識鏡録 03 銀髪の少年
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「まったくもう……。いつも喧嘩してるんだから……」
霊奈は井戸から桶に水を汲みながら、そう愚痴をこぼす。
霊夢と萃香はだいたいああして喧嘩している。
じゃれ合いのようなものだとは分かっていても、霊奈は心配だった。
何かの拍子に、萃香が力加減を間違えたら。
霊夢は怪我だけではすまないかも知れない。
鬼人族の身体能力は上位種族でも天人族に次ぐもので、普通の人間程度なら小指の爪くらいでグチャグチャにしてしまえるのだ。
霊夢は多少鍛えているとは言え元々近接戦型ではなく、素の身体能力は普通の人間よりやや高いという程度。怪我ですめば良い方だろう。
もちろん、10万年以上生きているらしい萃香が今更力加減を間違えるとは考えづらい。
わざわざ自分で自分の力を封印しているくらいなのだから、加減には気をつけているに違いない。そうはわかっていても心配は心配なのが人の心の面倒なところなのだろう。
「はぁ……」
ため息をつき、神室に戻る。
先程これから掃除をすると神へ報告したのだ。
何を祀っているのかすら分からない博麗神社とは言え、神室へ入るには事前の報告は必要だ。
万が一罰でも当てられたらたまったものではない。
「失礼いたします」
桶と箒を脇に置き、両手をついて深々と頭を下げる。
毎回こうして礼を尽くすのは真面目さ故でもあるが、コンプレックスからくるものでもあった。
博麗の巫女であり、天才である霊夢ならば、多少の無礼は許してもらえるかもしれない。
でも……
霊奈は自分を失敗者だと思っていた。
14歳にもなって、源の聖眼を欠片も使えていないから。
そんな失敗者である自分は何の価値も無く、少しでも無礼をはたらいたら、容赦なく罰を当てられるに違いない。
霊奈はそう思っていた。
その自信の無さこそが、聖眼を使えていない原因だとは露ほども気付かずに。
「……よし。…………は?」
長い叩頭を終えて顔を上げた霊奈は、自分の眼に映る光景を信じられず、眼を見開いて呆けた。
「……すぅ……」
そこには、人が寝ていた。
先程来た時には誰もいなかったのに、そこには確かに少年が寝ていたのだ。神々しくすら感じる程の人外の美しさをもつ銀髪の少年が。
「…………え?」
現実の光景とは思えなかった。
もしもこの時少年が起き上がり、厳かに「我は神である」とでも言えば、霊奈はすんなりと信じていたかもしれなかった。
何秒固まっていたのだろう。ようやく再起動した霊奈は、大きく息を吸い、出せる限りの声で叫んだ。
「お姉ちゃーーん!!!誰かいるーー!!!」
二人目の主人公、登場。




