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東方二次創作【識神譚】  作者: 遊鑼鳴世
第二章 濃霧異変
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濃霧異変 14 身に余る忠誠心

Twitter→https://x.com/yudora_naruse?t=NXot8S_6i15vALkK1tmwyg&s=09


この作品は東方Project様の二次創作です。

※オリキャラ多数

※独自設定多数

※キャラ崩壊そこそこ

※投稿不定期

以上の点に注意してお楽しみ下さい。



◆登場人物紹介◆



清瀧美波(きよたきみなみ)

種族:古龍人(ドラゴノイド)♀(先祖返り)年齢:約8000歳

血統能力:真龍変化、身体変化、鱗鎧、龍力、龍域、時空操作、浮遊、低次物質顕現

技能権能:闘気、龍覇気、威圧、闘包霊力

程度の能力:申告無し

得意な霊術:無し

たまに使う霊術:妖術

◆十劉傑第4位《蒼龍》

蒼い長髪を低い位置で後ろに束ねている。

背丈は172cmと高く、実はスタイルが良い。

普段は無口で物静かな性格だが、必要なことはちゃんと口にする。

十劉傑のまとも枠。

「それでは。またのお越しをお待ちしております」


あの後鏡也は一眠りして昼過ぎに目を覚ました。

まだパチュリーは帰ってきていなかったので、お礼はまたの機会にして人里へ戻る。


「ありがとう」


パチュリーが戻って来るまで待つことも考えたが、いつになるか分からない。

夜になればまたレミリアに絡まれるかもしれないので、昼間のうちに退散することにしたのだ。


「ところで……。そこの居眠りさんは放っておいていいの?」


紅魔館の門番、紅美鈴は壁にもたれかかって優雅に昼寝と洒落こんでいた。


「……後で折檻しておきます」


平坦な調子で言うからより怖い。


「あはは……。お手柔らかにね」


咲夜に耳を引っ張られる美鈴の姿を後目に、鏡也は出発した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「色々あったなぁ……」


もうすぐ魔法の森に入るというところで、鏡也はしみじみと思い出す。

色々で済ませられない程に濃い日だった。

忘れられない一日というのはこういうことを言うのだろう。

そんなことを考えていた、その時だった。


「ッ!?」


空から何かが突っ込んでくる。

物凄い速さだ。


主様(マスター)ーー!!」


空から降ってきているのが女の子だと気付いて、鏡也は反射的に受け止めた。


「うわっ!?」


いまだ本調子とは言い難い身体では当然受け止めきれず、倒れ込む。


「いたた……」


「ああ。主様(マスター)主様(マスター)の匂い……!」


空から落ちてきた女の子が、何やら怪しいことを呟きながら鏡也の腹の辺りに頬擦りしていた。

とりあえず危険は無さそうなので、抱き着いている少女を観察する。

艶のある白い髪に、所々黒髪が混じっている。白髪八割、黒髪二割というところだろうか。

綺麗な髪の中から、白と黒の縞模様の虎耳が覗いている。

同じような白と黒の縞模様の可愛らしい尻尾も生えていた。

極めつけは、発される神気だ。

荒々しい……というより、制御が適当と言うべきだろうか。

神気の操作技術は、最も分かりやすく神としての力を測る判断材料となる。

神であれば、まず疎かにはしないものだ。


「すんすん……すんすん……んん? 吸血鬼の臭い……。まさか主様(マスター)、吸血鬼なんかと……!?」


腰の辺りの臭いを嗅いで、不穏なことを言い出す。


「ちょ! 離して……って力強いな!?」


引き剥がそうとしたが、とんでもない馬鹿力でビクともしない。


主様(マスター)力弱ってる……? もしかして今なら……」


少女の目の色が変わる。


「待て待て、お前どこ触って……」


昨晩も似たようなことがあった。

あの時のレミリアは興奮していたが、それは妙案を思いついた高揚とでも言うべきものがほとんどだった。

だがこの少女は……


「ハァ……ハァ……////」


発情している。

このままでは確実に襲われるだろう。

しかし力の差は歴然だ。このままではどうしようもない。


「待て待て待て! ちょ! 助けてくれーー!?」


情けない限りだが、本調子には程遠い今の鏡也では、彼女を振り払うことは出来なかった。


「今すぐに」


空から、もう一つの気配が降りてくる。

煌銀色の飛膜翼を広げたまま、蒼き髪と瞳の少女が静かに着地した。

額からは上方へ向かって曲線を描く二本のツノが生えていて、青い道着にそれより少し濃い青の(はかま)を着ている。腰には大太刀を帯びていた。


「離れなさい」


「ぐぇ……!」


鏡也を襲わんとしている虎耳の少女の首を後ろから鷲掴みにし、無理矢理引き剥がす。

掴みあげられた虎耳の少女は手足をジタバタさせてもがいていた。


「ふぅ。助かった。ありがとう」


そう言いながら、二人を識眼で観察する。

蒼髪の少女はかなり力が強いらしく、普通ならとっくに泡を吹いて失神しているであろうところまで絞まっていた。


「なあ……。それ、大丈夫か? なんか顔青くなって来てるけど……」


神は基本呼吸を必要としないが、首を絞められた際は呼吸困難より先に頸動脈が絞まることが原因で死に至るので、肉体の維持に血液を使っている神だと普通に死ねる。


「お気になさらず。一度殺すだけです」


「それはだけじゃないよね??」


恐らく蘇生系の術か権能を使えるのだろうが、だとしても倫理観というものが欠如した所業に思える。


「主に襲いかかるなど、許されざる不敬。これでも甘い処置というものです。我が君」


主。それに我が君。

分からないことだらけだが、どうやら彼女らは記憶を失う前の知り合いらしかった。


「そうでした。我が君がご自身のことを憶えておられない旨、(ゆかり)から聞いております。ですが、ご安心を。我々は敵ではありません」


蒼髪の少女はそう言うと、事切れたらしい虎耳の少女を離し、膝を折って臣下の礼をとる。


「改めまして。十劉傑(とりゅうけつ)第4位、《蒼龍》清瀧美波(きよたきみなみ)。ふたたび我が忠誠と身命、ツノの先から尾の先端に至るまで、ことごとくを捧げることをお許し下さい」


これは本来、魅力的な願いなのかもしれない。

しかし今の鏡也にとって、彼女は初対面の相手だ。

初対面の相手にいきなりされる願いとしては、これはあまりにも重すぎる。


「いや……でもほら、給料とか払えないし……」


嘘をついている可能性もある。

忠誠心を抱いていると嘘をつき、あること無いことを吹きこもうとしているのかもしれない。

とはいえ、人は忠誠心を疑われると一気に心象を悪くするものだ。

もし本心からの忠誠だった場合、最悪敵対することになりかねない。

故に嘘の可能性については指摘せず、ひとまず現実的な所から突くことにした。

忠誠心で腹は膨れない。どれだけの忠誠心を持っているのかは知らないが、タダで働かせるわけにはいかないだろう。


「不要です。既に返しきれない程の恩を受けております。この名も、太刀も、我が君より賜りました。……人として、扱っていただきました」


その声は、決して激しくは無かった。

それでも鏡也は、山のように静かで堂々とした重みを確かに感じた。


「そう言われてもな……。というか、十劉傑というのは?」


もはや嘘をついているとは思わない。


「十劉傑は____」

2025年6月14日。

前書きの清瀧美波の血統能力へ低次物質顕現を追加。

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