識鏡録 38 侵入者と迎撃者
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
寅丸星
種族:虎の妖怪(神性保有)♀ 年齢:2000歳以上
血統能力:財引、浮遊、幽体化
技能権能:妖気、闘気、闘包霊力、神気、威圧
程度の能力:財宝が集まる程度の能力
得意とする霊術:妖術、法術
たまに使う霊術:陰陽術、召喚術
◆毘沙門天の弟子となった虎の妖怪。
中肉で身長は中背よりやや高い。黒の混じった金髪で瞳はオレンジに近い金色。頭に蓮の花のような飾りを付けている。歯がやや尖っていること以外は人間のような姿をしているが、実は神性を帯びてからは元の姿に戻れなくなっている。
基本的に温厚で冷静だが、怒ると手が付けられない。
「なんとか見つからずに入れたかな?」
「めんどくさいわねぇ。なんでコソコソ隠れて行かなきゃならないのよ」
「まったくだわ。あんな雑魚どもなんて蹴散らしてしまえばいいじゃない」
「あのね、命蓮寺の破戒僧が出て来たら面倒でしょ? だからわざわざバレないようにしてるの」
「ふん。生臭坊主なんてぶっ殺してやるわよ」
「そうよ。あんなの敵じゃない!」
見張りをくぐり抜けて人里へ侵入した3人は、そう言い合いながらサガトの元へ向かう。
「はあ……」
リーダー格の少女は、ついついため息をつく。
妹達は血気盛んでいけない。
《命蓮寺の破戒僧》こと阿闍梨の聖 白蓮は、一万人以上の勢力を持つ大勢力命蓮寺の事実上のトップだ。
法術と魔術に精通し、仙術にも造詣が深く1000年の時を生きているという人間離れしたバケモノで、どれほどの戦闘力を秘めているのか検討もつかないが、だからこそ警戒しなければならないのだ。
「(だというのにこの子達ときたら……)」
慎重さというものが欠けている。
後期個体は性能こそ高いがロクな戦闘経験が無いため、どうしても慢心してる者が多いのだ。
そんな彼女らを纏められるのは製造番号一桁台、いわゆる《第一世代》くらいのものである。
だからこそ製造番号007番 個体名『ナナティ』が、たった3人の分隊を率いているのだ。
本来、多くの経験を積んだ貴重な戦力である第一世代がこのような任務に出ているのが異常なのである。
「(やれやれ……)」
帰りたい。もっとも帰るべき場所も特段良い場所というわけではないのだが、この驕り高ぶった妹達のお守りをするよりはマシだ。
そう考えていた時だった。
「そこで止まりなさい。人間ならざる者達よ」
その凛とした声に、足を止める。
人の気配はなかった。それはつまり、集中していたわけではないとはいえ、彼女達の気配察知を掻い潜ることの出来る力量の持ち主に呼び止められたということになる。
殺気立つ妹達を手で抑え、ナナティはにこやかな笑顔を浮かべて応える。
「なんのことでしょう? 私達は人間ですよ」
そう言いつつ、相手を確認する。
「(……っ!)」
思わず舌打ちが漏れかける。最悪の相手でこそなかったが、それに近い相手だった。
「そのような戯言は無意味です。私の鼻は誤魔化せません」
黒の混じった短い金髪。右手には鉾を、左手には宝塔と呼ばれる神器を持つ、虎の妖怪。
「寅丸 星……!」
命蓮寺の、名目上のトップ。信仰対象たる毘沙門天の化身と言われる存在。
実際は化身ではなく弟子にして代理だが、その神力の一端と神器を預けられて今では神性を帯びる存在となっている。
聖白蓮と比べればマシ……かどうかすら怪しい強者であった。
「チッ……」
舌打ちと共に、額をつたう汗。
2番目に会いたくない相手に遭遇してしまったのだ。これが舌打ちせずにやってられるか。
そう思っていると、今度は妹達が口を出す。
「ねぇ、もういいわよね?」
「さっさとぶっ殺しましょ」
そう言って抜剣する妹達。勝てると信じて疑ってないようだ。
「……いいでしょう。何者か知りませんが、三人纏めてかかってきなさい」
そのセリフを聞いて、ナナティは妹達を抑えるのを諦めた。
こうも挑発されては、もはや抑えは効かない。
「「なめるなァァァッ!!」」
激昂して地を蹴る2人。
寅丸が想定していたより速いが、想像を超えるほどではない。
「灼き尽くせ! 宝塔!」
宝塔の中で光が高まり、僅かな溜めの後に撃ち出す!
「散開ッ!」
指揮系統上従うように刷り込まれている言葉を、ナナティは咄嗟に叫んだ。
妹達は咄嗟に反応し、横へ跳ぶ。
直後、寅丸の前方70度程の範囲を滅光が灼き払う。
人里なので、これでもかなり威力は抑えている。
宝塔の力の正体は、内部にある宝石が放つ滅びの光を収束して発射するというものだ。
本来宝塔とは、滅びの宝石の力が外に漏れないように保管するためのものなのだ。
「気を付けて! あれは毘沙門天の神器よ!」
驕り高ぶった妹達も、あの威力を目の当たりにして毘沙門天の名を出されたことで、流石に意識を改める。
「ほう? まだやるつもりですか。素直に降参しておとなしくしてくれると助かるのですが……」
ナナティは嫌々ながらその申し出を拒絶する。
本音を言えば戦いたくないのだが、任務である以上是非もない。
「そういうわけにもいきません。……2人とも、合わせるから好きにやりなさい」
「そうこなくっちゃ!」
一人が勇んで突っ込めば、負けじともう一人が続く。
それをナナティがバックアップするために動く。
即席で組まれたメンツにしてはなかなかの連携だ。
「はあっ!」
左から迫る剣を、寅丸は右手の槍を合わせて対応する。
「むっ!」
両手で振るわれた攻撃を片手で持った槍で受けたとはいえ、想定以上の重さだ。
「障壁!」
わずかに遅れて迫る右からの剣撃は、宝塔で障壁を張って防ぐ。
滅びの宝石を保管するための神器である宝塔には、当然外からの脅威に対抗するための防御機能があるのだ。
「何よこれ!? 硬い!」
それを見て、ナナティは即座に解結術を唱える。
「なっ!? 解結術が効かない! 権能による結界だわ!」
霊術は物理に優越し、物理は権能に優越し、権能は霊術に優越する。
不可能ではないが、権能で作られた結界を霊術で解除するのは難しいのだ。
「なら……!」
ナナティは腰の剣を逆手に握った。
「《因果解放》……!」
ナナティの身体から淡い光が漏れ出てくる。
「閃空円斬・裏……!」
逆手に抜き放たれた斬撃が、結界を斬り開く!
「なっ!?」
「閃空連斬・裏五連!」
迫り来る五つの斬撃を、寅丸は間一髪で飛びずさって躱す。
「今のを避けるとは……」
ナナティがそう呟いている間にも、妹達が隙なく追撃を仕掛けようと動いている。
「宝塔:レディアントトレジャー!」
宝塔が滅光と弾幕を放って追撃を妨害し、両者は同時に距離をとった。
「三人相手とはいえ……少し見誤っていたようですね」
そう言うなり寅丸は長大な詠唱に入る。
「唱えさせるな!」
ナナティの号令の元、三人は距離を詰めにかかった。
しかし宝塔が滅光をチラつかせ、接近を抑制する。
「何よあれ! いくらでも撃てるの!?」
「まさか! それなら聖白蓮より寅丸星の方が強いと言われてるはずだわ! きっと何か弱点があるはずよ!」
しかし、それを探していては詠唱を完了されてしまう。
「近づけないなら……!」
「合わせて!」
「「「《因果解放》!!! 閃空斬月ッ!!!」」」
飛ぶ斬撃。因果の力を乗せて放ったそれは一撃で宝塔の結界を斬り裂き、残る二撃が寅丸に迫る。
「__今真理を悟りて仏界へと至らん!《瞬世菩薩》」
寅丸の背に光輪が浮かび、後光が耀く……!
サガトとナナティの登場人物紹介はしばらくお待ちください




