


「あんなのの相手はジジイに押し付けるに限るわ」


アンネローゼ・アマリティア。

その名は魔界以外に住む吸血鬼からは伝説的なものとして捉えられている。

《鮮血の女王》《殺戮の覇者》《神殺しの吸血鬼》《魂響の純潔》

彼女の二つ名は数あれど、魔界に住む者達からすれば、魔界四大勢力の一つである吸血鬼陣営の盟主にして女王というのが共通の認識だろう。


もう一つの共通認識として、《雑種唯一の突然変異》というものも外せない。

雑種というのは、吸血鬼から血を与えられて眷属として吸血鬼化した者を指す言葉だ。

差別的な意味もあるが、実際に吸血鬼の力は血統に由来する所が大きいのだ。

突然変異体以外は、基本的なスペックで血統の差が覆ることはない。それに雑種には、その突然変異自体が起きないはずだった。


神祖ミレニアムを除けば神代最強の吸血鬼と言われるヴィルヘイヴィア=ミレニアム・ヴァン=ヴァーミリオンに眷属化されたということもあり、アマリティアはあらゆる意味で特別な吸血鬼なのである。


故にヴェントノワール大公は敬意を表して対応する。当のアマリティアがお世辞にも強そうには見えなくても。


種族によって身体的特徴は異なる。

吸血鬼ならば、やはり腰から生えている蝙蝠のような黒い翼こそがその最たるものだろう。

鋭く尖った八重歯もその一つだ。

元人間のアマリティアでもそれらの特徴は有している。


しかし、身体的特徴というのは何もそういった形の違いだけを言うのではない。

食べた物を霊力へ変換する特別な腸を持つなどの体内の特徴もそうだが、外から見えていても知らなければそれと気付けないようなものもある。


吸血鬼は通常、濃紅(クリムゾン・レッド)の髪と瞳を持つ。

そうでないのは貴族級である証であり、特に七王色――金・銀・白・黒・紅・蒼・翠――は純血の証なのだ。

アマリティアの髪と瞳は七王色のどれでもない。当然と言えば当然で、そもそも彼女は七王家の出身ではないのだ。

だがアマリティアの髪と瞳は、むしろ七王色より稀少なものだった。


今や伝説としてすら扱われる吸血鬼(ヴァンパイア)五皇家筆頭、暁の血統の証たるヴァーミリオン色の髪が、より一層彼女の権威を高めているのだ。

瞳は雑種らしく濃紅(クリムゾン・レッド)だが、それもまた彼女の血統を意識させる。

元が人間であればこそ、彼女の伝説的名声に拍車がかかっているのだろう。


そんな生ける伝説とでも言うべき相手だからこそ、ヴェントノワール大公はお世辞にも強そうとは思えない少女にも畏まって対応しているのだ。


「ジジイと言いますと、ぬらりひょんですか」


魔界四大勢力の一つ、妖怪陣営を率いる大妖怪、ぬらりひょん。

妖怪族の全盛期と言われる妖界大戦期に名を馳せた七大妖怪の一人だ。


アマリティアは突然変異体特有の特別な翼を軽く揺らしながら答えた。


「そうよ。あのジジイはよからぬ事を考えていそうだしね」


魔界四大勢力。吸血鬼(ヴァンパイア)族、魔人(デーモン)族、夢魔族、妖怪族をそれぞれ中核とする勢力で、今の拮抗状態に至るまで幾度もの凄惨な戦争を経ている。


各陣営のトップのうち、ぬらりひょん以外は程度の差はあれ争いを嫌っている。

もっともそのせいで近頃魔界に大きな争いはなく人口が増えてきており、不毛とまでは行かずとも不作の大地ばかりである魔界の食料生産力は限界を超えつつあった。


魔界には現在二つの選択肢がある。身内で奪い合うか、幻想郷本土に出て奪うかである。


「よからぬ事、とは?」


アマリティアは肩を竦めて答える。


「今はあのジジイの弁舌で幻想郷本土への侵攻で纏まりつつあるけど、それが怪しいわ。あのジジイ、普段ならむしろ引っ掻き回しにくるのに……」


「なるほど……?」


ヴェントノワール大公はまだ魔界に来て日が浅い。

吸血鬼族は二千年前の大戦において大勢が決した後も外で抗戦を続けていたからだ。

継戦不能な情勢になってすら、軟弱な幻想郷を占領して戦力を整えようとした。

これがいわゆる吸血鬼異変である。

彼ら黒の血族はその後の戦後処理にて魔界への流刑となった。

吸血鬼を纏めて置いていると危険なので、他の血族もバラバラに配所された。


そんな事情により、まだ魔界のことには明るくない。ただでさえ閉鎖的で様々な因縁やしがらみが絡み合った界隈なのだ。無理もないだろう。

ぬらりひょんがどんな人物かはよく知らないのだ。


「とにかく陰湿で陰険な奴だから……」


アマリティアは一人頷いて勝手に納得している。


「さて、そろそろ離れておきましょうか。気付かれているでしょうし」


萃香と鏡也の模擬戦(?)が終わろうとしていることを察知し、アマリティアはそう呟く。


「気付きますか、この距離で?」


(けい)も知っての通り、あれは特別製よ。用心するに越したことはないわ」


伊吹萃香は規格外だ。種族の域を超えた、超常者と呼ばれる領域に至っている。


「そうですな。では、行きましょうか」


元はと言えば侵攻作戦に失敗した場合を想定して退路を確認しに来ただけなので、既に目的は達しているのだ。長居は無用だった。


「うん。まだまだ萃香も健在みたいで喜ぶべきか悲しむべきか困るけれど、それは後でじっくり悩めばいいことだもの」


そう言い、アマリティアは翼を広げる。

薄い菱形の水晶を敷き詰めたかのようなその翼は、黒々しい空に煌めく《創造の月(ゼルヴァルノア)》の淡光を反射して厳かに耀いていた。

切り所が分からず長めになってしまいました。

3/30。前書きのアンネローゼの血統能力に吸血鬼特攻を追記。

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