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東方二次創作【識神譚】  作者: 遊鑼鳴世
第二章 濃霧異変
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濃霧異変 22 これからについての相談2

Twitter→https://x.com/yudora_naruse?t=NXot8S_6i15vALkK1tmwyg&s=09


この作品は東方Project様の二次創作です。

※オリキャラ多数

※独自設定多数

※キャラ崩壊そこそこ

※投稿不定期

以上の点に注意してお楽しみ下さい。

「我が君!!」


心配そうな光凛の声で、鏡也は目を覚ました。


「っ! ……ここは?」


知らない部屋に、とりあえずそう聞いてみる。


「霊廟の中です。我が君」


「そうか。運んでくれたのか。ありがとう」


改めて周囲を観察するが、これと言った特徴の無い部屋だった。

寝台、棚、食卓、火鉢、小さな像にいくつかの小物があるくらいで、人柄を示すものが少ない。


「光凛はここで暮らしてるの?」


「はい。その、我が君をお招きするには不適格かとは思いましたが……」


申し訳なさそうに縮こまる光凛。


「いや、それは全然いいんだけど……」


整理整頓されてはいるが、生活感というものが殆どないのだ。

一体、何を楽しみに生きてきたのだろうか。

そう思った時、小さな像に目が止まる。


「ん? これって……?」


「あ、それは我が君の神像です。星那に頼んで作ってもらいました」


「これ、聖銀(ミスリル)を鏡面処理してあるように見えるんだけど……?」


専門的な加工が必要なはずだ。

一体橙山星那とは何者なのだろうか。


「星那は器用ですからね」


美波が当然のようにそう言うが、聖銀(ミスリル)の加工は鍛冶師でもそうそう出来るものではない。


「そ、そっか……」


だが、これで分かった。

光凛は何かを楽しみに生きてきたのではないのだ。

再び鏡也に仕える日が来ることを毎日祈って、今日まで来たのだと。


「なあ。何か望みはあるか?」


ついそう尋ねてしまう。

唐突過ぎるとはわかっていても、聞かずにはいられなかった。


「望み……ですか? 我が君に仕え、我が君をお護りし、我が君の望まれることを叶えるために全力を尽くすこと……でしょうか」


鏡也のことばかりである。


「そうじゃなくて、自分のしたいことだよ」


「?? 今お答えしましたが……?」


「(……これ、本気だ……)」


「こういう子なのです。気にかけてあげてくださいね」


美波が生暖かい眼差しを向けている。


「ああ。そうするよ。そういえば、美波はどうなんだ? 何か望みはあるか? したいことじゃなくて、欲しいものでもいいけど」


「私ですか? したいこと……。その、ありますが……」


何故か頬を赤らめ、口元を袖で隠す美波。


「抜け駆けはダメ!」


何故か光凛が慌てて口を挟む。


「わかっています。我が君、お心遣いは有難いのですが、それはまた何か功績を挙げた時にでも」


そう言われてしまえば、無理強いは出来ない。


「わかった」


結局美波の望みが何だったのかは聞けなかった鏡也だった。


「して我が君。今後はどう致しましょう。ここに住まれますか?」


この霊廟は交通の便も悪く、結界も張ってある。

鏡也を護るにはかなり都合の良い場所だ。


「いや。人里に住むよ。もう家はあるし」


「ですがそれは……」


二人にしてみれば、いつ刺客が送られてくるとも分からない状況で鏡也を人里に置いておきたくはない。

あそこは対妖怪用の結界などはしっかりしているが、他の種族相手には効果が薄いのだ。

実際に人里では取材と称して翼を隠した天狗がウロチョロしていたり、祭りと聞けばツノを隠し忘れた鬼がノリノリで楽しんでいたりする。

お世辞にも防犯に優れた場所とは言えないだろう。


「元々萃香の監視付きでって話だったし」


実の所それは、鏡也が偽者な可能性を考慮してのことだったので、もはや重要なことではないのだが……。


「(我々が出ていってしまえば、我が君が本物だと喧伝するようなもの。いっそのこと伊吹様にお任せした方が良いのでしょうか……?)」


美波や光凛が傍で護衛してしまえば、それは鏡也が本物だと言っているようなものだ。

それよりは、萃香に任せておいた方が偽者の可能性を残せる。

しかし……


「(我が君を傍でお護りしたい)」


それが偽らざる気持ちだった。

それに、萃香は味方ではあっても仲間では無い。

彼女は鏡也に忠誠を捧げているわけではないのだ。

全面的に任せるというのは不安が残る。

もっとも美波や光凛が傍に居たとしても、萃香に不意打ちされれば為す術はないのだが。

そこは理屈ではなく感情の問題だ。

たとえ為す術なく死ぬことになっても、せめて主君の傍にあって死にたいのだ。

とはいえ、まさか「護りきれる自信が無いのでここに居て下さい」などとは口が裂けても言えない。


「ダメか?」


「……いえ。我が君のお望みであれば、我々もお供します」


「え? 人里に入るのか? それはなんというか……大丈夫なのか?」


「はい。翼は小さくして服の下に隠せば見えませんし、尾も畳めば……私はなんとかなります」


美波はそう言うと、チラリと光凛を見た。

美波は袴姿なので問題無いが、動きやすいように短いスカート姿の光凛は尻尾を隠せない。


「ん? ああ、これじゃ隠せないか」


光凛がそう言うと、彼女の服が透け始める。


「(ちょ……!?)」


「我が君の御前です。よそでやりなさい」


鏡也は表には出さなかったものの内心動揺したが、美波の冷厳な声が割って入る。


「? お目汚しに耐える身体だと自負して……」


「よそでやりなさい」


「……はい」


有無を言わさぬ美波の圧に思わず頷いた光凛はいそいそと部屋の外へ出て行った。


「お目汚ししました」


そう言って戻って来た光凛は、服装がガラリと変わっていた。


「光凛……。その服では人里で目立ちますよ……」


一言で言えば、お忍び中のお姫様だろう。

整った容姿とどこか気品のある服装で、とても綺麗だ。

問題は、明らかに人里の人達が着ていた服装と違うことだろう。

レミリア達が着ていたような、洋服だったのだ。


「変かな? ……どうですか? 我が君」


光凛はそう言ってクルリと回ってみせる。


「よく似合ってるよ。とても綺麗だ」


それは陳腐なセリフだったが、偽らざる本音でもあった。

スカートも長く、尻尾も充分隠せるだろう。

綺麗なのだから、何の問題もない。

そういうことにしておこう。


「……まあ、どのみち我が君がとても目立ちますから、誤差みたいなもの……ですね」


美波は自分を納得させるようにそう呟く。


「ふふん。これで問題なく人里に____」


そこまで言ったところで、光凛は突然口を閉ざす。


「どうした?」


「結界に反応がある。誰か……近付いて来てる」


緊迫した声でそう答えると、光凛は腰の神刀に手を当てて確認し、勢いよく部屋を飛び出した。

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