濃霧異変 07 御方とは
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
背理神の反応は迅速だった。
「神域展開。簡易神域:背反宮殿」
ルージェの神域と背理神の神域とがぶつかり合い、空間が振動する。
既に外からは二人の姿は見えない。
少しの間を置いて空間が歪み、何事も無かったかのように二人ごと神域が消え去る。
「え……? 消えた……?」
「亜空間へ移動したのです。亜空間ならば、多少のことでこちらが傷付くことはありませんからね」
それはつまり、神域を展開していてすら余波で現世に影響を与えかねないということでもあった。
「なんだかもう……とんでもないわね……」
格が違い過ぎて実感が湧かない。とでも言うべきだろうか。
「ちょっと!? そろそろこっちを手伝ってくれてもッ! いいんじゃないかなぁ!?」
一人で四腕の妖魔の相手をしていた村紗がヤケクソ気味にそう叫ぶ。
「「あ……」」
霊夢と薙渚は思わず顔を見合わせる。
色々あり過ぎてド忘れしていた。
「当機が代行します」
霊夢達が何かするより早く、アルファが背中から生えている8対16本の触腕を伸ばして四腕の妖魔を捕まえる。
「神域展開。簡易神域:機構神域」
アルファは霊夢達を巻き込まないように神域を展開する。
大小様々な形をした歯車が点々と浮かぶ、歯車の空界だ。
無論神域を展開するまでもなく倒せはするのだが、そうすると余波が周囲の環境に影響を与えかねないのである。
「絶対消陣」
間違いのないように、塵すら残さず滅却する。
アルファにとってはただの雑魚だが、真面目な彼女は手を抜いたりしない。
余波が収まるのを待ち、神域を解除する。
「終わったの……?」
「はい」
「助かったぁ……」
村紗は大きく息をつく。
「いやぁ。正直もうダメかと思ったよ。ありがとう」
「いえ。行きがかりです」
触腕も収納し、何事も無かったかのように佇むアルファは、当然のように質問攻めにされる。
サクッと背理神を倒して帰還する予定だったのが、ルージェのせいで滅茶苦茶だ。
「どうして背理神がここへ来ると分かったの? 貴女達は何を知っているの? 御方……様っていったい何なの?」
「……質問は以上ですか?」
アルファに冷静にそう言われ、霊夢は少し落ち着きを取り戻す。
「ごめんなさい。取り乱したわ……」
霊夢が素直に謝ると、アルファは僅かに微笑んだ。
「素直なのは良いことです。ルージェ様が遊んでおられる間、少しその質問に答えましょうか」
本当は今頃背理神の分霊を瞬殺して御座所へ帰って御方に褒めてもらうつもりだったのだが、寄り道も時には悪くないと思い直す。
「どうして背理神が来ることが分かったのかでしたね。とは申しましても、主様の深遠なるお考えは当機にも分かりかねます。当機は主様のご指示に従っているまでですので」
話すと言ったにも関わらず、具体的なことは何も言っていない。
とはいえこれは仕方がない。事実、アルファは御方の考えなど知らないのだ。
「……じゃあ、御方……様って何者なの?」
危うく呼び捨てにしかけてアルファの視線が厳しくなるが、何とか気付いて修正する。
「何者……ですか」
そう言われると難しい。
アルファにも今の彼を何と言えばいいのかハッキリとは分かっていないのだ。
「そうですね。まず、十の力源をご存知ですか?」
アルファは順を追って話すことにした。
「十の力源……?」
薙渚は馴染みのない言葉に思わず呟く。
「そこから説明しましょうか」
十の力源とは、全ての力の源である十個の要素のことを指す。
魂源、虚無、混沌、変転、定義、痕跡、秩序、万象、概念、因果があり、そのうち概念と因果を除く八つには、力源を宿す者……すなわち超越神が存在する。
「ここまではいいですか?」
「力源を宿していることが超越神の条件だったのね……」
恐らく知っていても特に役に立つ知識ではないのだろうが、知る者の少ない知識であることは確かだろう。
「主様は、言うなれば力源という概念を宿す御方です」
「はぁ!?」
いきなり飛び込んできたそのぶっ飛んだ話に、霊夢は思わず声をあげる。
「ということは……御方様は概念神なのですか?」
薙渚の質問に、アルファは首を振る。
「いえ。あくまで言うなれば、です。力源という概念と言ったのは比喩に過ぎませんが、主様が十個の力源全ての権能を行使出来ることは確かです」
「…………は?」
どう繋がるのかと思っていたが、あまりにも想像をかけ離れたその言葉に、霊夢達は絶句した。
「力源全ての権能を使える……? そんなのまるで……」
「全知全能。まさしく主様のお力を表現するのにふさわしい言葉です」
にわかには信じ難いが、アルファやルージェを従えていることやルーシーの加護の説明はつく。
全知全能をもってして説明が付かない事態があるとも思えないが。
「し、しかし、全知全能ならば全部自分で出来るのでは……?」
疑っているというより、信じきれないという様子の薙渚はそう尋ねる。
「そうですね。では、貴女は自分一人で生活出来るからと言って誰かに世話されることを望まないと言うのですか?」
自活出来る者でも、誰かが身の回りのことをやってくれればと思うことはあるだろう。
「それは……。そうですね。全て自分で出来るのだとしても、全てを自分でやる必要があるわけではない……」
頷いて、アルファは遠い目で空を見上げる。
「かつて当機らも、もはや主様に仕えることが叶わなくなるのでは無いかと怯えたことがありました」
アルファはとても幸福そうな表情で、目を閉じて当時の記憶を思い出していた。
『僕は何も必要としなくなった。でもね、所有物を捨てようとは思わないんだ。だから、これからも僕に仕えてくれるかな?』
アルファの声から発せられたはずのそのセリフは、しかし彼女とは全く別の声だった。
そう、御方の声をそのまま再現したのである。
「主様はそう仰って下さいました……」
当時、アルファはまだ機械族だった。
神を殺すべく造り出された兵器である機械族にとって、物として必要とされることは至上の喜びだったのだ。
さらには疑問形にすることで、物としてだけではなく人格も、人としても必要とされたのである。
これ以上の喜びはなかった。
「(人心掌握が上手い……と言うより、不思議なカリスマのたぐいでしょうか……)」
薙渚は真面目に御方の人物像を考察していた。
「(……なんで惚気を聞かされてるのかしら)」
霊夢は途中から真面目に聞いていなかった。
「ちょっといいか?」
その時、周囲を調べていた妹紅が戻ってきてアルファに話しかけた。
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ネタバレはしませんがキャラや設定への質問などがあればなるべくお答えしようと思っています。




