識鏡録 37 伝説級の大物
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
博麗の巫女がいつか勘づくことは想定していた。そのための対策も練っていた。
しかし……。
鬼が出てくるのは聞いていない。
それも《鬼王三童》なんていう伝説級の大物など、想定どころか想像すらしていなかった。
あんなもの、人間の勝てる相手ではない。
元々念を入れて増援を呼んでおいたのが不幸中の幸いだが、到着まで時間を稼がなければならないのが難しいところだ。
「鬼の王が、何故巫女に味方する?」
「わしも管理者の端くれなのでな。それに、弟子を可愛いがってくれた礼もせねばならぬ」
コキコキと首を鳴らしながら、そううそぶく萃香。
「さて。わしが名乗ったのじゃ。おぬしも名乗るがよい。然らば決闘として扱ってやろう。命だけは勘弁してやる」
なんとも物騒なことである。
「……人里で人間を殺すつもりか?」
人里は人間のテリトリーだ。そこで人間を殺してしまえば、幻想郷の現体制を揺るがしかねない。
それは管理者として避けねばならないことのはずだった。
「なに、人里の連中に知られなければいいだけの話じゃ」
萃香はケロりと言い放つ。嘘を嫌う彼女ではあるが、それは嘘さえつかなければいいということでもある。
相手の勘違いなどは存分に利用するタチなのだ。
「さて、最終勧告じゃ。名乗るがよい。さもなくば……」
萃香から、失神してしまいそうになる程の殺気が放たれる。
固まりそうになるのをぐっと堪え、口を開いた。
「サガトだ。相倉サガト」
「アイクラ……? はて、どこかで聞いたことがあるような気がするのう……」
萃香がそう首を傾げたその瞬間、サガトが仕掛ける。
「振動呪術……!」
狙いは首。ここに命中すれば、殺せないまでも脳を揺らすことでダメージくらいは与えられるはずだ。
人間であれば確実に死に至らしめる一撃。
博麗の巫女ですら脚を使い物にならなくされた一撃が、萃香に直撃する。
「……ぬるい!」
萃香は能力で振動を拡散させて威力を殺す。
あまりにも便利過ぎる能力だ。
萃香の手がサガトに迫る。魔の手ならぬ鬼の手だ。
命だけは勘弁してやるという言葉通り、その手は拳でも掌底でもなかった。
だが、その手に捉えられれば最後であることには変わりない。
サガトは歯を食いしばって何とか避ける。
「ほう。今のを避けるか。筋が良いのう。師が優秀とみえる」
そう言いながらも、萃香はサガトがギリギリ避けれる速度で次々と腕を走らせる。
「……遊んでいるのか!」
「なに。もう少しでアイクラという名について思い出せそうなのじゃ」
敵として認識されてすらいない。
好都合ではあるが、癪に障る。ラッキーと割り切れる程サガトは成熟してはいなかった。
「チッ!」
攻撃に転じてみるも、軽くいなされる。
「呪いか。残念じゃが霊力が違い過ぎるのう。わしには効かぬようじゃ」
格が違い過ぎる。手も足も出ないのが現実だった。
「(増援はまだなのか……!)」
増援に来るはずの者の身体能力ならば、そろそろ着いてもいい頃のはずだ。
「(サボってるんじゃないだろうな……!)」
サガトは苛立ちと不安の中で到着を待つのだった。




