濃霧異変 24 龍族の事情
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この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「ただいまー。ん? 客人か?」
鏡也は変装した美波と光凛を連れて人里の家へ帰ってきていた。
家には萃香と、もう一人。
目元を隠した、輝く銀髪の少女がいる。
額からはツノ、背中からは銀翼、腰からは銀の尾が生えていた。
それは龍の特徴だった。
「それでは失礼致します。伊吹様。地上のお菓子、なかなか珍味でございました」
少女はそう言うと、口元に笑みを浮かべたまま鏡也に一つ黙礼すると、何処かへ消えていった。
「よく帰ったの。まあ入れ」
当然のように、萃香が奥から姿を現した。
何やら見慣れぬ袋に手を突っ込んでいる。
「それ、なんだ?」
歩きながらそう尋ねる。
「ん? これか? これはぽてとちっぷすとかいう菓子でな。外で流行っとるのじゃが、中々美味くてのう」
そう言いながら袋の中をまさぐる萃香。
「むう……。なくなってしもうたわ」
「いや、なくなっているの気付いてただろ……。どんだけ食べたいんだよ……」
「今までにない味でつい……の」
そう言って残った袋を握り潰す。
手を開いた時には、もはや何も残っていなかった。手品のようだ。
「伊吹様」
美波は小さく頭を下げて挨拶する。
「おう。壮健そうじゃの。おぬしらが付いて来ているということは、鏡也は本物なのじゃな?」
「……はい。レフィリアも認めました」
「そうかそうか。それは重畳じゃ」
そう言うと、萃香はドカッと勢いよくソファに座る。
「もう家具の配置終わってるし……」
和風の平屋に洋風の家具だが、それほど違和感はない。
なかなか考えられた配置と言えるだろう。
「俺も色々考えてたんだけどなぁ」
とはいえ、これは鏡也の考えていたものより良い配置と言わざるをえない。
これも年の功というものだろうか。
「変えたければ好きに変えればよい。おぬしの家じゃ」
「よく言うよ。会心の出来って顔してるぞ」
「まあの。かなりの自信作じゃ」
「やれやれ。それで……さっきのは誰だ?」
鏡也がソファに座ると、美波と光凛は慣れた様子でその後ろに立つ。
ほとんど名ばかりだったとはいえ、十劉傑は鏡也の護衛だ。
本人達も自分達の実力不足は理解しつつも、決して鏡也を護ることを怠らない。
「あやつか。あやつは龍界からの使者じゃ。ネーラシオン・レイヴ・リュースラとか名乗っておったかの。本来は紫が応対するハズなのじゃが、寝ておるようでな。配下筆頭の妖狐の小娘では格が足らんということで、わしが相手しておったのじゃ」
龍界とは霊界に浮かぶ空界の一つで、その名の通り龍族の住む空界である。
そこからの使者ということはつまり……。
「龍界の? ってことは、とうとう真龍族が動くのか。信用出来るのか?」
2000年前、龍界は動かなかった。
外界からの侵略者、アグレッサーと総称される者達から世界を守る役割を任されたはずの龍族が、肝心な時に動かなかったのだ。
「さての。2000年前の事情は聞いたが……」
「事情?」
「うむ。どうやら背理神以外にも侵略者が来ていたようでな。それの対処に追われておったらしい」
侵略者とは基本的に、終わった世界から逃げ延びた者達である。
新たな居場所を求めて攻めてくる侵略者。
それがアグレッサーなのである。
外界を航界する技術のある者達なのでかなり手強いが、それでも究極の生物である真龍族の敵ではないはずだ。
「……その別の侵略者ってのは?」
「《罪王》センカウラとかいうのらしい。使者が言うには、背理神に恨みをもっていて殺そうとしておるが、世界などお構い無しに戦うから中に入れると世界が滅ぶ危険人物なのじゃと」
「世界が滅ぶか……。また物騒なのが出てきたな。そいつはどうしたんだ? 倒したのか?」
「倒せはしなかったようじゃが、霊力切れで撤退させたらしいの。それ以降は諦めて背理神の手下に狙いを変えたようじゃと」
「背理神の手下?」
「うむ。《異形なる者達の神》と言うらしいが、まあ妖魔どものまとめ役じゃな。それが他の世界を攻めておるらしいのじゃ」
「なんか……どこも大変だな……」
新しい情報が沢山ありすぎてこんがらがって来た。
鏡也は改めて情報を整理していく。
侵略者の存在、それに対抗する龍族、罪王センカウラに異形なる者達の神。
「ん? まてよ? 背理神は侵略者じゃないのか?」
「いや。あれも侵略者の一つじゃ」
「じゃあ、なんで龍族はそっちは放っておいたんだ?」
それは当然の疑問だろう。
現に侵入した背理神の手によって大きな戦が起こされ、多くの命が失われたのだ。
「そこはわしも気になって聞いたがの。どうやら先にセンカウラが来たらしい。この世界の中に既に背理神がいる……と言ってな。いないと言っても納得せずに争いになったのじゃと」
「それでセンカウラに手一杯になったって? 龍族がか?」
「それ程の相手という事じゃろうな。龍族とたった二人でやりあうとは、にわかには信じ難い話じゃが」
「二人? もう一人いるのか?」
「センカウラには一人だけ同行者がいたようでな。リエトと名乗ったらしいが……詳しくは聞いておらぬ。魔族のようだったとは言っておったがの。まあわしらには関係無いことじゃ」
「たしかに。……龍族の事情についてはわかった。で、使者の用件は?」
随分遠回りしたが、それが本題である。
「それを話す前に、聞いておかねばならぬことがある」
萃香はそこで言葉を切ると、どこからともなく取り出した杯に伊吹瓢から酒を注ぐ。
「お主はそこの二人から聞いたのであろう?お主が何者なのか」
「……ああ…………」
「ならば、今の情勢を理解しておるか? しておらんのならば説明してやろう。しておるのであれば……心して答えよ。お主の旗幟を」
遅くなりました。
龍族とは、真龍族、古龍人、龍人族の総称です。




