識鏡録 33 ノクティスとシルビア
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
ノクティス・フォン・ヴァイオレット
種族:吸血鬼族♂。年齢:約1800歳
血統能力:霧化、影移動、蝙蝠化、浮遊、低次物質顕現、超速再生、血液操作、眷属化、悪魔召喚、魅了
技能権能:闘気、鬼気、威圧、闘包霊力
程度の能力:宵闇を統べる程度の能力
よく使う霊術:鬼道術、魔術、操影術
たまに使う霊術:召喚術、妖術
◆吸血鬼七王家、青の王家ブルーレル家と紅の王家スカーレット家を祖に持つヴァイオレット公爵家の現当主。レミリアの従兄でもある。
貴公子然とした容姿の美少年。
シルビア・フォン・グリューネワルト
種族:吸血鬼♀。年齢:約2200歳。
血統能力:霧化、影移動、蝙蝠化、浮遊、低次物質顕現、超速再生、血液操作、眷属化、悪魔召喚、魅了
技能権能:闘気、鬼気、威圧
程度の能力:気体を操る程度の能力
よく使う霊術:鬼道術、魔術、操影術
たまに使う霊術:召喚術、妖術
◆吸血鬼七王家の一つ、グリューネシルト家の親戚の傍系にあたる侯爵。
幼い頃に王都グリューネベルクの滅亡を目の当たりにしている。
紅魔館内部。とある一室。
「わわ……。けっこう揺れますね」
地鳴りを響かせて浮上する紅魔館は、さすがに揺れを抑えられていなかった。
せっかくの紅茶が零れてしまい、少女は翠色の瞳を眇めた。
「まあ、そう言うな。レミィだってたまには暴れた方がいいよ。ずっと肩肘を張られてるとこっちもやりにくいしね」
そう応えたのは、対面に座るヴァイオレットの髪と瞳をもつ吸血鬼の少年だった。
彼の名は、ノクティス・フォン・ヴァイオレット。
吸血鬼族の名家であるヴァイオレット家の現当主にして、レミリアの従兄である。
「それはわかりますけど……。せめて事前に一言欲しいものです」
そう言って可愛らしく頬を膨らませている翠色の髪と瞳の吸血鬼の少女の名は、シルビア・フォン・グリューネワルト。
緑の王家であるグリューネシルト家の親戚、グリューネワルト大公家の傍系にあたる彼女だが、今やレミリアの数少ない吸血鬼の臣下の一人だ。
「それはたしかに」
クスリと笑うノクティスは、貴族らしく貴公子的な容姿の奥で思考を巡らせていた。
彼は2000年前の大戦を経験しておらず、外でレミリアと闘っている男の気配にももちろん憶えはなかった。
「それにしてもあの男、何者だろうね?」
当然、そうなる。名前を知っているレミリアはその正体をほぼ確信しているが、そうでなければわかりようがないのだ。
「男なのですか?」
ノクティスは先程窓から見える位置に来た際に確認したが、紅茶を楽しんでいたシルビアはその姿を見逃していた。
「うん。僕と同じくらいかな。人間みたいだから、実際はうんと下だろうけど」
紅茶を淹れなおすようにメイドに指示しつつ、ノクティスは答える。
「同じくらい……。人間の男の子ですか……!」
「嬉しそうだね?」
「わたし、歳下が好みなので」
シルビアは歳下の男子を目の前にして堂々とそう言った。
「ああ……。そうだったね」
彼女のやけに歳下の世話を焼こうとする性質を思い出し、ノクティスは適当に相槌を打つ。
人間なんてほぼ全部歳下なのだが。
「それで、どう思う? 人里に神器を使う人間がいるなんて聞いた憶えはないんだけど」
レミリアは妖精メイドを大量に雇い入れ、さらには紅魔館の要塞化も進めている。
長い抗戦で財政難にあったはずのスカーレット家は、一体どこから資金を捻出したのか。
その答えが、人里にある。
レミリアは紅魔館を担保に大金を借り入れ、それを元手に人里の店の多くのオーナーになった。
つまりは資本家になったのである。
数万人規模の経済活動から利益を吸い上げられれば、その額はかなりのものになる。
まだ借金返済には至っていないが、収支に問題は無い。
かなりの返済期間にはなるが、長命種である吸血鬼にとっては一代のうちにどうにか出来る範囲であった。
そういう経緯もあり、実はお忍びで人里へ行くこともあるのだ。
そんな彼らも、レミリアに不夜城を起動させる程の男など聞いたことがない。
「たしかに、聞いたことがありません。しかし、人里以外にも人間はいるのではありませんか?」
「人里以外か……」
人間の戦力は、そう多くはない。
そもそも上位種族とまともにやりあえる領域に到達する人間が稀なのだ。
博麗やノーレッジなどの特殊な血統であれば話は変わってくるが、もちろんそういった血統はそれこそ希少だ。
しかし、まったくいないというわけでもない。
「仙境の者ならば、あるいは……」
仙境。あるいは仙界。
北方連山の樹海のどこかにあるというそこには、仙人達が住んでいるという。
「なるほどね。その可能性もあるか。それにしては仙術を使ってないみたいだけど……」
「さて。正体を隠しているのやも知れません。いずれにせよ、ここで話し合っても埒が開きませんね」
「違いない。あとでレミィに聞いてみようか」
二人とも、最初から結論が出ないことは理解していた。
これは、暇つぶしを兼ねたほんの思考遊戯に過ぎないのだ。
「ノクティス様はどう予想しますか?」
逆に問われ、ノクティスは少考する。
「そうだね。あれは人間のフリをしている別の種族だと思う。妖怪かとも思ったけど、にしては神剣の反応が妙だよね。まるで共鳴してるみたいな……。だから、あれは概念神だと予想するよ」
その答えにシルビアは驚いた表情を見せるものの、すぐに思い直したように真剣な表情に変わる。
「それは……」
背理神は神々の力を削ぐために、地上への降臨を禁じた。
そのため、外ではもはや神は空想の存在だと思う者の方が多い。
当然神々に詳しい者などほとんどおらず、知られていない神もたくさんいることだろう。
しかし、幻想郷は違う。
幻想郷の神々は、自分の神域か地上に住んでいる。
そのため、ほとんどは名前や容姿が知られているのだ。
紅魔館勢は幻想郷へ来てからまだ長くは無いが、それでもパチュリー・ノーレッジを抱えているため情報にはかなり通じている。
にもかかわらず、知識にない神。
それが意味する可能性は2つ。
一つは《痕跡の図書館》において禁書庫と呼ばれる領域、閲覧妨害をしてのける程の者の情報が納められているというその場所に置かれている程の神である可能性。
超越神であるユグドラシルの権能を直接妨害することは出来ない。
しかし《痕跡の図書館》に全ての情報が載ることは避けられなくとも、閲覧を妨害することくらいは権能によっては可能である。
もちろん、ユグドラシル本人の閲覧を妨害することは不可能だが、他の者の閲覧であれば話は違ってくるのだ。
そういった者達の《痕跡の書》を納めているのが禁書庫なのだ。
そしてもう一つの可能性。背理神によって送り込まれた、外からの侵略者あるいはその手先という可能性だ。
幻想郷は簡単には侵入出来ないが、侵入者検知が人力によるものなので、不可能というわけではない。
こちらは充分ありえる話だった。
「やはり、そろそろ始まるとお考えですか。外の者達の侵略は……」
「いいや。もう始まっていてもおかしくない……。ううん。これも違うかな。そう、もう始まってると見て動いた方がいい。多分レミィも、そう考えて急いでいるんじゃないかな」
幻想郷から偽りの平和が失われる日は、もうそう遠くないのかもしれない。
 




