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東方二次創作【識神譚】  作者: 遊鑼鳴世
第二章 濃霧異変
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濃霧異変 25 旗幟

Twitter→https://x.com/yudora_naruse?t=NXot8S_6i15vALkK1tmwyg&s=09


この作品は東方Project様の二次創作です。

※オリキャラ多数

※独自設定多数

※キャラ崩壊そこそこ

※投稿不定期

以上の点に注意してお楽しみ下さい。

「旗幟……?」


「そうじゃ。おぬしには三つの選択肢がある。

一つ目はわしらと共に戦う道。

二つ目は背理神に降伏し、慈悲を乞う道。

三つ目はおぬしを慕う者を連れ、世界の外へ逃げる道じゃ」


鏡也は背後の二人が緊張で僅かに身を硬くしたことに気付いた。

歴戦の勇士である二人でさえ緊張してしまう程に、この質問の意味は重い。

この選択は慎重に行わなければならないだろう。


戦って勝ち目があるのか。降伏したら助けてもらえるのか。本当に世界の外へ出られるのか。出られたとして、その先は?

考えるべきことは多い。


「降伏は、無いな」


背理神にしてみれば、反抗勢力の旗頭になりうる鏡也を生かしておく理由は無い。

降伏すればもしかしたら配下の者達は命が助かるのかもしれないが、鏡也の命はないということだ。

それだけならばともかく、レフィリアや美波達は鏡也の命が取られるのを黙って見てはいないだろう。

鏡也と鏡也を慕う者達の命を犠牲に、あるかも分からない慈悲を乞う。それはありえない選択肢だった。


「おぬしならそう言うと思っておった。既に紫におぬしを慕っておった者達を集めるよう言ってある」


残る二つの選択肢のどらちを選ぶにせよ、鏡也を慕う者を集めておいて損はない。


「流石に手回しがいいな」


「そうじゃろう。《泥の王》と《竜殺し》は元々居場所が分かっていたからのう。すぐに連れて来れるハズじゃ」


《竜殺し》と聞いた途端、背後の二人の気配が僅かに揺らいだのを感じた。


「どうした?」


「いえ……。《竜殺し》アクルファとはその……合わないので……」


美波は言いづらそうに口ごもった。


「かつておぬしに救い出されてからは丸くなったようじゃったが、昔の気性が消えて無くなるわけでもないからのう。まあ、そういう奴らを上手く纏めてこそおぬしの名があがるというものよ」


萃香は何故か楽しそうに鏡也に告げる。


「いや、俺は別に名をあげたいわけじゃないんだが」


「まあそう言うでない。そうじゃ、これも言っておかねばの」


「ん?なんだ?」


「とっくに滅んだと思っておった象鋼族(ワースチル)が、地下の随分深いところで暮らしておったらしくての。協力を要請したのじゃが、こちらの戦力も何も知らぬ故、まずは視察に来るのじゃ。上手くいけば頼もしい味方になるじゃろう」


「ワースチル……? ってどんな種族なんだ?」


「む? そうか。歴史の本筋に関わらぬ故、省いたのじゃったのう。あれは鋼と骨と武威の神、葦原予洲神(あしはらよずのかみ)の眷族じゃ。まだ地上におった頃は、下位種族最強の種族だと言われておった」


「下位最強か……そりゃまた褒められてるのな微妙なところだな」


下位種族と上位種族の間に明確な区切りは存在しない。

時代によって、上位種族が新たに誕生したことで元々上位にいた種族が下位に落ちたこともある。

つまるところ、神や天使などの真霊種族と規格外な真龍族(ドラグーン)古代人間族(エンシェンター)を除いた残りの人類種族を真ん中で分けたもの、それが上位種族と下位種族なのだ。

下位最強とは、上位種族に匹敵するという褒め言葉に他ならないのである。


「あ奴らは手強いぞ。何せ葦原予洲神(あしはらよずのかみ)は武威の神でもある。その眷族たる奴らは真の(もののふ)なのじゃ」


「おう……。なんだかよく分からないけど凄そうだな……」


「思い出しました。たしか、地上で最初に刀を造った種族ですよね?」


「うむ。スチル風……今の時代で和風と言われる文化の源流を産み出した種族じゃな」


聖刀《古絶》のようにそれ以前から存在すると思われる刀もあるが、それらは製法も製造地も不明である。


「へぇ。和風って言うと、霊奈が着ていた服とか、博麗神社とかのやつだよな。その源流かぁ……」


想像が捗る。象鋼族(ワースチル)、興味深い種族だ。


「視察ってのが来たら合わせてくれないか?。一度見てみたい」


「そう言うと思っておったわ。ちゃんととびきりの美人を寄越すように頼むよう、紫に言っておいたぞ」


「余計なお世話過ぎるだろ……。というかそれ、どうやって頼むつもりなんだよ……」


「さあの。象鋼族(ワースチル)をよく知らぬ者達への印象を良くするため、見目麗しい者にして欲しい……とでも言うのではないか?」


こういう時にシレッと案が出て来るあたり、やはり王族なだけあって場慣れしているのだろう。


「地味に通りそうな案出してくるのやめてくれる……?」


苦い顔をする鏡也を見て、萃香は楽しそうに笑う。


「フフフ。さて、そろそろ聞かせてもらえるか? おぬしの答えを」


「その前に。萃香はどうしたいんだ? それを聞かせてくれないか?」


「わしが……?」


萃香は虚をつかれたような顔になる。


「そうだ。聞かせてくれ」


「……わしは……背理神を殺す。この手で、とは言わぬ。いかなる手を用いても、奴を殺す。滅ぼせはせずとも、せめて一泡吹かせてやる」


静かな殺意。


「そうか。でも、それなら何故俺に逃げるという発想を与えた? 戦って死ぬか、降伏して死ぬか。そう言っておけば俺は迷わず戦うことを選んだはずだ」


たとえ後々その発想にいきついたとしても、その時にはもはや逃げるなどとは言い出せない状況になっていただろう。


「……わしは…………おぬしの義理の伯母じゃ。姪のために命をかけてくれた恩もある。わしは背理神を殺すが、おぬしまで付き合うことはない……とも思っておる……。ここでは無いどこかで、おぬしを慕う者達と幸せに暮らせばよい。きっと毎日楽しいじゃろう」


萃香には萃香の葛藤があった。

背理神を殺す。それを実現出来る可能性が一体どれほどあるのかは分からないが、鏡也の協力を得た方が可能性が高まるのは確かだ。

であればどんな手を使ってでも殺すと誓った以上、鏡也も利用すべきなはずだった。

しかし鏡也は萃香にとって義理の甥であり、短い間だったとはいえ教えを説いた弟子でもある。

そんな鏡也を、勝算の怪しい戦いに巻き込んでいいのだろうか。

自らの意志で戦うと言うのならばともかく、戦うように仕向けることは義に背く行為ではないのか。

それは萃香の優しさであり、甘さであり、愛情だった。


「よくわかった。共に戦おう。鏡に笑顔が映る世をもたらすまで」


「……おぬしならそう言うと思っておった」


その声はとても複雑そうだった。


「止めなくてよいのか? 主をいさめるなら今をおいて他にないぞ」


萃香は静かに佇む二人にそう声をかける。


「我が君がお決めになったことであれば、我らはその実現に全力を尽くすのみです」


「我が君のゆくところであれば、どこへでも。私にとっては、どちらも大した違いはない」


相変わらず覚悟ガンギマリ過ぎな二人であった。


少し休憩を挟み、今後のことを話しあうことになった。


「鏡也。おぬし、とりあえず畜生界に行け」


「え? なんで?」


「レフィリアを回収して来るのじゃ。このままではあやつ……死ぬぞ」


忙しくて遅くなりました

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