濃霧異変 18 第三位と第四位
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この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「……私の時は受け入れて下さらなかったのに」
「うっ……」
美波のいじけた声に、鏡也は思わず身を竦める。
「わかった。わかったよ。美波も一緒だ。これからよろしくね」
光凛を受けいれた以上、美波だけ拒絶する訳にもいかないだろう。
「っ! 御意のままに」
まだ仕事も探していないのに、女の子を二人も養わなければならなくなってしまった。
「お金、どうしようかなぁ……」
美女に傅かれるのは素晴らしいことだが、忠誠心は永遠でも無限でもない。
彼女達とて人である以上食事は必要だろうし、忠誠心で腹は膨れないのだ。
「我が君、こちらへ。霊廟を案内いたします」
「自分の霊廟を案内されるのか……。妙な気分だな」
霊廟の中には、雪は積もっていなかった。
凍りついた池、火の灯らぬ燈籠、鏡のように磨き抜かれた石畳。
総じて冷たさを感じさせる、荘厳な霊廟だ。
「思ってたより広いな」
霊廟もそうだが、その敷地もかなり広い。
これだけの建物や敷地を一人で整備したのだとすれば、《橙龍》橙山星那という人物は大建築家と言って差し支えないだろう。
鏡也が感心しつつ呆れている間に、二人の古龍人が不穏な会話を繰り広げてた。
「美波、腕が落ちたのでは?」
「……言ってくれますね。先程は護衛対象がいたから押されただけです」
「我が君の護衛である十劉傑が、護衛対象がいたからと言い訳するわけか……」
「いいでしょう。その挑発……乗ってあげます」
じりっと脚を開いて石畳を踏み締め、腰に帯びた長刀に手をかける。
「調子に乗った小娘には、躾が必要というもの」
「若輩者とナメてかかるから序列を奪われるのよ」
バチバチと幻想の火花を散らし、二人は龍気を立ち上らせた。
「えぇ……。ちょっと目を離した隙になんかバチバチなんだけど……。血の気多すぎじゃね……?」
龍族は平和と平穏を愛する種族だって聞いていたんだけどなぁ……。
そうボヤいているウチに、二人の闘いは始まった。
「「銀龍式抜刀術」」
二人は同時に構え、踏み込む。
「「龍爪銀閃ッッ!!」」
闘気を帯び、銀色に輝く龍気を纏った二振りの神竜刀が激突する!
「あちゃー。石畳割れてるし……」
せっかくの鏡のように磨き抜かれた石畳が台無しだ。
もし自分が建築者なら、ブチギレる自信がある。
その思考を察したわけでもないだろうが、二人の古龍人は翼を大きく打って空へと舞い上がると、空中で激しい剣戟を交わし始めた。
清瀧美波の剣技は、剛剣と呼ぶにふさわしい。
圧倒的な剛力で相手の剣先を叩き落とすことで、鉄壁の防御を実現する。
剛力と技術による、攻めの鉄壁。それが清瀧美波の剣技だ。
「相変わらずの馬鹿力……!」
「貴女こそ。相変わらず速いですね……!」
白峰光凛の剣技は、速さの剣技だ。
突きが主体でやや変化に乏しいが、とにかく速い。
ただでさえ防御の難しい突きを、凄まじい速度で放ってくる。
「シッッ!」
裂帛の気合と共に、凄まじい速度の突きが放たれる。
「ハッッ!」
しかしその切先は、美波が剛剣を合わせて叩き落とした。
突きというのは防ぎづらく、腕を伸ばす分リーチも長い。それでいて殺傷力は高く、何処に刺されても戦闘力は減じるだろう。
しかし弱点も当然存在する。
横から力を加えられると弱く、軌道を逸らされやすいこと。そして腕を伸ばす分連続で放ちづらく隙があることだ。
白峰光凛はその弱点を、速さで克服した。
特別に軟らかい腕の筋肉が、より素早い突きと引き戻しを可能としたのだ。
白峰光凛の突きの剣速は、第ニ位《紫龍》紫垣玲依に匹敵する。
だが、それでも。
「剣技ならば、私が負けることはありません」
剣の腕ならば、美波の方が上だ。
光凛の剣は確かに速い。完全に軌道を逸らせるかと言われれば否だろう。
しかし、掠る程度に抑えることは出来る。
掠る程度であれば、龍気と闘気と龍鱗に守られた美波に傷は付かない。
「ならば、勝てると?」
「…………」
それもまた難しい。
美波の剣技は光凛を上回るが、攻めに特化した光凛の剣を捌くことは出来ても、逆に攻め切るのは難しいのだ。
そしてそこで勝ちきれないからこそ、美波は第四位で、光凛が第三位なのである。
何故なら……
「……宿星の力は、戻っていないのですか」
光凛にはアマテオラの加護がある。
第二位《紫龍》が紫電の宿星ゼオラインに呪われたように、十劉傑の上位三人は古龍人が種族として持つ以外の力を持っている。
美波は上位古龍人であり、その中の上澄みだろう。
しかし、それ以上では無い。
「……それが、知りたかったのね」
美波は普通ならあの程度の挑発に乗ることはない。
照れ隠しくらいの気持ちで放った挑発だったが、ようやく合点がいった。
「いいだろう。我が忠誠の証、とくと見よ。輝きをこの身に。アマテオラッッ!」
南天の星が瞬き、光凛の身から陽光が溢れ出す!
少し遅れてすみません。




