識鏡録 26 地下大図書館の館長
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
小悪魔
種族:悪魔族♀(準爵級) 年齢:推定1万歳以上
血統能力:魔法支配、下剋上、魔術耐性、魔法耐性、霊術耐性、精神攻撃耐性、天使特攻、霊体化、浮遊、低次物質顕現、影移動
技能権能:魔気
程度の能力:申告無し
◆パチュリー・ノーレッジに召喚され、契約に応じた悪魔。悪魔なので一応色々な力を持ってはいるのだが、知能が低いので活かせていない。
「こちらです」
「へぇ……!」
咲夜に案内されてたどり着いたのは、巨大な図書館だった。
紅魔館地下大図書館。
それは、パチュリー・ノーレッジが集めた知識が収められた、幻想郷有数の知識庫である。
「これは凄いな。いったい何冊あるんだ?」
「ざっと4208万冊よ。ようこそ、私の図書館へ。貴方が識神鏡也よね? 初めまして。私は《世界樹の図書館》の番人たる大精霊ノーレンジーザが末裔、パチュリー・ノーレッジよ。種族は人間で魔術師。よろしくお願いするわ」
「……お、おう」
本から目を離さずに自己紹介するパチュリーに困惑しつつも、鏡也は応える。
「俺は識神鏡也。多分人間だ」
「(人間?? これが人間の容姿だと言うの……?)」
チラリと鏡也へ視線をむけたパチュリーは、ついそう思ってしまった。
鏡也を見た誰もが思うことだが、人間にはありえない程の美しさなのである。
惚れた腫れたの次元を超え、魅力的と言うより神秘的な域にまで達した美貌。
ただ「美しい」と言うだけではとても足りないことは確かだ。
「……私はこれで失礼致します」
「ええ。ワガママを聞いてくれてありがとう」
咲夜は瀟洒に一礼すると、姿を消した。
「……貴方が来るのを待っていたわ」
「キミもか。俺も随分有名人になったものだなぁ……」
パチュリーは読んでいた本を閉じ、鏡也と目を合わせる。
これはかなり珍しいことだ。
鏡也の美貌を直視するのは、かなり覚悟のいることなのである。
「気にもなるわよ。レミィがここ最近今か今かと貴方が来るのを楽しみにしていたんだもの。こんなことは滅多に……いいえ、初めてのことだわ」
「いやほんと……随分期待されてるみたいだな……。なんでかはさっぱり分からないけど……」
困惑するしかない。見たこともない人に、よく分からない期待をかけられているのだから。
一体何を期待されているのか。それすらも分からない。
あまり良い予感はしないのだが。
「その顔だと、薄々察しているようね。大丈夫よ。少なくとも殺されはしないわ」
鏡也は思わず渋顔になる。
「出来ればもう少し安心出来るところまで保証して欲しいものだな……」
「それは難しいわね。レミィも吸血鬼族だもの。ある程度力を示す必要はあるわよ。私のようにね……」
ほとんどの吸血鬼にとって人間族などというものは食事であるに過ぎないのだ。
それはレミリアとて同じことであり、霊夢や魔理沙、パチュリーや咲夜のように力を示して人格を尊重させなければならない。
「別に勝たなくていいのよ。楽しませてあげられれば、ね」
「楽しませる……か」
「貴方なら出来るわよ。自信を持ちなさい」
「……根拠はあるのかな」
萃香から聞かされた吸血鬼の数々の血統能力を思い出して戦慄しつつも、鏡也はそう尋ねる。
「私は《世界樹の図書館》へのアクセス権を持っているの。だから貴方のことも調べさせてもらったわ」
「ッ!?」
それは衝撃的なセリフだった。
「まさか……俺が失ってしまったところまで知ってるのか……?」
パチュリーはこともなげに頷いた。
「ええ。知りたいかしら?」
そう尋ねられ、鏡也はすぐには答えられなかった。
記憶を失った理由が分からないからだ。
何かつらい過去をもっていて、聞かなければ良かったと思うことになるかもしれない。
「(知りたい……!)」
口から漏れかけるその言葉をなんとか押しとどめ、慎重に思考を重ねる。
やがて……
「いや。やめておくよ。必要に迫られたらきっと思い出す。そんな気がする」
過去を恐れたのではない。
人に聞かされるのは違うと感じたのだった。
「そう。なら、一つ助言をしてあげるわ」
意外でもなさそうに、パチュリーはそう言って続けた。
「今の貴方では、レミィを楽しませるには足りないわ。賓客として扱われるのもこれが最初で最後になるでしょうね」
その言葉は辛辣だが、真実を突いている。
鏡也自身、薄々は感じていた。
手加減している30%体の萃香相手にかすり傷一つ付けられない現状で、はたして吸血鬼相手に通用するのか? その疑問は常に鏡也の中にあったのである。
「まあ、そうだろうね……」
「最後まで聞きなさい。貴方が忘れている力の一部でも出せれば、可能性はあると思うわ」
「……忘れている力……か……」
そう言われても、ピンとは来ない。
しかしとりあえず、今はまだ自分の限界には達していないらしい。
それを知れただけでも充分だった。
「助言ありがとう」
「なんてことないわ。もっと話していたいのだけれど、私は調べ物があって《世界樹の図書館》へ行かねばならないの。留守はコアに任せて行くから、読みたい本があったらコアに聞いてちょうだい」
パチュリーはそう言って本を置き、立ち上がる。
「コア?」
「私が契約している準爵級悪魔よ。名前が無いから、小悪魔を略してコアと呼んでいるの」
そう言いながら、パチュリーは近くのテーブルから呼び鈴を持ち上げると、軽く揺らした。
音は鳴らなかったが、気配が一つ近付いて来る。
やがて見えてきたのは、何とも中途半端な姿をした赤髪の少女だった。
ロングスカートの下から覗く先端がハート型の暗黒色の尻尾と側頭部から生える小さな羽はサキュバスのものに類似しているが、背中から生える翼はコウモリのような飛膜翼で、これは吸血鬼の特徴なのだ。ただし、吸血鬼の翼は背中では無く腰から生えているのだが。
「お呼びですか~? パチュリーさま~」
少々間延びした声は、大量の本を抱えているが故に素早く駆けつけられないためだろう。
恐らく、彼女はあまり頭が良くないのだろう。
妖精メイドを怖がらせないように悪魔の特徴を隠そうとして擬態しているのだろうが、あまりにチグハグ過ぎる。
「私は調べ物があるから、彼の案内を任せるわ。いいわね?」
「彼?」
本を抱え過ぎて前が見えていなかったコアは、首を傾けて初めて鏡也の顔を見る。
「へ……? あっ!?」
一瞬呆然となり、本を落としてしまう。
だが、その本が地面に衝突することはなかった。
予想していたのか、パチュリーがギリギリのところで浮かせたからだ。
「気をつけなさい。じゃあ、頼んだわよ」
静かに注意だけすると、パチュリーは奥へ去って行った。
拙作の悪魔には細かい等級がありますが、今回は小悪魔に関係する部分だけ解説します。
悪魔は悪魔でも、その全員が『人類種族』としての悪魔族というわけではありません。
人類種族としての条件は、「人の魂を持ち、人類共通言語を操れること」ですが、この条件を満たす悪魔は貴族級からで、
下位悪魔
中位悪魔
上位悪魔
高位悪魔
までは自我が未発達で人類共通言語を操れず、『人類種族』には入りません。
小悪魔は高位悪魔の上、貴族級悪魔の中で最下位の準爵級なので、まだ人類共通言語を操れるようになってそう時間が経っていない(ので知能が低い)ということになります。
ちなみに数としてはざっくり
下位悪魔50%
中位悪魔25%
上位悪魔15%
高位悪魔7.5%
貴族級悪魔以上2.5%
となります。
全ての悪魔のうち、人類種族としての悪魔族に入っているのは2.5%だけということになりますが、そもそもの数がとてつもなく多いので、2.5%でも人間より全然たくさんいます。




